上 下
719 / 844
第三章 世界に降りかかる受難

第706話

しおりを挟む
 えっちゃんは僕の命綱、絶対離さない、僕は絶対離れませんよ!
 そんな意思表示をするため、えっちゃんを丸めてポンチョの中に匿いました。
 どうやったかは説明すると良く分からない、でも何か出来た。

「えっちゃんイジメちゃダメです!」

 警戒するお二人に延々とえっちゃんの素晴らしきチート無双を語った。
 所々で噛んじゃったけど、幼児なのでご愛敬である。

 何よりえっちゃんを僕のもとに運んでくれたのはお二人の主である騎士様なのです。
 チートな護衛、かっちょええと思う。

「出しなさい」

 近寄って来た魔王様がポンチョを脱がせようとして止まった。

「動かないのだが?」
「んー?」

 風に揺れる正真正銘の柔らかい生地なのに、脱がせようと手をかけるとまるで板のように動かない。
 仕組みは謎です、騎士様と世界の事象が関わっているっぽいので僕には仕組みは分かりません。

 魔王様の次は神薙さんがポンチョを脱がそうとトライ、ポンチョの両端を持ち上げようとしたらそのまま僕の体が持ち上がりました。
 物理法則無視する生地なんです。不思議ですよね。

「……分かった。君が庇うその闇には手を出さない」
「あい」

 神薙さんが何かをあきらめてくれた。
 えっちゃんに手を出そうとしても出せるか微妙だけど、とりあえず攻撃されなければいいや。

「えっちゃん出てきても大丈夫よ」
「キ」

 闇がふわっと動いて僕の影に潜り込んだ。定位置である。
 何かこう「ふぃー」って感じに安堵した空気を察知しました。心配かけてごめんね。

「本当に大丈夫なんだな?」
「少なくともこの子供を害するものじゃない、良く分からないから手を出さない方が無難かな」

 その通り、共存の方向でお願いします。

「キキ」

 魔王様と神薙さんの会話を見守っていたら、お腹が小さく鳴ってしまいました。
 そう言えば謎の果実しか食べてないなって思っていたら、えっちゃんが闇からおにぎりを取り出して僕に渡してくれました。
 ちょうイケメン。

「あんがとー、いただきます」
「は、何それ、おにぎり? 白米だよね!?」
「おいしい」

 おにぎりをもぐもぐ食べ始めたら、神薙さんがすぐに気付いて僕に迫ってきた。

「米は希少で、滅多に奉納もされなくてっ!」
「とてもおいしい」

 えっちゃんが僕や子供たちのために保存してくれている食料であり、今の僕にとっては貴重な栄養源。
 いかに恩があり家族な神薙さん相手でも譲れない。うまいうまい。

「味はほんのり塩味」
「一個でいいから!」
「貴重なごはんです」
「――っお前が、元の時間軸に戻れるまで保護する!」
「もうひとこえ」
「衣食住も保証する、私と魔王が!」
「私もか、まぁいいが」
「契約成立、えっちゃんおねがい」
「キ!」

 取り出したるは神薙さん大好きピリ辛おかか、うむ、今の僕には辛くて食べれないおにぎりである。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~

クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。 いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。 本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。 誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています

ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた 魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。 そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。 だがその騎士にも秘密があった―――。 その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。

処理中です...