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第三章 世界に降りかかる受難

第700話

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 思う存分飲み食いし、夜は騎士様、刀雲、魔王様と一緒に夜釣り。
 朝はイケメン孫にこき使われながら朝食の用意、昼間はイネスとネヴォラと組んでクラーケンと勝負したり、なんやかんやと僕らよりキャンプを堪能して天ダンのボスは帰っていった。

「お付き合い了承させていったな、あいつ」
「気の迷いです」
「女神不在で良かったな、居たら付き合い了承じゃなく結婚了承だったと思うぞ」
「そういう世界です」
『そういう世界なのよ』
「逃げられないのは一緒なのである」

 外に出れないはずのダンジョンボスが気軽に遊びに来ただけでなく、主の甥っ子に当たる青年に求婚してほぼ成功させたという現実。
 多分あの人、謎能力の影響で本来のダンジョン生態から外れてるよね。

「樹ちゃーん」
「あい」

 焚火で熱燗を楽しんでいた騎士様がこちらにやってきた。
 お酒の匂いが強いので距離を取ってほしいな。

「鈴が帰って来たよ」
「?」

 すず、スズ、鈴。
 ……あっ、騎士様だけが呼んでいる女神様の呼称か!
 え、帰って来たの!?
 いつ、どこ!?
 代理終了したい!

 女神代理お疲れパーティーをしなければ!
 高級和膳とか食べたい、秋の味覚ダンジョンでも行って一人で打ち上げしちゃおうっかな!!

「イッツキちゃぁぁあん」

 久々に聞く猫なで声。
 背後からするりと白い腕が伸びてきて、僕をぎゅーっと抱きしめた。

 これ、女神様の偽物なんじゃない?
 あの人が僕を抱きしめるなんて有り得ない。

「疲れたよぉ、地球怖い、休暇怖い、長期休暇なのに酒を飲む暇もないってなにぃぃ」

 ぎゅーぎゅー抱きしめながら早口で愚痴を言い続けています。

「書籍化とコミカライズからのアニメ化は嬉しいけれど、スケジュールがぎっちり過ぎて旅行に行く時間削られるし、それに合わせて新しい話も更新しなきゃいけなくて脳が爆発するわっ!!」

 僕の意見なんて聞かず、自分の欲望を延々と語ってるし、やっぱり本物なのかな?

「おまけに主様が理事長を務める学園の講演会に呼ばれたり、頼まれた土産を発注したり、新作ゲーム発表とかしてたら生BL見てる暇もなくて、死ぬかと思った!!」

 本当は本場に生BLを見に行き、魂の糧にするつもりが旅行の予約を入れる隙もなく。
 隙間隙間に無料サイトで読み漁って妄想を補充する日々だったようです。

 女神様、長期休暇から戻らないと思ったらほぼ仕事だった件。
 反動でこの世界やばい気がする。

 アー君、スタンピードを警戒するように皆にお知らせ出来ないかなぁ?
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