神様のポイント稼ぎに利用された3

ゆめ

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第三章 世界に降りかかる受難

第721話

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 右から左へ、左から道を逸れて村を一つ飲み込んでまた前へ。
 邪神が数多の命を食らいながら王都へ近付いていると報告があったのは早朝だった。

 国を守る聖女は王宮に呼び出され、すぐに結界を強化するよう命じられた。

 強化は可能。
 だがそれで邪神を退けられるかと言ったら無理に決まっている。
 聖女は神から力を借り受けているただの人間、神に対抗できる訳がない。
 それでもやらねば民が犠牲になってしまう。

 結界の守りが一番強いのは中心だと王侯貴族は理解しており、聖女たちに結界の強化は謁見の間でやるように命じた。
 聖女が結界を強化するために謁見の間に集ったのを確認し、城に勤める魔術師達は邪神に対抗するために最悪の選択肢を選んだ。
 それが国の滅びを決定的なものにしたと、幸か不幸か生き残った者は語った。

「こんちは」

 ほわっとした何かの魔物をかたどった服を着た小さな子供が一人。
 邪神を倒す存在を召喚し、それが邪神と対峙している間に結界を強化するつもりだったのだろう、魔法陣の中央に現れたそれに召喚術を行使した魔術師たちの顔色が絶望に染まった。
 視線が向けられているのは子供ではない、子供を抱える悪夢の化身。

「グルルルル」

 小さな子供を守るように抱えるのはイエティ、通常はランクBに指定されている魔物。
 だが、目の前にいるのは漆黒の変異種だった。
 強さは通常の種とは桁違い、S級に指定されても不思議はない災厄級の魔物。

 アホが声高に子供に邪神討伐を命じた瞬間、王国の未来はここで終わると誰もが肌で感じた。



 毎度、過去の世界でも召喚された樹である。
 どの世界線でもテンプレの強制力が強すぎて困っちゃう。

「ひっ」
「い、イエティが、なぜ」
「……イエティ? ゴリラじゃなかった?」
「ぐお」

 なんてこったい、ゴリラもどきはゴリラですらなかったイエティだった。
 びっくり。
 
 やっと分かってもらえたと言わんばかりにイエティがほにゃっと空気を和らげた。
 まぁ人間に視線を戻した瞬間、殺気マシマシなんだけどね。

「勇者よ!! この国を救うために汝を召喚したのは我々である! どうか我らの願いを聞き届け――」
「僕、ゆうしゃちがう」

 勇者じゃないよ神子だよ。
 それも人類サイドではなく、基本的にもふもふの味方な神子様です。
 強化するのも人間には効かない、もふもふなら秒で強化出来るんだけどね。

 あと声が大きすぎて聞き辛い、子供に演説してどうするんだろう。
 対価を寄越せ、対価を。

 ……あ、これ声が割れてて聞き取り辛いと思ってたら、後半違うね、過保護スキル発動で言葉が聞き取れないだけみたい。
 勇者否定しただけなのに子供に罵詈雑言を投げつけるって王様としてどうなの?

「イエティ、帰ろう」
「ごあ」
「どうか私たちの声をお聞きください!!」

 窓から飛び出してカッコイイ感じに退場しようとイエティに言ったら、僕らの前に白い衣装を着たお姉さんお兄さんが並びたち、一斉に土下座しました。
 僕にも分かる。君たち聖女とかそういう役職でしょ。
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