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第三章 世界に降りかかる受難

第635話

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 食堂の料理長、ギルドからの派遣かと思ってた。
 実際アー君からそう聞いていたし。

 なんと!

「ここが儂の次の戦場ですぞ!! がはははは!」
『学園一の筋肉』
「筋肉で岩を割れそうだな」
「こえでっかい」

 退役軍人のおじいちゃん、勝手に戦い方の指導かと思っていたら食堂のトップだった。
 商業ギルドに登録して派遣されているのでアー君の説明は何も間違っていないけれど、場違い感がすごい。確かにお昼時の食堂は戦場だけども。

 後ろで働く人たちも軍から数人連れてきたとか、それで動きが軍隊のようなのね。
 食堂でのトラブルを起こさせないスタイル。

「ここが食堂ですね、席もたくさん!」
「僕らもここを使っていいのでしょうか?」
「構いません、たくさん働いた分たくさん食べてまた午後もお掃除するんです!」
「「はい!!」」

 イネスを頭に乗せた王子とその取り巻きがやってきた。
 
「ちなみに中庭でお日様でぽかぽかしながら食べれるようにテイクアウトもあります! 冒険者は武骨なおっさんが多いので、ごみのポイ捨てが多いからそれを回収するのも君たちの仕事! ただしポイ捨てはギルティです! 犯人を見つけたら問答無用で強化合宿! エリートも震え上がる地獄のスパルタ勉強会を一週間!!」

 強引に広げた人脈を思う存分に使って学校作りに協力したイネス、その分、経営にも口出しし放題のようだ。
 もしやこの学校、下手なエリート学園に入るよりキツイんじゃない?
 真面目に学習する分には最低限を身に着けて無難に冒険者になれるだろうけど、反骨精神豊かなやんちゃな人種はうちの子に叩かれまくってとんでもなく化ける可能性もあるね! ファイト!

「食堂にいる皆にお知らせがあります! 掲示板にも校則にも載らないマル秘情報!」

 イネスの掛け声に食堂のざわめきが一瞬で静まった。

「食堂で出されている野菜は私のお家で作られている野菜を一部提供しています! 一人一人が食べる量は少ないですけど、三年ぐらい食べ続けると身体能力がアップしますよー」
「マジか」
「マジだと思う」
「三年って長いの、短いの?」
「勉強嫌いには地獄だろうけど、上がるのか」
「卒業なんてする意味ねぇよ、昼時だけ通えばいい」
「そこ!」

 イネスの言葉を鼻で笑った冒険者の額に何かが貫通した。

「この学校にいる限り、人を馬鹿にする言動は言語道断、ちゅいんして人格を綺麗にしちゃいます! 人に優しく自分に厳しく、己を律することこそが生存への第一歩!」
「はい、イネス様!!」

 鼻で笑った一人がキラキラの瞳でイネスに返事をしたのを見て、何人かが顔色を悪くしていました。
 この学校の設立目的はギルド職員の仕事を減らすため、ああいった輩が減れば余計なトラブルも減り、職員さんの仕事もスムーズになって皆幸せ。

 邪神一家相手だと丸呑みだけど、生きているからおっけぇだと思う。
 強く生きるがいい冒険者たちよ!

 冒険するのが怖くなったら転職をお勧めする。
 まぁどの業界にいてもうちの子は絡んでいくけどね!!
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