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第二章 聖杯にまつわるお話

第424話

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 皇帝にそろそろピザが焼き上がるから持ち運びを手伝えと言われ、強制的にお手伝いをさせられた。
 サイズは50cmのパーティサイズから厚さ20cmの横綱ピザまで、とんでもない力作が僕を待ち受けていました。

「涼玉の炎を使って低温でじっくり焼いた」
「絶対に焦げないから安心だね」

 もちろん使われている野菜はアー君の領地で採れたものばかり、一応お祭りの趣旨には合っているのかな?
 回遊庭園に並べられているバーベキューコンロの上で、一流のコックが皇帝が手掛けたピザを命懸けで焼いています。
 そんな必死にならなくてもうちの子の炎は植物と食べ物は焦がさないですよ。

「そもそも、皇帝がパーティーに参加していたのが驚き」
「国としての交流はほぼないが、ピザの良さを広げるために参加した」

 この人、次代が育ったら皇帝なんて辞めて、ダンジョンを巡りながらピザを作る愉快な職人になりそう。
 下宿先は我が家だろうか。
 女神様も付いてきそうだから、なるべく長期間皇帝を続けていただきたいです。

「そろそろチーズの種類もこだわりたい」
「黄金の牛が領主やってる領地で新作チーズ出たって言ってたかな」
「それは良い事を聞いた。今度子供達と行ってみる」

 シヴァさんからも一応手に入るけど、あの人のチーズはアー君用みたいなものだしなぁ。
 箱庭世界で好き勝手ショタを守護するための賄賂として渡している節がある。

 それにしても皇帝のピザは何か足りない気がする。
 ピザに必ずのっているイメージがあるあの丸いの、そうサラミがない。

 なぜ使わないのか疑問に思ってすぐに気付いた。
 そもそも食文化が一進一退、飢饉やスタンピード、邪神一家の存在で人の命がとても軽いそんな世界にサラミがあるわけがない。

 刀国が特殊過ぎて気付かなかった案件再び。
 とりあえずメニュー画面でサラミを購入、輪切りにしてピザにのせると美味しいものだと言って皇帝にプレゼントしてみました。

 そしたらもう大興奮、まだ焼いてないピザにのせ、焼いてすぐその場で試食する姿はなんかグルメ漫画の登場人物みたいでした。
 きっと背景では宇宙が映し出されてたりするんだろうなぁ。

 そんなやり取りをした後、ようやく会場に戻ったらどうやらイベントがあったようで、会場が明るい雰囲気に包まれていました。
 なんだろうと思って刀雲と合流したらその肩にはドヤ顔のイネスが。

「アー君、何があったの?」
「呪われて虎の姿になった人が現れて、イネスが派手な演出で解呪した」

 なお僕がピザの運搬に駆り出されたのは、彼の姿がホワイトタイガーだったから。
 僕が関わると解呪するどころかホワイトタイガーになっちゃう可能性があったので、会場から引き離されたそうです。な、なんだって。

「ホワイトタイガー見たかった」
「危なかった」
『ねー』
「かあちゃ、それよりピザ食おう!」
「私も食べたいです! 一働きしたから小腹空きました!」

 追加情報として呪いから解放された子息と、彼をアー君らに引き合わせた冒険者の一人が結婚したそうです。
 やっぱり僕もそのシーン見たかったなぁ。
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