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第三章 世界に降りかかる受難

第670話

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 トレント特製の階段を下りたら一つの牢屋だけぽつりと地中にあったでござる。
 これはホラー、間違いなくホラー。
 起きたら棺桶の中並みに怖い。
 その他は全てレイアさんの全力で無に帰したんですね、ここもえっちゃんの守りがなければ消し飛んでいたんだろうなぁ。

 牢屋の鉄はレイアさんが当たり前のように素手でぐにゃっと開けていました。
 城壁の門を壊したのこの人なんじゃ……?

 まぁそれは置いといて。

 牢屋の中にいたのは何と――呪われた勇者だったのです。
 正確には闇落ち勇者。

 何があったのか牢の壁に両手両足を繋がれ、体は拷問を受けたらしくボロボロみたいです。
 うむ、酷い状態なのは分かる。だってモザイクでいかがわしい感じになっているから。
 シリアスなシーンなんだろうなぁ、でも過保護スキルのせいで視界がギャグ寄りなのは僕のせいじゃない。

『精神崩壊してるのよ』
「テンプレ展開があったんだろうけど、事情聴取する相手が滅んでんな」
「初の生きた勇者です!!」 
「そう言えば勇者と言えば大体ぶっ殺してるよな私たちは」

 魔王様が身内だからそれは仕方ない。
 魔王様の敵は僕らの敵なのである。
 真に魔王様を倒したければ……そうだなぁ、僕らの誰かを一人でも倒してみるがいい!

「ママあのね、ママはモザイクで見えないかもしれないけれど、この勇者、半分魔物になりかけてます」
『封じるために色んな封印試して混ざっちゃってるの』
「レイア様なら素手で鎖壊せないか?」
「出来るとは思うけど、それをやってこの勇者が無事かは分からないぞ」

 口からは呪詛のような言葉がずっと紡がれているらしい、なるほど分からん。
 過保護スキルさんちょっと休憩する気はない? 僕だけ状況把握出来ないの寂しいな。

「年の功で刻まれている封印の文字読めないか?」

 レイアさんがえっちゃんに無茶ぶりしている。
 でもそれに応えてしまうのが我らがえっちゃん、えっちゃんの代わりに僕がドヤ顔しておこう。

 解読に少しだけ時間がかかったけど、どうやら「封じる」的な言葉が様々な呪文で壁や鎖、床などに書き込まれているらしい。
 字が汚いし、書式も綴りも間違っているのも多数。

「慌ててあれこれ封印を試した感じか、この国の連中って頭悪かったのか」

 レイアさんが辛辣。

「ちょっと強引だけどさ」
『あい』
「?」

 どうしよっかーと皆で首を捻った所で涼玉が一つ案を挙げた。

「いっそ完全に闇落ちさせて魔物に変化させちまうのは? 中途半端に人間でいるより精神も安定するだろ」
「なるほど!」
『魔物になればママの領分です!』
「人間を捨てさせるのか?」
『大丈夫よ』
「大丈夫です」
「おう、魔物になって自我を取り戻した後、人化を身に着ければいいだけだからな!」

 そういう訳で闇落ち勇者くんをこれから魔物に変化させます。
 どうやるかって?
 謎能力でなんかこう、どうにかするんだよ。
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