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第三章 世界に降りかかる受難

第529話

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 最高の筋肉を提供してくれたお兄さんには最高の伴侶を紹介したい。
 将来王様になるならその横に立つに相応しい人物がいいな、誰がいいだろうか、教えてシャムス。

(でっかい人)

 ノリで問いかけたら脳内に返答が返ってきた。
 シャムスの一言、本物の神託です。

 でっかい人って、今腕を僕の椅子として提出してるこの人しかいないんだけど。

「ねぇねぇ、でっかい人、おいくつですか?」
「何ですかその呼び名……止めてくださいよ、それが本名になったら教会に幾ら寄付したら戻るか分からないんですから。これでもまだ20になったばかりです」
「嘘だぁ」

 年齢詐称よくない、貴方はどう見ても30代。

「嘘じゃないですって、先月まで19でした」

 嘘だぁぁぁ。
 ステータス見てやる。

 …………本当だった。
 老けて見える――じゃなくて、えっとゴリラみたいな筋肉が歴戦の戦士のような貫禄だしてるから勘違いした。

「でっかい人が意外と若かった。二十代とかもはや詐欺」
「声に出てますよ」

 おっと失礼。

「冒険者ランクも高く、兄貴と慕われる人柄、アー君からの評価も上々、うむ、お兄さんの伴侶に申し分ない」
「うちの子はお嫁にやらない! 僕と田舎に引っ越して――」
「俺が来た!」

 宰相さんの言葉を遮ったのはえっちゃんから飛び出したヨムちゃんでした。
 本当は神薙さんに来てもらって、いらない人ばくってして片を付けようと思ったのだけど、晩酌中に呼ぶのは悪いかなって思ってヨムちゃんにしてみた。

「はわわわぁ」
「父上?」

 ヨムちゃんの姿を見た瞬間、宰相さんがバグッた。
 両手を祈りの形に組んで頬を染め、瞳をうるうるさせている。お兄さんが引いてますよ。

「か、か、かし」
「かしこみですよ宰相様っ!」
「かしこみかしこみ!!」
「おっす!」

 でっかい人の耳打ちにすぐさま言い直した宰相さん、あの祝詞流行ってるのかな? イネスのお気に入りの口癖か呪文だと思ってた。
 祈りの体勢のまま頭を下げて固まってしまった。どうしよう、気絶した?

「あっ、俺にいつも美味いもの奉納してくれるおっさん!」
「こ、ここここ、こうえ、こうえいっ」
「ヨルムンガンド様、宰相が死にそうなのでその辺で」
「分かった!」

 でっかい人が僕らの扱いに慣れている。刀国関係者ですか?
 気になって個人情報を読み込んでみたけれど刀国への入国記録は一つもなし、その割には対応が慣れてるなぁと思ったら両親が刀国出身の冒険者だった。
 今は引退して刀国でたこ焼きを売っている――知っている人な気がしてきた。

 でっかい人は刀国に行ったことはないものの、ギルドで神々の無茶ぶりクエストを何度もこなし、うちの子たちから評価と信頼が全体的に高いようです。
 あと備考欄にギルドの講習を真面目に受けた結果、休憩時間に出されるおやつをきっかけに甘いものにドはまりして体重が激増、痩せるために数々のクエストをこなしたらAランクになった。とあった。
 そんな理由でAランク!?

「この大きいの、冒険者ランクはAだけどいつでもSランクに上がれる実力があるだけじゃなく、平民だけど後ろ盾に教会の教皇がいるぞ、他にも俺や兄弟が祝福与えてる」
「ヨルムンガンド様の……」

 宰相さんが一転、キラキラした瞳ででっかい人を見つめている。
 ありがとうヨムちゃん、おかげでお兄さんの良縁を無事結べそう。
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