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第三章 世界に降りかかる受難

第602話

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 ヘラ母さんの事を考えたからなのか、本日助けを求めて来たのは一児のママン(女性)でした。

「ふむふむ、お子さんが投げた石の先にコカトリスがいて、怒ったコカトリスに石化させられちゃったのね」
「最初は顔を庇った腕が、そこから徐々に広がってきてそれが心臓に達したら手遅れだとっ」

 嘆くママさん、ママさんの肩を抱いて沈痛な面持ちのパパ、後ろのベッドには肩まで石化したお嬢ちゃん。
 全員良い服着ているし、お部屋も広く、使用人たくさん、貴族か何かだと思う。

 ショタだったら一発で解決してもらえたのになーって思いました。
 女児だからシヴァさんにスルーされている。ちょっとシヴァさん、救う対象に女児も入れたでしょ!

「コカトリスは?」
「冒険者ギルドに依頼を出してあります」
「うん、じゃあそっちは大丈夫ね」

 問題は……僕、石化の解き方なんて知らない。
 さすがのひよこ豆も状態異常無効はまだ取得していない、特に石化は特殊だしなぁ。

 いつもはこういう時は女神様に聞くんだけど……あっ、僕が管理画面で確認すればいいのか!
 ご両親は少々お待ちをー、えーっと?

「教会で解呪してくれるって」
「聖女様は高額な寄付金を払わねば奇跡を使ってくれません」
「聖女? 聖女関係ないよ、司祭クラスなら誰でもぺかー…………あ、そっか」

 細かいことは後回し、今は解呪が先だよね。
 
「僕が助けると対価が必要な場合があるけどいいですか?」
「お願いします、この子が助かるならばっ!」
「あい! イネス!」
「みゃん!」

 おやつタイムだったのだろう、腕の中に呼び出したイネスは両手でアップルパイを食べている所だった。
 しかも薄っすらぺかぺかしているので、あれは間違いなく黄金のアップルパイ。

「あの女の子がコカトリスの攻撃で石化して命が危険なのよ」
「待ってくださいねー、あと二口で終わります」

 あぐあぐと急いで食べるイネス、嘆いていた両親はポカンとしている。
 そして食べ終わると同時に高くジャンプしたイネスがぺかぁぁっと光を発し、宙返りしてまた腕の中に戻ってきました。
 光もおさまっていつもの可愛いイネスです。

「ただの解呪より使ったパワーが多いですね、この部屋に洗脳か魅了されてた人います。今はもう正常ですけど」
「なんと!」

 突然きな臭い発言なのです!
 ステータス画面を確認、ご両親クリア、執事クリア、メイド……うむ、五人の内四人が「洗脳解除」ってあります。さすがイネス、あんがと!
 最後の一人のメイドが黒だった!

「あのお姉さん拘束してどうにかしたら真相分かります、それはそちらにお任せ」
「ありがとうございます」

 僕に深く礼をしたパパさんが執事の人に目線を送るとすぐに動いたよ、これが長年の信頼っ。

「石化は解けた?」
「――っ!!」

 何が起こったか分からず、茫然としていたママさんが振り向いてベッドを見ると石化が解除されてすやすや~と静かな寝息をたててました。
 さすがイネス、自慢のぺかぁです。

「帰っておやつ食べていいですか?」
「先に帰っていいよ、僕は教会に殴り込みに行ってから帰ります」
「一緒に行きます!」

 そうそう、お嬢さんの命を救って犯人を教えてあげた対価はギルドまでお願いします、冒険者ギルドでも商業ギルドでもどっちでもいいよ。
 どちらにも窓口開設したから問題ないのです。

 ではいざ横暴なる教会のお掃除です!
 汚物は消毒だーー!
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