上 下
632 / 809
第三章 世界に降りかかる受難

第621話

しおりを挟む
 社畜戦士凄い。
 孤児院に連れて行ってポーション作りに参加させたら、孤児院の作るポーション品質が一割上昇した!

「薬品作りが繊細なのが分かった」

 お耳をぴるぴるさせながら唸るアー君、初級ポーションを作ろうとして何度やっても失敗するので慰めようとナデナデしたのがくすぐったかったらしい。可愛いなぁ。
 アー君の失敗原因は魔力の込めすぎだけれども、僕の失敗原因は他の孤児の子と同様、手順は合っているけど分量がガタガタなせいです。
 だって計るのめんどい……。

 社畜戦士田中さんは計量きっちり、作り方もとても丁寧だった。
 その辺はさすが日本人というか、いや僕も元々は日本人だけど今幼児だからね、うむ。

「おかしい、刀国では特級も作れたのに、なぜ」
「薬草の品質じゃないかなぁ」

 刀国の孤児院では薬草を栽培しているだけでなく品質改良もしているからね、涼玉の影響もあって世界トップクラスの品質だと思う。
 対するこの薬草は子供達が精いっぱい育ててはいるけれど、残念ながら栄養とかそういうのが足らない、あと採取の仕方も関係あるかもしれないなぁ。
 刀国の孤児院から誰かに出張してもらえば解決する疑問ね、でもガッツリ出張費取られるだろうし払う資金力があるとは思えない。値段交渉したとしても、値上がりはしても値下げはするかどうか……。

「本日分はこのぐらいか、あまり作りすぎても薬草が間に合わなくなる」
「刀国なら涼ちゃん効果でいつでもわっさわさなのにね」

 そんな感じで本日のポーション作業は終了、商業ギルドに持っていって料金をもらうのは孤児院のお仕事、僕らが手伝えるのはここまでです。
 子供達とバイバイしてお城に帰還、お昼を食べたら魔力制御のお時間です。
 講師はなんと――冒険者ギルド統括、アルジュナ様である! アー君カッコイイ、ひゅーひゅー!

 僕のテンションに比例して毛並みがキラキラ光るアー君、まるで王子様である。
 今度お姫様抱っこしてもらおうかな。なんて考えていたら社畜戦士の魔法がぼひゅっと失敗した。

「うーんまた失敗」
「魔力はキチンと巡回してるんだがなぁ」

 女神の加護なしで箱庭世界に召喚されてしまったこちらの社畜戦士、加護がないから魔力が扱えない、ので、ないなら与えればいいじゃない。
 代理とは言え僕が女神、箱庭世界の管理者である。
 そういう訳で僕が加護を与えてみましたー!
 効果はよく分からない、でも何かこう、ふわっとした感じに世界に馴染んでいるようです。結果オーライ。

「異世界ってイメージがしっかりしていれば魔法使えるもんだと思ってた」
「なるほど、田中がいつまで経っても魔法が使えない原因が分かった」
「え」

 さすがアー君、もう魔法失敗の原因を突き止めた! さすアーなのである。ドヤァ。

「田中が魔法を使えるようになったのはママが加護を与えているからだ」
「そうらしいな」
「ママは全体的にふわっとしている。だからしっかりイメージしても無駄だ! 考えるな、感じろ! 炎ならなんかあったかいなぁ、ぐらいでやってみるんだ!」
「え、えぇ」

 その後も練習したけど成功しなかった。
 社畜真面目、ふわっとした感じが苦手のようで僕の加護と相性悪いと判明、これはもう加護を与える相手を交換するしかない。

 ……誰と?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

その男、有能につき……

大和撫子
BL
 俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか? 「君、どうかしたのかい?」  その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。  黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。  彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。  だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。  大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?  更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

転生したら乙女ゲームの攻略対象者!?攻略されるのが嫌なので女装をしたら、ヒロインそっちのけで口説かれてるんですけど…

リンゴリラ
BL
病弱だった男子高校生。 乙女ゲームあと一歩でクリアというところで寿命が尽きた。 (あぁ、死ぬんだ、自分。……せめて…ハッピーエンドを迎えたかった…) 次に目を開けたとき、そこにあるのは自分のではない体があり… 前世やっていた乙女ゲームの攻略対象者、『ジュン・テイジャー』に転生していた… そうして…攻略対象者=女の子口説く側という、前世入院ばかりしていた自分があの甘い言葉を吐けるわけもなく。 それならば、ただのモブになるために!!この顔面を隠すために女装をしちゃいましょう。 じゃあ、ヒロインは王子や暗殺者やらまぁ他の攻略対象者にお任せしちゃいましょう。 ん…?いや待って!!ヒロインは自分じゃないからね!? ※ただいま修正につき、全てを非公開にしてから1話ずつ投稿をしております

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

処理中です...