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第三章 世界に降りかかる受難

第593話

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 ある日起きたら幼児だった。
 今、その幼さを利用してやりたい放題しているの。

「おぉ。気持ちいい……」
「へぇ香油使うのか、匂いも優しいな」
「クシも使い分けるのか、へぇ」
「これは? 爪とぎ? すげぇな」

 黒ヒョウさんをもふり倒そうと思ったけど、ゴワゴワが気になったのでブラッシングすることにしたの。
 お仲間さんは僕がテーブルに並べたブラッシングの道具を見てキャッキャッと感想を言い合っている。これらはドリちゃんが作ってくれたものが殆どなので基本非売品、でも商業ギルドに言えば手に入るか売ってる場所教えてくれると思う。

「このクシいいっすねぇ、俺の自慢のモヒカンの手入れに使いたい」
「兄貴、帰りたい」
「っし、黙って美味いもの味わってろ」
「焼き鳥初めて食べた」
「塩味以外なんていつぶりだろう」
「あっ涙出そう」

 トサカが攻めてるお兄さんがコームに興味を持ったようだ。
 コームはアカーシャに貰ったやつ、商業ギルドにお問い合わせしたら手に入るかもしれない。
 それにしてもこの世界のモヒカンはどうやって形を保っているんだろうか、ちょっとだけ気になる。

「世話をするはずが世話をされているんだけど、これいいのかなぁ、俺は気持ちいいけど……」
「神子様の望み最優先だし、まぁ大丈夫だろ」
「神子様、この香油もしかしてポーション混ざってます?」
「刀国の孤児院が奉納してくれたのよ、だからきっと薬草入ってるの」
「ああーなるほど、神子様に売りつける為に毛皮の再生効果を付けたんだな」

 すごい、納得されたよ、あの説明で!
 刀国の孤児院って名声何気に高いよね、確かにあそこが作るポーションは品質が段違いらしいけど。

「エールお待たせしましたー! あっクシならたまに商人がうちに持ち込みますよ!」

 酒場でアルバイトしているこちらのお姉さん、もとは貴族の令嬢だったらしいけれど、欲しがり系の妹に婚約者とか色々奪われて最終的に追い出された直後に冒険者に拾われ、冒険者ギルドで保護、そのまま併設されている酒場で働くことになったらしい。
 すんごい逞しい。

 なお、妹は自分の幸せを姉に見せつけて絶望させるため、探し出して無理矢理連れ戻そうとしたところをアー君に見つかって財産を差し押さえられたらしい。
 ギルド職員はアー君の配下だからね、法の適応外なんだって。異世界おっかないねー。

 元婚約者は妹と婚約直後に行方不明で今探されているとか、でも実はコームを欲しがっているトサカが元婚約者だとステータス画面で知った僕はどうすれば。
 ……好奇心でトサカのステータスを見たら、貴族のしがらみを振り切るため、人相もファッションも全て一新してお姉さんにアピール中と書いてあります。
 実は一途だった。嫌いじゃないよそういうの、でもなぜパンクファッションにしたんだろう。
 あっ、待って、よく読み込んだらこのアルバイトのお姉さんを保護してギルドに連れてきたのこのトサカだ! どの辺から計画してたの??

 ステータス画面を見てたらブラッシングが終わったと思われたのか、いつの間にか椅子に座らされ、目の前にはフルーツが添えられたパンケーキが置かれていた。
 ふんわりしてる!

「じゃあこちらにサインお願いします」
「兄貴、サインだって」
「ああ」
「はい確かにー! パーティー登録完了しました! 今日から貴方も冒険者、頑張ってくださいね!」
「は!?」
「ちょっと兄貴!?」
「待て待て待て、なんで登録されてるんだ!」
「えー、今登録書類にサインしたでしょう? これ特別製で、サイン一つで全ての工程が済んじゃう楽々仕様なんですよー。あとギルドに登録している人は食堂を利用する際に冒険者割引が使えるのでとっても便利!」
「冒険者として活躍出来るように初心者指導してあげてほしいなぁ」
「任せろ、俺はその教官の資格を持っている!」
「トサカ偉い! このバームとコームあげちゃう!」
「……モヒカンと言ってください」

 こうして僕をギルドまで連れてきた五人組は冒険者として新たな道を歩むことになったのです。
 サインする時は書類をキチンと確認しないといけないっていう、ダメな代表例ですねー。
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