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第三章 世界に降りかかる受難

第673話

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 新ダンジョンに行けないので、本日は領土の整備を引き続きやりたいと思います。

 闇落ち勇者も誘おうと思ったけど、レイアさんの傭兵団にお試し体験するというので誘えなかった。
 今頃陽気な彼らとどこかでひゃっほーっと楽しんでいるんだろうなぁ、人間辞めると同時に負の感情からも解放されたっぽいし。

「更地になった場所、どう手を付ければいいかな?」

 地平線が見えるぐらいで他は一緒に地平線を眺めるトレント数体しかいません。
 移動するのが面倒で、ここに腰を据えるか検討中らしいです。

「トレントのおじいちゃん、誘ったら今は孫の世話に忙しいって断られちゃいました」
「孫? 俺らが植えた世界樹のことだよな?」
『溺愛してるのよ』

 のじゃ幼女に木の実や果実のお土産を渡しているお陰でとても懐かれており、狐のお兄さんもトレントのおじいちゃんを無下に出来なくて困っているとか。
 悩みが平和で何よりである。

 ダンジョンを作るにもレイアさんが全て吹っ飛ばしてしまったから魔素がない、魔素だけじゃなく周囲の森、近場の山も全て消滅しました。どれだけ力を込めたのか……。
 このままじゃ神薙さんとレイアさん要望の大型魔物を作る事が出来ない、どうしようかなぁ。

『無いなら溢れさせればいいのよ』
「いけるいける。謎能力ならいける」
「土地が吹っ飛んでも大丈夫、周辺一帯、生命反応がないですから!」

 幼児の意見が一致した!
 魔素がないなら呼べばいいじゃない、邪神様を――

「今日、新ダンジョンに親族一同で引きこもり」
『あ』
「にゃぁん」
「がぉー」

 別に今日中でなくともいいのだけどね、かと言って明日も多分無理だろうなぁ。
 神薙さんは二次会っぽくダンジョンはしごするだろうし、兄弟は胃もたれで寝込むだろう。

 魔王様にお願いするのはどうだろうと思ったけど、日々激務に挑むかの方を便利に扱うのは良心が痛むので却下になりました。
 皆でうーむと悩んでいたら、えっちゃんが僕のポンチョをツンツン引っ張りました。

「えっちゃんが任せろって言ってるぞ」
『まさかの参戦』
「任せるにゃー」

 そう言えばえっちゃんは騎士様を始めとする神々から不穏な名称で呼ばれているっけ、始まりの闇とかそういうカッコイイ感じの。
 なるほど、確かに吹き飛ばされた魔素を補充してもらえそう!

 そして――えっちゃんの闇を通して開放されたのは、夢の世界にある邪神兄弟の魔素だった。
 あちらでは謎能力がいい感じに世界に調和させているそれを、変換させずにぶわっと現に開放する思い切りの良さは評価すべきなのだろうか。

 おー、快晴だったのに一瞬で天空が不穏な感じに。
 トレントは無事だろうかと隣を見たら、瘴気が直撃した影響でなぜか世紀末ファッションなトレントになっていた。意味が分からない。

 もさもさっと生えていた柔らかい葉はトゲトゲの針葉樹みたいになっているし、真ん丸だった目にはどこから取り出したか不明のサングラスを装着、全体的に丸いフォルムだったのは杉の木みたい、つまり全体的に尖った感じに変化した。
 謎能力の影響なのは分かるけど、なぜ結果がこうなるのかがよく分からない。

 まぁ愉快だからいいか。

 地面にも瘴気がしみ込んだみたいで、にょっきにょっきと元気に伸びる植物。
 あまりに一斉に伸びるから不思議に思って背後を見たら、焚火の周囲を涼玉が怪しげな踊りを踊りながらぐるぐると回っていた。
 黒魔術でもしているのかと一瞬思ったよ、怪しげな踊りと邪神兄弟の放った生きのよい瘴気が謎能力によっていい感じに混ぜられて拡散されているんだろうなぁ、目に見えないけど。

 わぁ涼玉の踊りを見ている間に周囲がジャングルになった。

「いっちょう上がりですねー」
『さすが涼ちゃんなのよ』
「ドヤァ」

 踊りの種類で効果を変えるとは……うちの子ってやっぱり天才よね。
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