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第二章 聖杯にまつわるお話
第443話
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お菓子を諦めてお茶を頂いたら白湯だった。
嫌がらせかよと思ったらただ単にお金がない領地なようです。
持参したおやつ出してもいいか聞きたい、誰か聞いて。
「これ味うっすいなぁ、金がないにしてももっと工夫しろよぉ」
『霧ちゃん紅茶パックいれてー』
「うむ」
イグちゃんとシャムスが自由だった。
そもそも邪神であるイグちゃんがおもてなしの心を優しく汲んでくれるわけもなかったね、あと普通に我が家の食事で舌が肥えているのもある。
霧ちゃんがポットに紅茶のパックを仕込んでいるのを見て、イネスと涼玉が「その手があったか」という顔をしている。
どうやら二人は自分の分だけこっそり味付けしていたようだ。
ケチをつけちゃいけないと思って黙っていたけど、全員味に不満があったようです。
「申し訳ない、歓待する金がないんだ」
「持ち込み可ってことで俺らが出すから気にすんな!」
「ラーメン食べてみます? それとも胃腸が弱っているならひよこ豆のスープがお勧めです」
『ひよこ豆のスープにラーメン入れるの』
「ひよこ豆のクッキーもあるぜ」
萎びて消えそうな領主に同情したのか、子供達が一斉に世話を焼き始めた。
そして差し入れに使われているひよこ豆が大活躍、あの子なにと混ぜても万能だよね、もしかして僕の知っているひよこ豆から大分進化した?
領主さんもどうやらひよこ豆を知っているらしく、ちょっと感動しながらスープを飲んでいた。
手紙と一緒にたまにアー君から乾燥した豆が届くので美味しく食べているとのこと。
「それ食べてもいいけど埋めれば増えるぜ」
『わしゃわしゃ増えるの』
「ですが乾燥した状態ですよ?」
「にいちゃから届いたなら俺の豊穣が効いてるからな、どんな状態でも地面に植えれば増えるぞ」
「干からびた土地でも増える恵みのお豆さんです」
なお涼玉が遊んでいる時に近くにあると死ぬほど増える。
抜いての数日は成長し続けて、気が済むと成長しなくなると聞いている。
最近はひよこ豆の研究者も現れ、面白半分に増やして周囲に怒られているとか。
「んで? ここの領地が抱えている問題ってなんだっけ?」
「魔力がどうのこうのする病気だっけ? 忘れた!」
『ぼーん』
「魔力が増えすぎてどっかーん? あれ?」
「魔力過多のことでしょうか。魔力がある日突然増えて体内で暴走して死に至る病です」
そうだったのか、異世界の病気って怖いね。
「なんだ魔力が多すぎるなら使えばいいだろ? なんでやらねぇんだ?」
「魔力が突然増えるため、制御できずに周囲に被害が及ぶのです」
「シャムス兄、解決策あるか?」
『きれいきれい』
「そうですね、あれなら暴走しても綺麗になるだけです」
解決策が提示されたその瞬間、どうでもいい神託が僕の脳内に響いた。
曰く「エロイことエロイことエロイこと」だそうです、盗聴は良くないと思いますよ。
「かあちゃ、こめかみに青筋たってる」
「どうでもいい神託がくだってね」
『わぁ』
「一応聞きます?」
「聞いとかないと延々とゴリ押ししてくるやつだろ、それ」
みんなありがとう、ではお言葉に甘えて。
……え、あれを僕の口から伝えろと? 嫌なんですけど。
嫌がらせかよと思ったらただ単にお金がない領地なようです。
持参したおやつ出してもいいか聞きたい、誰か聞いて。
「これ味うっすいなぁ、金がないにしてももっと工夫しろよぉ」
『霧ちゃん紅茶パックいれてー』
「うむ」
イグちゃんとシャムスが自由だった。
そもそも邪神であるイグちゃんがおもてなしの心を優しく汲んでくれるわけもなかったね、あと普通に我が家の食事で舌が肥えているのもある。
霧ちゃんがポットに紅茶のパックを仕込んでいるのを見て、イネスと涼玉が「その手があったか」という顔をしている。
どうやら二人は自分の分だけこっそり味付けしていたようだ。
ケチをつけちゃいけないと思って黙っていたけど、全員味に不満があったようです。
「申し訳ない、歓待する金がないんだ」
「持ち込み可ってことで俺らが出すから気にすんな!」
「ラーメン食べてみます? それとも胃腸が弱っているならひよこ豆のスープがお勧めです」
『ひよこ豆のスープにラーメン入れるの』
「ひよこ豆のクッキーもあるぜ」
萎びて消えそうな領主に同情したのか、子供達が一斉に世話を焼き始めた。
そして差し入れに使われているひよこ豆が大活躍、あの子なにと混ぜても万能だよね、もしかして僕の知っているひよこ豆から大分進化した?
領主さんもどうやらひよこ豆を知っているらしく、ちょっと感動しながらスープを飲んでいた。
手紙と一緒にたまにアー君から乾燥した豆が届くので美味しく食べているとのこと。
「それ食べてもいいけど埋めれば増えるぜ」
『わしゃわしゃ増えるの』
「ですが乾燥した状態ですよ?」
「にいちゃから届いたなら俺の豊穣が効いてるからな、どんな状態でも地面に植えれば増えるぞ」
「干からびた土地でも増える恵みのお豆さんです」
なお涼玉が遊んでいる時に近くにあると死ぬほど増える。
抜いての数日は成長し続けて、気が済むと成長しなくなると聞いている。
最近はひよこ豆の研究者も現れ、面白半分に増やして周囲に怒られているとか。
「んで? ここの領地が抱えている問題ってなんだっけ?」
「魔力がどうのこうのする病気だっけ? 忘れた!」
『ぼーん』
「魔力が増えすぎてどっかーん? あれ?」
「魔力過多のことでしょうか。魔力がある日突然増えて体内で暴走して死に至る病です」
そうだったのか、異世界の病気って怖いね。
「なんだ魔力が多すぎるなら使えばいいだろ? なんでやらねぇんだ?」
「魔力が突然増えるため、制御できずに周囲に被害が及ぶのです」
「シャムス兄、解決策あるか?」
『きれいきれい』
「そうですね、あれなら暴走しても綺麗になるだけです」
解決策が提示されたその瞬間、どうでもいい神託が僕の脳内に響いた。
曰く「エロイことエロイことエロイこと」だそうです、盗聴は良くないと思いますよ。
「かあちゃ、こめかみに青筋たってる」
「どうでもいい神託がくだってね」
『わぁ』
「一応聞きます?」
「聞いとかないと延々とゴリ押ししてくるやつだろ、それ」
みんなありがとう、ではお言葉に甘えて。
……え、あれを僕の口から伝えろと? 嫌なんですけど。
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