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第二章 聖杯にまつわるお話
第434話
しおりを挟む神託で一組のカップルを成立させついでに当主に就かせた女神様。
本日も朝から元気です。
「これもテンプレの一つっていうか、どうしても辺境に対する偏見がなくならないんですよ」
『いにゃかもの扱いね』
「北はイネス信者が聖域扱いしてるから平和だとして、今度はどこだ?」
「帝国広いですからね、南東とかですか?」
僕らを巻き込むと趣味と実益を兼ねられると学習してしまったのか、朝から議題を持って我が家の座敷に居座っています。
騎士様にお休みを取ってもらい、相手をしてもらおうとしたら危険を察知したのか刀雲と一緒にさっさと出勤しちゃったんだよね。薄情な。
「中央の貴族から「辺境は田舎者」「戦うしか能がない蛮族」的な考えをどうにかしたいんですよね」
「ああテンプレですね」
魔物が気軽に暴走するこの世界、武力がなかったら生きていけない。
だけど中央貴族が辺境伯を馬鹿にする。これもまたテンプレの一つなんだよね。
つまり偏見がなくならないのはテンプレ、つまり女神の呪いのせいなんじゃ……。
『辺境バトル体験』
「おお、それいいな」
「お試しで早速やってみましょう! 貴族の家に生まれたからには義務の一つや二つあるはずです、それが一個増えるだけです!」
「回復アイテムの売り上げも上がって一石二鳥なんよ!」
息をするように自然にネヴォラが発生した。
いつから居たんだろうか、女神様が辺境を語りだした時は居なかったような?
よく分からない勢いと流れで試験的に貴族の辺境体験が決定した。
皇帝の権力使ってもいいけれど、それだと決議やら何やらと時間がかかる。
「そこは私の出番よ、まずここに帝国貴族のデータがあります」
『あい』
「検索対象を次期当主に絞ります」
「おー」
「病弱や怪我を患っている者を検索から外し」
「次回に回しましょう」
「残った者を神託で名指しすれば完了です」
「非人道的なんよ!」
世界の管理人という立場を利用したやり方でございますね。
さすがに準備もあるだろうという事で、出発は明後日、集合場所は教会前。
遅刻や仮病使ってもいいけれど、普通に邪神兄弟が迎えに行くらしい。ノリノリで協力してくれるのは想像が付きますね。
「でも行きなり体験合宿なんて……受け入れる側にも準備があるんじゃ?」
「今から準備に行きます!」
「神殿は未完成だけど、だからこそ人手が必要になってるんよ」
『僕らが出入りしてるから周囲の魔物は大人しいの』
「よし、魔物に新人来るから脅してくれって頼むか!」
女神様の思い付きで決まってしまった強制辺境体験。
アー君の領地で農作業かと思いきや、まさかのイネスの聖地行きだった。
あそこ、イネス信者しかいないうえに、中身脳筋ばっかりだったような。
辺境のイメージアップ作戦がメインのはずだけど、最終的にイネス信者になるオチが待っていそうです。
イネスの聖地は聖属性グッズもたくさん販売しているので、強制参加する方はお小遣いの用意もお願いします。
一番人気はイネスの名前が刺繍された鉢巻らしいですよ。
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