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第三章 世界に降りかかる受難

第581話

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 美味しいものを食べるためにパーティーに参加したら婚約破棄騒動が起こってアー君が巻き込まれた。
 うむ、何も間違ったことは言ってないね。困ったことに本当にあった怖い話なのです。

「なっ、なっ、そんな獣のどこがいいのですか!」
「この雄々しい姿、神々しい白き毛並み、この子を下せば私を退かせるのにそれをしない優しき心! あと抱いている腕から分かる筋肉!!」
「分かる」

 アー君って実は筋肉質なんだよね、それを見抜くとはやるな少年!
 あと筋肉に惹かれる時点で、相手が女の子なの間違っている。もしくは女騎士とかに相手をチェンジした方がお互いのためだと思う。

「あの、イネス様、サイン……いや、肉球スタンプください」
「おでこでいいならいいですよー」
「はわわ」
「涼玉様、このパーティーの目玉は好きな厚さに切ってもらえる肉です、もう食べました?」
「まだ! かあちゃに付き合って甘いものから攻めてるからな!」
「じゃあ僕持ってきますね、あと黄金はもういらないって父が泣いてました!」
「ごめん、つい先日また大量に収穫した」

 王子の側近が仕事放棄してうちの子の接待に走ってる。
 これ誰がツッコミ役連れてきた方がいいんじゃない?

「おい、腕を放せ、それかそこのマフィン取れ」
「君、マフィンを一つとフルーツを幾つか盛り付けてくれ」
「はいただいま」

 王子、王子、婚約者のお嬢さんが顔を真っ赤にしてブルブルしてるよ!
 お嬢さんはお嬢さんで、か弱い感じの化けの皮が剥がれかけてるけどいいのかな?

 多分後ろに控えるのは取り巻きとか護衛とかその辺りのポジションだろうけど、一人だけとても背が高い。
 暇だしちょっとステータスを覗いちゃおう。

「どうぞ、美しい方」
「……ママあーん」

 アー君が、諦めた!!
 いやこれは現実逃避?
 食べるけど!

「メロンおいちぃ! 甘い! お口の中しあわせぇ」
『霧ちゃん、僕も食べる』
「分かった」

 霧ちゃんも同じものをと給仕の人に注文し、受け取ると流れるようにシャムスに与えている。
 両手で頬を抑え、美味しいと全身で訴えるシャムスが可愛い。

「子連れかと思ったらお母様でしたか。私はこの国の第二王子、クルト・グレートヒェン・ グラナドスと申します。以後、お見知りおきを」
「対応が変わらない、アー君、この人大物!」
「ツッコミが追い付かねぇなー」
「にいちゃ、にいちゃ、見てこの肉の厚さ!! あいつ分かってる!」

 大興奮の涼玉が掲げるお皿には3cmぐらいの分厚いステーキが。
 しかもお代わり出来るようにもう一皿すでにスタンバイしている。従者の鑑!!

「王子、私、こんな侮辱は初めてですわっ!」
「美しい方、どうぞお名前を」
「ママ助けて」
「お母様、どうかこの方のお名前を教えて頂けないでしょうか」

 この王子ある意味凄い、何か気に入ったかもしれない。

「僕ね、樹です。このカッコイイ筋肉の持ち主はアー君なのです」

 正式名あるけど長いので今の僕だと多分舌噛んじゃう。

「んむ? アー君、アー君、あそこに元軍人な超人がいるよ」
「呼ぼう」

 王子の求愛から逃れるためか、アー君の行動が早かった。
 アー君がサッと手を挙げると胸に手を当てお辞儀をし、そのまま場を辞そうとしたのでえっちゃんにお願いして僕らの前に転移してもらいました。
 
 人の注目集めるの苦手かもしれないけど、僕らと関わった時点でもう遅いのです。
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