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第三章 世界に降りかかる受難

第711話

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 人間の欲望は尽きることを知らない。
 卵、魚、米の三つが揃った事により、僕は海苔が食べたくなった。

 海苔と言えば海。
 未来の婿殿、ギレンである。

「海苔を寄こすがいい」
「なんだこのガキ」

 白昼堂々と屋敷に乗り込んだら留守だったので、執事のおじいちゃんに居場所を聞いたら港でお仕事していると教えてもらいました。
 主人の情報をにこやかに漏洩する執事、それでいいのかと思ったら、普通にリザママと知り合いでした。

「あれ、そもそも魚もここで入手出来るんじゃ?」

 気付いてはいけない事実に気付いてしまいましたね、ふふ。と悪ぶる一人遊びをしていたら港に到着。
 リザママの左腕が僕の定位置になりつつあります。

 港でむさいおっちゃん達に囲まれ、仕事をしているギレンを発見。
 海苔をおねだりしたら睨まれた。

「パリパリ海苔と海苔佃煮欲しい、よこせー!」
「おいリザ野郎、なんだこのガキは!」
「魔王様からの預かりものだ」

 そして君がいつか来る未来、嫁にする美人さんの母親である。敬うがいい。

 あれ?
 でもギレンってアカーシャの前に伴侶がいたんだっけ?
 この時期はどんな感じなんだろう?
 ……その辺はノータッチにしておこう、微妙につついて微妙に未来が変わっても困る。

「とりあえず海苔を購入したい、売ってくれ」
「俺に言うなよ、市場で買え」
「おおその手があったか」

 そう言えば港には世界中の食べ物が集まっていると錯覚するような市場が開かれているんだっけ、一度見たことはあるけれど、海に遊びに行く途中だから通り過ぎたんだっけ?
 うーむよく覚えていない。

 ちょろっとギレンで遊んでから市場へ移動、色々売っててとてもびっくり仰天。

「リザママ、お金ある?」
「いや俺はお前のママじゃないからな? 変な称号付けないで? あと魔王様から費用は受け取っている」
「マグロ! お刺身!」
「うわ美味そう、買おう、買おう、漬けマグロもいいよなー」

 キャッキャウフフとお買い物を楽しみ、ついでに買い食いもしました。
 串焼きにされたお魚も食べたけど、骨はリザママが食べてくれたの。さすがママ。

 市場であれこれ見ていたら、特大のマグロが売っていたのでえっちゃんが物々交換で購入していました。
 海の男相手に言葉はいらないらしい、すげー。

「お、あそこの屋台、今日はやってるな」
「珍しいの?」
「店主が変わり者でなー、納得のいく魚が揃わないと店を開かないんだよ」

 そのお店はなんと海鮮丼の屋台だった。
 木の器にたっぷりの酢飯、一口サイズに切った海鮮類を並べ、食べる時にわさび醤油をかけるか選べるらしい。
 邪神様に認められた一流店なんだって、それはぜひとも食べねば! と思っていたらすでに列に並んで一つ注文していました。仕事がとても速い。

「わさびはなしで、醤油だけで、あとスプーンで」
「あいよ」

 某牛丼店を思い出させるようなやり取りに気を取られている間にリザママが海鮮丼を受け取っていた。
 近くにあったベンチに座り、腕から膝に移動。

「器を返せば金が返ってくる仕組みだ」
「おおー」

 他にもポイ捨てすると最悪邪神のおやつになるだとか、酔っぱらって迷惑をかけると邪神が走ってくるだとか、とにかく神薙さん無双のお話をたくさん聞けました。
 神薙さんのお話を聞くのは楽しい、でもねリザママ、食べる時にするお話じゃないと思うんだ。
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