上 下
590 / 844
第三章 世界に降りかかる受難

第579話

しおりを挟む
 婚約破棄と言えば良くあるパターンが男性が女性に言い渡すタイプ。
 でも今回は珍しく派手なドレスを着た女性が男性に言い渡していた。

 まずここはカイちゃんの領土である砂漠地帯だから、西洋ドレスみたいな文化はない。
 次に私有地です。
 神獣から邪神一族まで出入りする別荘です。命乞いが通じるといいね。
 あと一年を通して常に魔物が入り浸っているので、人間が近付くのも普通に無理なんだけどなぁ。

 どの辺からツッコミ入れたらいいか迷う。
 本当、どこから湧いたんだろう。

「真実の愛の相手はどこ?」
「まぁ貧相な子供っ」

 貧相。で闇がぶわってなって、子供、と言った瞬間にドレスの人と、横に立っていた人が消えました。
 えっちゃんの仕事が早すぎて今回も身元不明者が増えただけだったのです。

 婚約破棄を言い渡された青年も呆然としてます。
 分かる。今のスピードは僕もびっくりした。

 ……ん?
 何やら青年の視線がおかしいような、ドレスの人がいた場所から視線がずれている。
 どこを見て……?

 視線を辿ったらプールサイドに入れず困っているクラーケンがいた。
 僕が間違っているのかな、と思って視線をもう一回辿ったけど、間違ってなかったのです。青年Aはクラーケンを見つめています。頬を染めて。

「美しい」

 何か言い出した。

「白く艶やかな肌」

 クラーケンだからね。

「黄金に輝く四つの瞳」

 クラーケンだからね。

「船より巨大なその体も素晴らしい」

 クラーケンだからね!!
 あと出会ったのは船を沈めた所だったなぁ。

 あっ、なんかクラーケンがほんのりピンク色に染まった。
 もしかして照れているのだろうか、ツッコミが追い付かないよえっちゃん。

 この理解の範疇を超えた告白劇を終わらせるにはどうしたら……そうだ、謎能力でどうにかしよう。

「小さくなったらクラーケンの魅力は消えますか?」
「私が巨人に進化するのとどちらが効率がいいだろうか」

 ダメだこの人。
 実は婚約破棄した女性は正しかったんじゃ……? もう手遅れだけど、冥福だけ祈っとこ。

「大きな体でいちゃつかれると邪魔だし、クラーケンは水棲なので地上では暮らせません」
「そんなっ、海の魔物に進化する方法はないのですか!?」

 誰得か分からない進化をしようとするのは止めよう?

 チラッとクラーケンを見上げる。
 特殊性癖全開のこの人を見つめる瞳に嫌悪感は見られない、それもそれですっごいなぁ。

 じゃぁ、まぁ、えっちゃん先生、お願いしまーす。

 闇がぶわっとクラーケンを飲み込み、ぎゅっぎゅっと揉みこんでー、揉みこんでー、闇をほどくとあら不思議、下半身がクラーケンの儚げ美人なお兄さんが爆誕した。
 感想を聞こうとしたらいつの間にか移動して、クラーケンの手を取ったまま動かない。

 もう放っておこうと思う。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~

クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。 いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。 本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。 誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています

ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた 魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。 そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。 だがその騎士にも秘密があった―――。 その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。

処理中です...