神様のポイント稼ぎに利用された３

第三章 世界に降りかかる受難

第570話

　元軍人の人の名前を改めて聞いた。アー君が。

「カルロス・マイアル・レズリー・オズワルド・プラマー」

　なんて？

「元軍人、貴族？」
「いいや孤児、捨て子だったのを教会の神父が拾い、子供のない夫婦が育てて、恩返しに軍に入って仕送りしていた一般人」
「なんでそんなにお名前長いんだろう」

　ステータス画面を見てみた。
　カルロスは神父さんが付けたお名前、マイアルは父親、レズリーは母親、プラマーは故郷の名前。
　……オズワルドは？？

　当の本人は涼玉のリクエストに応え、涼玉を肩に乗せて畑を巡ってます。
　その後をシャムスとイネスが追いかけているけど、涼玉がご機嫌で歌っているから麦が一斉に育ってここからじゃ見えないのです。

　地平線まで続く黄金に病気っぽいのは見えない、むしろ涼玉とイネスの影響で病気を治す効果が付与されていても僕は驚かない。
　これはやらかしではない、豊穣ドラゴンの恵みなのです。セーフ、セーフ。

「あっ、アー君大変、麦が比喩じゃなく、本当に黄金に変化してきてる！」
「やべっ、おいそこの！！」
「はい！」
「村人集めて麦を収穫させるんだ！　あと黄金になった麦はあとで普通の麦と交換するから、別にしておくように指示も忘れないように！」
「はい！」

　アー君大変、アー君が指示を出している間に、麦が、俵で！　とにかく大変！

「アルジュナ様！！　村人のほとんどが空腹で動けません！！」
「ついでに言うと追い詰められて病気の麦を食べたので、疫病が発生してました！」
「あぁんもぅ！」

　こちら現場、大混乱です。
　しかも僕はまだ何もしていないというのに、このありさま。

「アー君の領地から農民派遣してもらっていいかなぁ、支払いは黄金の麦で」
「妥当かぁ」

　アー君の所にいる農民さん、神々に振り回されるのにも慣れているからね。
　その臨機応変さは刀国民に近いものがあるのです。

　シュピッとアー君が転移で消えて、数分後に大勢の農民と冒険者を連れて戻ってきた。
　わー、白い狼の獣人さんもいる。ほわー。

「じゃあ農民は収穫、冒険者は炊き出し、病人の隔離、家屋のクリーン、あとは――」
「異議あり！」
「俺らの仕事の種類が多いっす！」
「覚えきれねぇよ！」
「横暴だー！」
「やかましいっ！　文句があるなら農民スキルの一つでも身に着けてこい！　今回の収穫は時間と体力勝負なんだよ！」

　時間が経てば経つほど普通の麦が採れず、黄金や虹に変化する確率が上がります。
　黄金の麦は刀国民なら消費出来るけど、虹は……効果が特殊過ぎて、闇属性の人が触ると火傷しちゃうし、騎士様が食べると七色に光ります。まぁ大変。

　うちの子の暴走に慣れている農民の皆さんはやれやれと言いながら準備体操中、その中にはカマキリの魔物やカンガルーもいて、腕や首を回してやる気満々です。

　待って。

　今、カンガルーがいた。