上 下
443 / 844
第二章 聖杯にまつわるお話

第434話

しおりを挟む

 神託で一組のカップルを成立させついでに当主に就かせた女神様。
 本日も朝から元気です。

「これもテンプレの一つっていうか、どうしても辺境に対する偏見がなくならないんですよ」
『いにゃかもの扱いね』
「北はイネス信者が聖域扱いしてるから平和だとして、今度はどこだ?」
「帝国広いですからね、南東とかですか?」

 僕らを巻き込むと趣味と実益を兼ねられると学習してしまったのか、朝から議題を持って我が家の座敷に居座っています。
 騎士様にお休みを取ってもらい、相手をしてもらおうとしたら危険を察知したのか刀雲と一緒にさっさと出勤しちゃったんだよね。薄情な。

「中央の貴族から「辺境は田舎者」「戦うしか能がない蛮族」的な考えをどうにかしたいんですよね」
「ああテンプレですね」

 魔物が気軽に暴走するこの世界、武力がなかったら生きていけない。
 だけど中央貴族が辺境伯を馬鹿にする。これもまたテンプレの一つなんだよね。

 つまり偏見がなくならないのはテンプレ、つまり女神の呪いのせいなんじゃ……。

『辺境バトル体験』
「おお、それいいな」
「お試しで早速やってみましょう! 貴族の家に生まれたからには義務の一つや二つあるはずです、それが一個増えるだけです!」
「回復アイテムの売り上げも上がって一石二鳥なんよ!」

 息をするように自然にネヴォラが発生した。
 いつから居たんだろうか、女神様が辺境を語りだした時は居なかったような?

 よく分からない勢いと流れで試験的に貴族の辺境体験が決定した。
 皇帝の権力使ってもいいけれど、それだと決議やら何やらと時間がかかる。

「そこは私の出番よ、まずここに帝国貴族のデータがあります」
『あい』
「検索対象を次期当主に絞ります」
「おー」
「病弱や怪我を患っている者を検索から外し」
「次回に回しましょう」
「残った者を神託で名指しすれば完了です」
「非人道的なんよ!」

 世界の管理人という立場を利用したやり方でございますね。
 さすがに準備もあるだろうという事で、出発は明後日、集合場所は教会前。
 遅刻や仮病使ってもいいけれど、普通に邪神兄弟が迎えに行くらしい。ノリノリで協力してくれるのは想像が付きますね。

「でも行きなり体験合宿なんて……受け入れる側にも準備があるんじゃ?」
「今から準備に行きます!」
「神殿は未完成だけど、だからこそ人手が必要になってるんよ」
『僕らが出入りしてるから周囲の魔物は大人しいの』
「よし、魔物に新人来るから脅してくれって頼むか!」

 女神様の思い付きで決まってしまった強制辺境体験。
 アー君の領地で農作業かと思いきや、まさかのイネスの聖地行きだった。

 あそこ、イネス信者しかいないうえに、中身脳筋ばっかりだったような。
 辺境のイメージアップ作戦がメインのはずだけど、最終的にイネス信者になるオチが待っていそうです。

 イネスの聖地は聖属性グッズもたくさん販売しているので、強制参加する方はお小遣いの用意もお願いします。
 一番人気はイネスの名前が刺繍された鉢巻らしいですよ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

すべてはあなたを守るため

高菜あやめ
BL
【天然超絶美形な王太子×妾のフリした護衛】 Y国の次期国王セレスタン王太子殿下の妾になるため、はるばるX国からやってきたロキ。だが妾とは表向きの姿で、その正体はY国政府の依頼で派遣された『雇われ』護衛だ。戴冠式を一か月後に控え、殿下をあらゆる刺客から守りぬかなくてはならない。しかしこの任務、殿下に素性を知られないことが条件で、そのため武器も取り上げられ、丸腰で護衛をするとか無茶な注文をされる。ロキははたして殿下を守りぬけるのか……愛情深い王太子殿下とポンコツ護衛のほのぼの切ないラブコメディです

兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~

クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。 いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。 本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。 誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

処理中です...