神様のポイント稼ぎに利用された３

第三章 世界に降りかかる受難

第612話

　昨日は神薙さんにたくさん喜んでもらえて余は満足じゃ。
　凄い勢いで作ったおやつが消えて行って、まるで手品のようだった。
　面白かったからまたやりたい。

　今日は気分を変えて帝国に来てます！
　刀国の方だと僕の顔知れ渡っていて、見つかったら最後、アー君の所に一直線だからね！
　お忍びで遊びたい気分なのです！

「神子様、今日のランチは日替わり定食Aがお勧めですよ」
「あい！」
「騎士団の訓練中は危ないから近寄っちゃ駄目ですよ」
「あい！」
「おお神子様、この間いただいた湿布で腰痛が治りました」
「良かった！」

　おかしい、お忍びしたいのに皆して小さくなった僕に普通に話しかけてくる。
　……そう言えばちょっと前にこの姿で帝国に遊びに来たような？

　うーむお忍び難しい。そう思いながら城内をちょろちょろと移動していたら庭園に出ました。
　さっき衛兵さんに庭園のお花がちょうど見ごろだと推薦されたのです。でもよく考えたら涼玉が遊びに来ているから、綺麗に見える形に保つの大変だろうなぁ。
　わしゃーってなっちゃうからね、わしゃーって。

　基本的にこの箱庭世界の住人はラノベあるあるで、日本人が子供に見えるぐらい体が大きい。
　日本人だった頃の背丈で転生した僕も刀雲と比べると大人と子供な身長差、女神様的にそれが良いらしいけど、僕としては子供たちに背を抜かされるたびに切なさとぐぬぬとなります。
　なにが言いたいかと言うと、幼児なこの体で徘徊すると知らずにテンプレ現場に突撃しちゃうの。わざとじゃないのよ？

　今も生け垣からずぼっと知らない場所に出たら、目の前でお茶会が開催されていた。
　獣人はいない、人間オンリー、ただし年齢層が低い子が多いので第四皇子主催のお茶会かな？　背が高い人は恐らく保護者とかそういう感じ？

　そして異世界のお茶会と言えば、あれ、気に入らない相手に恥をかかせるあれです。
　オーソドックスなやつでお茶ぶっかけて「あら手が滑ったわごめんなさい、おほほ」、ってやつ。

「まさか僕が被害を受けるとは」

　お忍びは最初から失敗しているし、目の前にあるお菓子も美味しそうだから第四皇子に挨拶してお茶会に参加させてもらおうと人の間を横切ろうとしたらこれです。
　頭からお茶をかけられました。正しくは僕の横で地面に座っている人にかけようとして、そこに僕が通ったからかかっちゃったんだろうけど。
　どちらにしろ褒められたことではない。

「これ熱湯？」
「キ、キ、キ」

　神様が紡いだ布で作られた防御力カンストポンチョだし、僕自身にも炎耐性あるからダメージないけど、あまりの出来事にえっちゃんが珍しく動揺している。
　行動自体には悪意があるだろうけど僕に向けた悪意ではない、偶然そこを通ったら被害にあってしまった。つまり事故みたいなもの。

「グ、ギ、ギィィィィイイ！！」

　えっちゃんも判断に迷うことあるんだなぁ。なんて呑気に思っていたら違った。滅茶苦茶怒ってる。聞いたことない声出して怒り狂ってる。
　大丈夫だから、僕にかかったけど神衣装備だから汚れなんてもう消えたから！

　どうしよう、僕が周りを見てなかったばかりに死人が出る三秒前です。