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第三章 世界に降りかかる受難

第562話

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 農民姿がすっかり板につき、実家のように当たり前の顔でそこにいるこちらの悪魔、実は通いだった衝撃。

「本当は一年中ここに居たいですが、上司が悪魔使いが荒くて」
「じょうし?」
「茶摘み悪魔って最近は呼ばれてます。何でもブラック職場を逃げ出して、やりがいのある職場に逃げ込んでそのまま住み着いたとか」

 それって……もしやセバツー?

「セバツーだろうな、お茶を積極的に集める悪魔なんて他にいないと思うぞ」

 近くの森に来ていたのもそこの森にある葉っぱが目当てだったらしい、加工したらお茶として利用できそうだったけど、お試しするための量が足りなかったので再度訪問したら子供が生まれていたみたい。
 悪魔なのに活動が地味でほろりとしますねー。

「もしかしてこのクッキー」
「あ、はい。俺がレシピ持ち込みました。ヘラ様に相談して教えてもらったんです」

 さすがヘラ母さん、薬膳料理から素朴料理までなんでもござれ。
 ふふん、どやぁ。

「レシピと引き換えに事情説明を強要されて、子供が生まれるなら言葉遣いを直せって矯正されたなぁ」

 悪魔が遠い目をしている。
 子供を見捨てていたらシヴァさんだけでなく、ヘラ母さんからも制裁を受けていた可能性あるね。
 
「やっぱりばーばは最強だった」
「かっこいーね!」
「悪魔をこき使う妖怪なんて、古今東西、あの人しかいませんよ」

 ヘラ母さんは騎士様にも容赦ないからなぁ。
 姑という最強の肩書を前に手も足もでないらしい。

「とうちゃん、次いつくんの?」
「俺もねー、永住したいとは思ってるけど、難しいのよ」

 本来なら忌避されてもおかしくない悪魔だけれども、ここでは飢餓から村を救った英雄扱いです。
 そして真の救世主であるひよこ豆は、今や各家に一株はあるらしい、それは……うん、村全体が元気なのも頷ける。

「うーん、方法がないわけじゃないかなぁ」
「え、マジで!?」
「マジでー?」

 驚く悪魔と息子の表情がそっくり、それを温かい瞳で見つめる婿と長老。いいご家族です。
 ではでは、せっかくトラブル解決に来たので、クッキーを食べるだけじゃなく、お仕事して行きます。

「まず、悪魔は商業ギルドに就職します」
「え? あのエリート集団に参加するなんて無理無理無理!!」
「推薦あればだいじょーぶ」
「推薦状は俺の手形でいいかな、一度やってみたかったんだよなぁ、肉球スタンプ」

 僕もやってみたかった。けど今回は涼玉に譲ります、次こそは。

「次にこの村に支店作ります、ここ長老のおうち、とてもちょーどよい」
「多少改築はするけど、ギルドで資金持ってくれるから大丈夫だぞ」
「出張社員、長老の家に下宿します」
「今なら茶の元になる葉っぱ、俺が増やしてやるぜ!」

 お茶を特産品としてギルドに卸せばヘラ母さんに適正な値段で売ってくれるので、村の安定した収入確保でみんなハッピー。
 お嫁さんが帰還した場合、復讐心はひよこ豆がどうにかしてくれます。
 僕と涼玉がお願いしておくのできっと大丈夫。
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