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第三章 世界に降りかかる受難

第708話

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 お子様の味方えっちゃん、子供のための影絵からダンスレッスンまで何でも出来るとは思っていたけれど、まさか料理の指導まで出来るとは思っていなかった。

「えー次はこれを、こうで、こう?」

 声はないので影絵で指示を出しながらお料理教室してます。
 僕は届かないので大人しく見学してるのよ。

 硬い野菜を食べるため、蒸し器の代わりに闇で包んで蒸すという荒業を使ったえっちゃん、そこまでして僕に野菜を食べさせたいのかっ!
 ほこほこで美味しかったけどねー。

 パンがないなら作ればいい、そう小麦の状態から。
 そういう訳でただいまえっちゃんによるパン作り教室が開催されています、参加者はリザードマンさん。

 何で粉の状態で持ち歩いているかと思ったら、キャンプでパン作り体験しようと思っていたみたい。
 うむ、それはやってみたかった。

 でも現在はとても、とてーーも暇なので、お家周りの探検に行こうと思います。
 危ないこともポンチョがあるから大丈夫なのです、ご飯が出来たら呼んでほしい。
 ではでは、いざ冒険に出発。

 まず――縁側の下に潜ります。
 ふはははははは、小さいからこそ出来る冒険があるのだ!
 いざ突入ぅぅ!

 なんてそんな遊びを保護者が許してくれる訳がない。
 縁側のしたに頭をずぼっとしようとした所でずりーーってえっちゃんに引き戻されました。

「料理教室に集中していいのよ?」
「ッケ」

 怒られた。

 そうね、えっちゃんは基本的に僕の影にいるだけで、複数に分かれて別々の行動をとることが可能なんだ。
 料理教室と僕の見守りの同時進行なんて朝飯前なのである。
 最強のチートがこんな所で弊害になるとは!

 ならば止められない遊びをするしかない、えーっと次は……岩に登るか。
 古き良き日本家屋、家の周りには植木や大きな岩がたくさん。

 だだーっと走って岩に張り付き、足をかけようとして届かなかった。
 つるんとしてて張り付くのが精いっぱい、不自然に岩に角がない、宝石みたいにつるつるなの。
 これは人工的に違いない、犯人は過保護なえっちゃんな気がする!
 それか神薙さんが歯が痒い時にかじって丸くしたとか?

 登れないけどひんやり気持ちいい、これはこれで良い。

「なんだ坊主、トカゲに進化希望だったのか?」
「んむ?」

 岩と交流をしていたらリザードマンに声をかけられた。
 手にはほわほわのパン、遊んでいるうちに完成したようだ。

「飯にするか」
「あい!」

 パンをもらおうと手を伸ばしたらまずクリーンを掛けられました。
 異世界だし、そういうの気にしないと思ってました。はい、清潔は大事ですね。

「ほわわわ、ハムが挟まってる!」
「レタスもな、魔王様が趣味で育てたやつだ」

 魔王様が家庭菜園やっているとは初耳。

「魔素が強い中でも育つ野菜を研究しているんだ。俺ら魔物にも食べれるようにってな」
「為政者の鑑!」
「ふふん、そうだろう、そうだろう」

 誇らしげに胸を張るリザードマン、魔王様ってずっとずっと昔から真面目だったんだなぁ。
 あっ、このサンドイッチ美味しー。
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