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第三章 世界に降りかかる受難

第566話

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 僕は今、家を抜け出して来たことを猛烈に後悔してます。

 帰ったらしばらくは大人しくしてるから。
 お昼寝しないで抜け出す事もしないし、子供たちを寝かせてから大冒険!と言って飛び出す事もしない、夢の世界でお空を飛びたいな、と思い立って世界樹の天辺から飛び降りたりもしないから!
 二度とやらないとは言わないけれど、反省はするので誰か助けて。

「ぼ、ぼくが、あなたをじ、じゆうに」

 簡単に言うと誘拐されました。

 確かにヘラ母さんには「知らない人に付いて行ってはいけません」「知らない人から食べ物もらっちゃいけません」と言われていたけど、僕は神子だから冒険者から屋台の人まで色々ともらうのです。
 刀国に住んでいる人は皆兄弟。
 何より今は女神様の代理なので、兄弟というより我が子のようなものでして……ええと、言い訳すると屋台街に行こうと桜並木を歩いていたら、知らない人にクッキー貰って食べてたらそのままお持ち帰りされました。
 食べるのに夢中で運ばれているのしばらく気付かなかったぐらい。

 これ、ヘラ母さんにバレたらさすがの僕も長時間説教から逃れられないやつ。
 猛省するので本当助けて。

 えっちゃんに助けを求めたら「たまには刺激も必要かと思った」みたいな返答が。
 そう言えばえっちゃん、エロイベントを始めとして、強制召喚などの王道イベントは阻止してくれないよね。

 薄暗い場所にある朽ちかけの小屋。
 そこに連れられて来て、床におろされてからずっとブツブツと話を聞かされている。
 刺激は刺激でも、こういう狂気系イベントはいらないです。

 今日の僕のポンチョは真っ白アルパカ、とてもとても目立ちます。
 運ばれる際は認識阻害を掛けていたみたいだけど、あれはえっちゃんによって無効化されていたので目撃者多数どころかその場にいた人ほぼ全員。
 手口が鮮やかすぎて知り合いと思われた可能性がとても高いです。
 認識阻害をかけて後をつけてきてくれた冒険者に感謝するレベル、きっと彼がギルドに連絡するだろう、そこからアー君に連絡がいって、救出&お説教。 

 つまりまぁ、これは救出イベント…………ヘラ母さんにバレるぅぅぅ!!!

「こわい、こわい、僕帰ります」

 立ち上がって扉に向かったらガシッとね。腕を掴まれました。
 ポンチョを着ているからダメージ受けないけど、きっとこれはポンチョがなかったら腕の一本ぐらい折れているんじゃないだろうか。
 そして痛さと怖さで泣きわめき、犯人を刺激してうんぬんかんぬん。そういう場面良くあるよね。

「ここかオラァ!!」

 その時、オンボロ扉が吹っ飛んで、ついでに犯人も吹っ飛んで壁をぶち抜いてお外に飛んでいきました。
 オーバーキルです。

 でもですね、この小屋、朽ちかけなのでそんな事したら崩れると思うの。

「神子様確保っすーー!!」
「っしゃ、あとで統括にボーナスもらっとけぇ!」

 屋根が落ちてくる。と思うより先に、小屋の外にいました。
 しかもえっちゃんの転移じゃなく、人の手によって救出されたみたい。
 おお、この人さっき後をつけてきてくれていた盗賊タイプの人!

「おい犯人どこだ犯人!」
「勢い的に壁に穴開けたんじゃねぇの、そっち探してみろ!」

 でも何かおかしい、周囲を捜索している人たちが冒険者とは何か違う気がする。
 統率されてはいるけど……今すぐ逃げた方がいいと直感が言っております。

「さて」
「ぴょ」

 えっちゃんに助けを求めるより早く、僕の小さな頭が誰かの手にガシリと掴まれました。事案です。
 ヘラ母さん助け――待って、この状況でえっちゃんが助けてくれない時点で嫌な予感ビシバシ。

「なぁ神子様よぉ、知らない人からもの受け取るなって、ヘラに教わらなかったかぁ?」
「きゃーー!!」

 頭を掴まれたまま持ち上げられ、必死に抵抗したけど強制的に向き合わされた相手、それは――レイアさんでした。
 助けてアー君!! 騎士様ぁぁ!!
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