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第二章 聖杯にまつわるお話

side アー君

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 俺、アー君。
 正式名はアルジュナ。
 異世界転生者を母に持つ天下無双のアー君。

 今日俺はクリスマスパーティーの食材調達のために某ダンジョン前に来ている。
 ご覧ください、ダンジョン前の受付が大賑わい。

「アー君、なんでダンジョン?」
「一週間限定クリスマスイベント中なんだよ。これが終わったら新年イベントをやる予定」
「ダンジョンの扱い間違ってない?」

 隣でぐちぐち言っているのは前世から付き合いのある男、現世の俺の父親、皆からは騎士様と呼ばれている。
 ママに甘く俺の兄弟のおねだりに激弱で休日は刀雲パパと釣りばっかりしている男、それが俺のパパ。なんかプロフィールに威厳がないな。

「大丈夫、俺が運営だ」

 前世が超の付くシリアスだった反動か、今の生は思う存分に楽しんでいる。
 その代表がダンジョン。
 一獲千金も夢じゃないけれど、設定を弄れば今回のように特定の食材を調達する事も可能なのがいい。

「予定としては浅い層は飛ばして下層を周回、ボスも倒せたら倒すけど、他に冒険者がいたら基本譲る」
「うん」
「食材が一定量溜まったら闇に話しかけてえっちゃんを呼び、食材を渡す。あとはもうこの繰り返し」
「こういう調達って数日前にするもんじゃない?? これお城でやったら食堂のコックに激怒されるよ?」
「うちはドリちゃんの下に集うドリアンとスラちゃんがいるから」

 そのスラちゃんもシャムスが眷属化するあれを使ってスーパースラちゃんに変身してもらえば、どんな大量の食材もあっという間に素晴らしい料理に早変わり。
 中にチーズが入ったハンバーグを作ってくれるらしいので、今日の俺はとても気合が入っている。

「知っているかパパ、うちの国のコックって下手な大臣より給料いいんだぜ」
「他国からの引き抜き防止?」
「大金を払って他国が引き抜いた所で、食事の質が違うから同じ料理を作るのは無理だな。香辛料が高級品扱いだし、メシマズ当たり前。世界を旅して美味いものを食べるって大口叩いて旅に出た大臣が、一か月もしないうちにエールがゴミって泣きながら帰ってきたぐらいだし」

 今は真面目に城で働きつつ、刀国内の美食を食べ歩きするのが趣味だとか。
 コックの給料がいいのは単に人気職なのと、労働が過酷なのもある。
 朝は早くから下拵え、夜は片付けも兼ねてかなり遅いらしい、そう言えば我が家の食卓を支えるドリちゃんもほぼフル稼働だな。

「ちょっとパパ、火力強すぎ! ドロップ品まで消失させないでよ!」
「これでも抑えてる方なんだよー!」

 レイア様の方がずっと威力調整上手いぞ!

「やっと肉が出た――ってあああんもう!!」

 炎がダメならと剣の攻撃に切り替えたパパだけど、ドロップした瞬間に追撃の衝撃波が飛んで消し飛んだ。
 パパが挑むにはダンジョンのレベルが低いのだろうけども、あまり高難易度のダンジョンで祭りやると冒険者からの苦情が煩いんだよな。

 もぅ、俺だって火力調整ぐらいできるようになったのに!
 釣りばっかりやってないで峰打ちとか練習してほしい。

「よし、選手交代しよう。パパはゴーホーム、イネスと交代で」
「見捨てないで!」
「パパとじゃ日が暮れても食材が手に入らないの!」

 これなら魔物が貢いでくれるママの方がマシ、ただあっちはあっちで魔物がパワーアップしちゃうんだけどな。

 その後、パパと交代したイネスを頭に乗せてダンジョンを高速で周回した。
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