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第二章 聖杯にまつわるお話

第467話

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 寝ている間に代理を押し付けられ、翌日生んだ樹です。
 生まれたのは女の子、名前はパンドラ。
 でも中身が女神様に似てしまったようで全体的にガサツさが目立つ。

 皇帝に見せたら泣いて悲しみそう。
 せっかくの女の子なのに、大人しくお姫様やってくれるとは思えない。

「かあちゃん飯」
「膝を立てて食べない、胡坐をかかない!」
「かあちゃんかよ、かあちゃんだったわ」

 数日で僕と同い年かちょっと下ぐらいまで成長し、この有様です。
 行儀見習いとか称してヘラ母さんの所に行かせた方がいいのだろうか。

「外見は皇帝に似ている気がするんだけどなぁ」
「パパってイケメンだろ、似ててラッキー」
「その俗っぽい喋り方はどこで身に着けたの? 生まれて数日だよね!?」
「兄ちゃん達」

 君のお兄さん沢山いるけど、帝国兄弟と我が家の兄弟どっち?
 いやまぁ帝国兄弟はほぼ僕が生んだんだけどね。

「そういやさ」
「うん?」
「クリスタル林檎っての? あれ食ったら髪が一瞬銀色っぽく光った」
「騎士様みたいに発光しないだけ良かったね?」

 顔は整っている気がするんだよね、皇帝に似ただけあって。
 ただ髪の色が不明、不明は正しくないか、安定しないと言うべきか、透明から虹色まで色々な色に変化して本当に安定しないんだ。
 あっ、でも食べてる時に変化するから、食材の属性とかなんかそういうのが作用してるのかも。

 今は焼き芋食べているから綺麗な秋色だけどね。
 いや、髪の色がほっこり焼けた焼き芋の色ってどうなんだろう、美味しそうだけど。

「あー兄ちゃん達を見習って私も何かしようかなぁ」
「まだ生後数日だから無理しなくていいよ? でも外に行く時はスラちゃん連れて行ってね」
「うん」

 しかしこの子よく食べる。
 女神様が妊娠してから大量に食べてたのって、もしやこの子の影響なんじゃ……。

「お腹大丈夫? 痛くならない?」
「へーきだって、まだまだ食えるぜ!」

 モリモリ食べる様は力を使って空腹になった時の涼玉並です。
 うーん、歯が生え揃っているならお肉出そうかな、まずは柔らかくすき焼き風の丼でどうぞ。

「んーーっっ、タレが白飯にしみこんでてんまっ!!」

 大口で食べている割には食べこぼしとかないんだよね、不思議。

「なんでそんなに食べても大丈夫なのかな?」
「シャム兄が言うには足りない魔力を食べることで補ってるみたいだぜ」
「女神様の魔力じゃパンドラが生まれるに足りなかった?」
「多分そんな感じだと思う、ママって魔力から神の力まで世界を管理する力に注いでいるからな」
「聞こえはいいけど、BL世界の維持をするために惜しまぬ努力をしてるだけだよね?」

 手を抜いて失態を犯し、管理者としての権限を取り上げられないために。
 失態ばかりな気もするけど、基本的に騎士様は女神様に甘いから見逃されちゃっている。

「理由が酒を飲みたいがためなのはアレだけど、かあちゃんの腹に移動してもらってラッキーだったんだよ」
「そうなの? 騎士様がさすがにどうかなぁって眉間に皺を寄せて唸ってたよ?」
「だってかあちゃんの腹に移動できたから魂の繋がりが出来て夢の世界に干渉出来るようになったんだから、私の魂を形作ったのはあの世界が9割ってとこかな」
「女神様では手に入れられなかった。もしくは時間がかかっただろうものを全部あそこで補給したんだね」
「そうそう、そんな感じ。あと早く生まれて自分で飯食いたかったし、あそこで遊びたかった」

 すでに邪神兄弟に乗ってロデオしたり、火山で泳いだり、世界樹に素手で登ろうとしたり、飛び降りようとしたりとやりたい放題してます。
 火山で泳ぐ姿を見た時は心臓止まるかと思った。
 しかも全裸とかレディとしての慎みが足りない、やっぱりヘラ母さんの助けは必要かな。
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