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第二章 聖杯にまつわるお話
第482話
しおりを挟むさて本日の予定は――スタンピード二件目!
と言っても別に僕は参加しない、もふもふに囲まれてうふふあははするのがお仕事だって。
「こういう仕事ならいくらでも」
優雅な花が咲き誇る庭園に通され、もふもふ兎のダンスを鑑賞中です。
庭園の持ち主である王家の方は現在スタンピードに対処するため城を開けており、給仕を務めるのは頭に「イネス様命」と書かれた鉢巻を装着したスケルトン。
淹れている紅茶もイネスの好きなふわりと優しい香りがする花の紅茶、テーブルに並べられたお菓子もイネスの好物ばかり、露骨ですねー。
「うん! 各地で別々の獣人雇ったから! 給仕は毎回違う獣人だよ!」
『平和的解決よ』
「人材募集大変だったな!」
「私のお店の常連も臨時で雇いました。スケルトンですけど!」
今日は騎士様はいない、本当は一緒に来ようとしていたのだけど、国王様に捕まって逃れられなかったらしい。
刀雲を人身御供にしようと企んでみたけれど、刀雲は将軍、そう最初から国王様サイドだったのです。
「母様、この国の王子は腐っていますが悪い奴ではないから安心して」
「え、安心要素ないけど?」
腐ってるのに安心??
「よぉアカーシャ、今日も美人だな! そっちはアカーシャのショタハーレムか?」
燃えるような赤い髪をした短髪の男が現れたと思ったら、開口一番とんでもない発言をしてアカーシャが流れるように頭を叩いた。
なるほど、腐るは腐るでも女神様と同じ意味の方か、女神様の加護持ってそう。
綺麗な庭に不釣り合いなボロボロの怪我人だけど叩いて大丈夫かな?
あ、だめかも、叩いたアカーシャが痛そうに手を振ってる。
「このような馬鹿ではありますが、基本善人です」
「アカーシャちゃん不敬罪って知ってる!?」
「黙れこの馬鹿王子、権力の比重で言ったら私の母上の方が高いに決まっているでしょう! ひれ伏せ!」
アカーシャが怒りのあまり女王様になっている。
止めなくていいかな、相手笑ってるし。
『スタンピード終わったの』
「ママ、次行くよ」
「カタッ!?」
アー君の言葉に紅茶を入れていたスケルトンがびっくりして動きを止めた。
心を込めて淹れた紅茶が無駄になるのを察知してショックを受けているようだ。
そうだよね、ファンというか信者がイネスに紅茶を淹れたり飲んでもらえる機会なんてそうないよね。
「王子、私の代わりに紅茶を飲んでください。聖水を使って淹れた最高級の紅茶です」
「えっそれって教会でしか飲めない最高級品だよね?」
「Aランクのポーションぐらいの効果はありますよ、お菓子も食べていいですから」
「……アカーシャ愛してるっ結婚しよう!」
「すでに結婚してますので。ではアー君行きましょう」
「私の代わりに王子の接待お願いします」
「カタタ!」
イネス直々のお願いに萎びかけていたスケルトンが復活した。
「えーっと次のスタンピードは涼玉が懇意にしてるとこだな」
『盆踊り根付いたの』
「さーっといってぱぱーと解決しましょう」
三件目では激しい魔物の攻撃にトレントが中心となって砦を守っていたけれど、応援する涼玉が可愛すぎて悶えていたら一瞬で終息した。
四件目は王家に要らないものとして扱われた不遇の王子が最前線で戦っていたので保護、実は未成年だったことが発覚してその後のことはシヴァさんが任されていたのを見た。
五件目、いい加減疲れてきたので家に帰りたい。
「スタンピードってこんな分刻みで移動するものだっけ?」
「女神様のせいですねー、年末年始忙しくて自由時間がないストレスがわしゃーってなったのが原因です」
中にはダンジョンの魔力暴走が原因な場合もあるだろうけど、この世界のスタンピードの原因の大半が女神様な気がしてきた。
……あの人にストレス与えるとろくなことないなぁ。
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