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第二章 聖杯にまつわるお話

第441話

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 この激辛餃子を実らせたトレントをどうするべきか。

「俺らまだお子様だから辛いのは無理」
「父ちゃんのピザでいい」
「ピリ辛は大丈夫ですけど、この餃子は度を越しています」
「近寄るのも辛い」
「とりあえず私の離宮に置いていくのだけは勘弁して、ワインの実とかなら歓迎すっけどさ」

 以上、女神様と帝国皇子の言い分でした。
 優しくてほわんとした第四皇子も流石に受け入れてくれませんでした。

 普通の餃子に上書きしようと涼玉が努力してくれたけど、激辛が強すぎてどうにもならなかった。
 これは悲劇と喜劇どっちだろうか。

 焼却処分という物騒な案も女神様からあったけれど、その場合、周囲に刺激臭が拡散されて地獄絵図になるとうちの子が発言してなしになった。
 つまりこのトレントの身柄は我が家で引き取りが決定している。
 刀雲は喜びそうだけども、霧ちゃんも嬉しいだろうけど、辛い匂いが身に沁みたらシャムスに嫌がられるから微妙だろうなぁ。

 しんなりしながらも激辛かつ餃子の香ばしい匂いを振りまくトレント、皇子のお腹を刺激したようでぐーぐーぐーぐーと大合唱。
 お腹に生き物でも飼っていそうな爆音ですね。

「とりあえずラーメンの試食すっか」
『お目目痛い』
「ラーメンより先にトレントどうにかしないと私も辛いです」

 焚火に火を熾そうとする涼玉に対し、五感が他者より優れているシャムスとイネスが目と鼻の限界を訴えております。
 まぁそうだよね、どうしたものかなぁ。

「あっ、そうだ。刀雲に相談しよう」
『プレゼントする』
「今すぐ連れて行ってください、なんなら私のリボン枝に付けてもいいですよ」
「ごめんなトレント、俺らが弁当を間違えたばっかりに」

 刀雲なら引き取ってくれると相談を思いついた瞬間、子供達が引き取り前提で話を進めている。
 これは相談する際に一緒に連れて行かないとダメだね。

「女神様、僕はこの子と刀雲の所に行ってきますので、子供達をお願いします。手に負えなくなったらえっちゃんかイグちゃんを呼んでください」
「りょーかい」

 その場を女神様に任せ、僕は激辛トレントとともに刀雲の元へと転移した。
 室内だと苦情が山のように来そうなので、あらかじめえっちゃん経由で連絡し、ファンタジー小説お馴染みの訓練所で待ち合わせです。

 きっとそこには刀雲の部下である筋肉がたくさんいるはず――とちょっと期待していた僕だけど、刀雲から激辛警報が出ていたのだろう。
 僕とトレントを出迎えてくれたのは、ラフな格好の騎士数人と刀雲だけだった。
 全員、刀雲が加入している激辛愛好会のメンバーだそうです。

 しかもすでに餃子を食べる気満々のようで、訓練所の片隅にテーブルを設置してあり、各種タレと小皿、フォークまで準備済みだった。

「刀雲!!」
「イツキ」

 お仕事中に会えるのはいつもと違って新鮮! 好きって辛いっ、匂いがなぜかすでに辛いっ!! 離して、なんか目が痛くなってきた!!
 お昼は物足りなくて激辛カレーを食べた!?
 早く知りたかった。知ってれば抱き着かなかったの、に、がくっ。
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