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第三章 世界に降りかかる受難

第723話

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 過去の世界でも召喚テンプレから逃れられなかった僕。
 聖女集団をえっちゃんにお任せし、僕はイエティと一緒にえっちゃんの転移で飛ばされる前にいた場所に戻ってきました。

 そしたら何とびっくり。
 見たことのある魔王城と魔王城を囲む城下町がそこにどどーんと完成していただけでなく、魔物たちが早速暮らし始めていました。
 適応力が高くてこれにはイエティもびっくり。

『イエティ戻った』
『すごいぞ、城だぜ、城』
『一番高い塔があるのは魔王様ご家族が暮らすけど、それ以外の部屋は俺らが使っていいって』
『お前も早く部屋決めて来いよ』
『その間、おチビちゃんは俺らが面倒見ておくから』

 城門をくぐったら、中世っぽい感じの城下町が広がってました。
 どこかのゲームを参照にしたのか、それとも映画か歴史か、えっちゃんの知識が広すぎて検討が付かない。

 ほへーと周囲を見渡していたら、イエティが名残惜しげに離れていき、代わりに僕の周りにはゴブリンや日本猿さんたちが残りました。
 連れて来られたのはラノベの定番、噴水のある広場。

 城下町はさっき完成したはずなのに、もう屋台が出ている不思議。
 その一つでリザママがなぜか働いていた。

「おわっ! お前! ちび!」
「あい!」

 パンに分厚く切ったハムを挟み、屋台前にいたオーガに渡した所でこちらに気付いてもらえた。

「けがは!」
「ないの」
「不調は!?」
「げんき!」
「突然消えたから慌てて邪神様の所に駆け込んだら、邪神様が食べ放題とか言って出掛けちゃうし!」

 実際に人間食べ放題してました。
 無害な人間を食べるのは遠慮しているものの、庇護している僕を害したという大義名分を手に入れ、喜んで人間を食べ放題してました。
 食べられた人たちは、恨むなら僕を攻撃してしまった一兵士を恨んでほしい。

「しょーかんされて国ほろぶ原因つくってきた」
「内容が思った以上に物騒!」
「でも滅ぼすの神薙さん」
「あー、それは止められないわなー」

 自然な動作で僕を抱き上げ、屋台の後ろに置いてあった樽に座らせるとリザママフード店を再開。
 一緒にいたゴブリンやお猿さんにも次々と配る手際の良さ、さすがリザママ、えっちゃんの弟子なだけはある。

「このパンどうしたの?」
「えっちゃんがいきなり大量に送り付けて来たんだよ、どうせチビにはこんな固いの食べれないからな、魔王様と相談して皆に配ってんの」

 そう言えば前にどこかのお城を破壊した時も、えっちゃんは食糧庫とか宝物庫とか丸っと奪ってたね。
 今回は食糧、宝以外にお城や家を作っていたレンガや石なども奪ってきたんだって、神薙さんに破壊される前にと慌てて丸のみしたから、今は闇の中で使えるものと使えないもの分別してると教えてくれた。
 影絵でそれを伝えるえっちゃん凄い、理解できるようになった僕もだいぶ慣れてきたと思う。

 なお回収した素材は全て魔王城、城下町、城壁などに使用されるそうです。
 屋台もパニックに陥って逃げ惑う人間が放棄したのを持ってきたんだって、邪神様が目と鼻の先まで来ているんだからパニックにもなるか。

 人はそれを火事場泥棒と呼ぶ。
 でもえっちゃんだから、善悪は特にないの。
 これから死ぬ人間には必要ないだろ。ってそんな感じで貰ってきたんだと思う。

 顔も知らない屋台のおっちゃん、貴方の屋台はリザママが使っています。
 料理は上手だし、道具は大事にするタイプなので安心して輪廻に還ってね。
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