神様のポイント稼ぎに利用された3

ゆめ

文字の大きさ
上 下
440 / 923
第二章 聖杯にまつわるお話

第431話

しおりを挟む
 スラムに転移したら頭の上ではなく喉にイネスが巻き付いていた。
 いつの間にマフラーしてたんだろうと思い、外そうとしたらイネスだったんだ。

「ぺかぁしていいですか?」
「まだ視察してないっす」
「女神様、言葉遣い」

 世界を管理する女神様なのに、うちの子に対しては腰が低いというか下僕のように下手にでるよね。
 アー君には頭が上がらない感じだし、シャムスに対しては土下座する勢い。
 僕の知らないところでお互いに何かあったのか、それともうちの子が騎士様の威を借りまくっているのか、どっちかなぁ。

「ほらほらイツキちゃん、薄暗い路地裏、やせ細った人々、薄暗い世界だろう」
「喜ぶことですか?」
「ぺかぁしちゃう?」
「もうちょっと散歩させてください」

 単純に女神様がやらかし過ぎて、頭が上がらなくなっている可能性もあるか。

「スラムを潰して神様グッズを売る聖地にしたら、今度は別の場所にいつの間にかスラムできちまってさぁ、こういうのって強制力の一つだと思うか?」
「ラノベの展開にたまに必要になりますからねスラム」
「でもなくても困らないです、健全な労働で健全な生活を送るべきです!」

 イネスが正論を言っていると思うでしょ?
 でもちょっと人間の思う健全さとはずれているんです。
 イネスの言う「健全な労働」は神々への奉仕が含まれているので、死霊部隊のように24時間休みなしでダンジョンで狩りをするのも入っちゃうんだよね。
 欠片も健全じゃない気がする。

「ほら、イツキ見つけたぜ! ボロをまとった子供!」
「ショタですね、シヴァさん呼んでいいですか?」
「もうちょっと付き合おう!?」

 いかにも世の中を恨んでいる風な少年を発見、はしゃぐ女神様、ぺかぺか点灯するイネス、僕らを襲ってさらうかお金をはぎ取るかしようとしてえっちゃんに影で殴られる大人、端的に言ってカオスです。

「この人の気が済んだら帰るから、煩くしてごめんね。これ柔らかいパン」
「……」

 迷惑料代わりに渡したのはひよこ豆を粉にして作ったパン、お腹を空かせた状態でがっついて食べても胃が驚かない、ちょっとしたサプリ代わりにもなる優秀なパンです。
 渡したら貪るように食べる人が多いからね、こういう時は本当にひよこ豆が頼りになります。
 開発はドリちゃんとヘラ母さん、開発費はシヴァさんが出資したらしいです。世の中のためになっているからいいけどね。

「ほらイツキ、こっちには隻眼の剣士がいたぞ!」

 すみません。すみません。本当うちの女神様が騒がしくてすみません……って、スラムでこのテンション、スラム荒らしをする時の涼玉達と同レベルなんですが。
 あと首に巻き付いているイネスがぺかぁしたいと主張して、ビッカビッカ光ってて眩しい、剣士の人も睨もうかドン引きしようか迷って変な顔になってる。

「あっちには人さらいがいるぞ!」
「ぺっかぁぁ!!」
「目がぁぁ!!」

 女神様のセリフにイネスが光の矢となって飛び出していった。
 発光するイネスを見つめてた剣士の人が目を抑え、伝説のセリフを叫んでいます。

 ひよこ豆のスープとパンで許してもらえるだろうか。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!

かかし
BL
強い召喚士であることが求められる国、ディスコミニア。 その国のとある侯爵の次男として生まれたミルコは他に類を見ない優れた素質は持っていたものの、どうしようもない事情により落ちこぼれや恥だと思われる存在に。 両親や兄弟の愛情を三歳の頃に失い、やがて十歳になって三ヶ月経ったある日。 自分の誕生日はスルーして兄弟の誕生を幸せそうに祝う姿に、心の中にあった僅かな期待がぽっきりと折れてしまう。 自分の価値を再認識したミルコは、悲しい決意を胸に抱く。 相棒のスライムと共に、名も存在も家族も捨てて生きていこうと… のんびり新連載。 気まぐれ更新です。 BがLするまでかなり時間が掛かる予定ですので注意! 人外CPにはなりません ストックなくなるまでは07:10に公開 3/10 コピペミスで1話飛ばしていたことが判明しました!申し訳ございません!!

転生したら魔王の息子だった。しかも出来損ないの方の…

月乃
BL
あぁ、やっとあの地獄から抜け出せた… 転生したと気づいてそう思った。 今世は周りの人も優しく友達もできた。 それもこれも弟があの日動いてくれたからだ。 前世と違ってとても優しく、俺のことを大切にしてくれる弟。 前世と違って…?いいや、前世はひとりぼっちだった。仲良くなれたと思ったらいつの間にかいなくなってしまった。俺に近づいたら消える、そんな噂がたって近づいてくる人は誰もいなかった。 しかも、両親は高校生の頃に亡くなっていた。 俺はこの幸せをなくならせたくない。 そう思っていた…

国を救った英雄と一つ屋根の下とか聞いてない!

古森きり
BL
第8回BL小説大賞、奨励賞ありがとうございます! 7/15よりレンタル切り替えとなります。 紙書籍版もよろしくお願いします! 妾の子であり、『Ω型』として生まれてきて風当たりが強く、居心地の悪い思いをして生きてきた第五王子のシオン。 成人年齢である十八歳の誕生日に王位継承権を破棄して、王都で念願の冒険者酒場宿を開店させた! これからはお城に呼び出されていびられる事もない、幸せな生活が待っている……はずだった。 「なんで国の英雄と一緒に酒場宿をやらなきゃいけないの!」 「それはもちろん『Ω型』のシオン様お一人で生活出来るはずもない、と国王陛下よりお世話を仰せつかったからです」 「んもおおおっ!」 どうなる、俺の一人暮らし! いや、従業員もいるから元々一人暮らしじゃないけど! ※読み直しナッシング書き溜め。 ※飛び飛びで書いてるから矛盾点とか出ても見逃して欲しい。  

兄たちが弟を可愛がりすぎです

クロユキ
BL
俺が風邪で寝ていた目が覚めたら異世界!? メイド、王子って、俺も王子!? おっと、俺の自己紹介忘れてた!俺の、名前は坂田春人高校二年、別世界にウィル王子の身体に入っていたんだ!兄王子に振り回されて、俺大丈夫か?! 涙脆く可愛い系に弱い春人の兄王子達に振り回され護衛騎士に迫って慌てていっもハラハラドキドキたまにはバカな事を言ったりとしている主人公春人の話を楽しんでくれたら嬉しいです。 1日の話しが長い物語です。 誤字脱字には気をつけてはいますが、余り気にしないよ~と言う方がいましたら嬉しいです。

市川先生の大人の補習授業

夢咲まゆ
BL
笹野夏樹は運動全般が大嫌い。ついでに、体育教師の市川慶喜のことも嫌いだった。 ある日、体育の成績がふるわないからと、市川に放課後の補習に出るよう言われてしまう。 「苦手なことから逃げるな」と挑発された夏樹は、嫌いな教師のマンツーマンレッスンを受ける羽目になるのだが……。 ◎美麗表紙イラスト:ずーちゃ(@zuchaBC) ※「*」がついている回は性描写が含まれております。

異世界転生してハーレム作れる能力を手に入れたのに男しかいない世界だった

藤いろ
BL
好きなキャラが男の娘でショック死した主人公。転生の時に貰った能力は皆が自分を愛し何でも言う事を喜んで聞く「ハーレム」。しかし転生した異世界は男しかいない世界だった。 毎週水曜に更新予定です。 宜しければご感想など頂けたら参考にも励みにもなりますのでよろしくお願いいたします。

囚われた元王は逃げ出せない

スノウ
BL
異世界からひょっこり召喚されてまさか国王!?でも人柄が良く周りに助けられながら10年もの間、国王に準じていた そうあの日までは 忠誠を誓ったはずの仲間に王位を剥奪され次々と手篭めに なんで俺にこんな事を 「国王でないならもう俺のものだ」 「僕をあなたの側にずっといさせて」 「君のいない人生は生きられない」 「私の国の王妃にならないか」 いやいや、みんな何いってんの?

せっかく美少年に転生したのに女神の祝福がおかしい

拓海のり
BL
前世の記憶を取り戻した途端、海に放り込まれたレニー。【腐女神の祝福】は気になるけれど、裕福な商人の三男に転生したので、まったり気ままに異世界の醍醐味を満喫したいです。神様は出て来ません。ご都合主義、ゆるふわ設定。 途中までしか書いていないので、一話のみ三万字位の短編になります。 他サイトにも投稿しています。

処理中です...