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第三章 世界に降りかかる受難

第564話

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 実際にひよこ豆の煮汁を冷やして茶畑に撒いてみたところ、一部が根っこを伸ばして兵士に襲い掛かりボッコボコにしています。
 異世界こわいねー。

「あれ?」

 これには涼玉もびっくり。
 ただ植物を元気にするはずが、威勢が良すぎて自力で復讐してる。

 近くにいた村人が救出――する訳もなく、「やれー」「いいぞー!」と応援してます。
 誰も心配なんてしてくれていない、これが因果応報。
 僕の隣には村に派遣された司祭さん、その背には無双する茶畑にガクブルする悪魔、悪魔ってなんだっけ?

 領主……来ないほうがいいかも。
 自立した茶畑に殺されるまではいかないけど、半殺しの目に合うかもしれない。

 今頃はイネスにぺかっとされて綺麗な領主になっているだろうけど、それはそれ、茶畑は許してくれないみたいです。
 新しい扉を開きつつある兵士がいる中、教育に悪いと霧ちゃんが霧を広げました。防音も兼ねてます。

「……異世界初、自動防衛機能付き茶畑」
「涼玉、ラノベ読みすぎ」
『この畑で採れたお茶、効能普通かなぁ?』
「怪しいですね、アカーシャに連絡しておきます」

 その時、足元にするするーっと根っこが寄ってきて、うねうねと何やら主張中。

「え、もっと力を寄越せ? 好戦的な茶畑だなぁ」

 涼玉は言葉が通じたらしい、隣で悪魔が司祭にあれを止めてくれって頼んでいるけど無理だと思う、だってその司祭さん、イネスのファンだから。
 あと一つだけツッコミを入れるとしたら、好戦的って茶畑に使う言葉なのかなぁ?

「強くなると言えばあれかな?」

 のしのしと前に出て、小さな手や足を回して体をほぐす涼玉。
 きゃわわです。

 音楽はどうするんだろうと思ったら、えっちゃんが大地を鳴らしてリズムをとってました。
 えっちゃんって何気に万能だよね、特に今も昔も人間の文化が大好きで、それをうちの子に教えて楽しんでるのを知ってます。
 太古の神々に捧げるダンスから地球の最新のダンスまで何でも知ってるのです、びっくり。

「お茶~、お茶お茶、お~ちゃ~!」

 踊りだしたのはなかなか激しめのダンスだった。
 いつもは殻からちょぴっと出しているだけの足で、激しいステップを踏んでいるのが信じられない。あれ、正面から見たらどうなっているんだろう?

 あの謎の歌はともかく、ダンスの激しさ……もしやインドダンス?
 そして隣にいつの間にかマンドラゴラがいて、同じダンスをキレッキレで踊ってます。
 
 一緒に踊ってみようとチラッと思っていた少し前の僕、止めといて良かったね。
 盆踊りとかフラダンスなら幼児の愛らしさで多少ごまかせるとして、あれは無理。

 あっ、あの兵士さん、亀甲縛りされてる。
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