上 下
468 / 809
第二章 聖杯にまつわるお話

第459話

しおりを挟む
 美味しい物を食べて、ちょっとお昼寝して、夕食を作って、帰宅した家族を出迎えて。
 いつもの日常、午前中にちょっとトラブルはあったけど、うん、日常の範囲内。

「待って、あそこに冒険者がいたって事は、アー君」
「うん?」
「行方不明の冒険者がどこにいるか知ってた!?」
「おう!」

 あっさり認めた!

「何せ監視役に冒険者雇ったの俺だしな!!」
「あの辺の森一帯、にいちゃが買い上げたから実は私有地」
『不法侵入になっちゃうの』
「天ぷらサクサクサクサク」

 魔物が住み着いた森、領土的にはドラゴンに喧嘩を売っちゃった国のものに見えるけど、実際の所有者はヴィシュタル教、そう女神様だったのです。
 教会に寄付金、女神様に特製ワインをダースで渡し、森はあっさりとアー君のものに。

「えっ、女神様はワインなの!? 文句出なかった??」
「ふふふ、それが大丈夫なんだなぁ」
「俺がワイン用に葡萄を品種改良!」
『僕らも踊りに参加したの』
「食べ終わった海老の殻も肥料に使いました!」

 さらに採取は騎士様、潰すのも騎士様、最終工程を行ったのは騎士様の魔力を使って作られたスライム、つまり騎士様の魔力が込められたワイン。
 時価どころか値段が付けられないやつだった。
 ちらりと騎士様を見たら満足そうに頷きながら「また作りたい」と呟いていました。騎士様って意外と物づくり好きだよね。

「支払いは金でも良かったんだけど、どこからかワインのことを嗅ぎ付けられてな」
『作る過程覗き見してたのかなぁ?』
「覗き魔だしな」
「常習犯です」

 そういえばアー君の資産って国の一つや二つ買えるぐらいあるんだっけ、そりゃぁ森ぐらい買えるよね。
 騎士様が毎日行っている仕事は国庫に無理やり詰め込まれたアー君の戦利品の換金作業、つまり騎士様が働けば働くほどアー君の資産が増えるっていう……。

「住み着いたドラゴンの住民登録もギルドで正式にしてあるから、王国の連中がなんと言おうと関係ない」
「むしろ人の私有地に戦力送り込んでいるから賠償金が発生してにいちゃウハウハ」
『請求書が十束になったら送るんだって』
「アー君、今度そのお金で船を買ってください」
「分かった」

 イネスのおねだりが桁違い。そして了承するアー君。

「大砲よりレーザーが好きです」
「取り付けとく」
『深海には十m級の海老がいるってヨムちゃんが』
「それなら船より潜水艦じゃないか?」
「じゃあそれも!!」

 おねだりの規模がでっかいなぁ。
 あれを豪遊というのだろうか、僕には真似できそうにないや。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したから継母退治するぜ!

ミクリ21 (新)
BL
継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したダンテ(8)。 弟のセディ(6)と生存のために、正体が悪い魔女の継母退治をする。 後にBLに発展します。

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。

キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成) エロなし。騎士×妖精 ※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。 気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。 木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。 色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。 ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。 捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。 彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。 少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──? いいねありがとうございます!励みになります。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

処理中です...