神様のポイント稼ぎに利用された3

ゆめ

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第二章 聖杯にまつわるお話

閑話

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 会場には多くの貴族だけでなく、食糧支援のために裏に表に奔走した冒険者達も呼ばれていた。
 本来なら煌びやかな空間に不釣り合いな粗暴さに眉をひそめられてもおかしくないのだが、そういった言動をしそうな人物は会場にイネスが入った時点で浄化されている。
 そのため、彼らも安心してパーティーを楽しんでいた。

 もし漏れを見つけたら影に向かって一言報告すればイネスに伝わり、次の瞬間には綺麗な貴族様が出来上がるだろう。
 さらには本日、神々の威力増強装置とも言うべき神子様がいる。
 相当頑固な汚れでもない限り、城の敷地全体が浄化中のようなものだった。

 なお、イネスに浄化された貴族は各々の領地で派手に祭りをするためここにはいない、本日参加しているのは彼らの代理や親族などである。
 権力を笠に着て下手な発言をしてもしなくても、綺麗な感じになるのは時間の問題だろう。

「神子様一家勢揃いかぁ、今日のあれアルパカだろ」
「いやぁ冒険者長年やってるといいことあるよなー、城の副料理長が貢いでいるって噂だぜ」
「帝国のパーティーはピザだったけど、ここは特大ステーキがあったぞ。それ推しに貢いでるんじゃなく求婚だって話だけど」
「運搬の手伝いしただけで、まさか他国で王城のパーティーに呼ばれるなんて思ってなかったぜ。副料理長って獣人だったか?」
「食材はアルジュナ様のとこからの押し付けだろ、涼玉様がまたロデオで爆走したんだろうな。獣人じゃなくて魔王様の所から転職した亜人って聞いた」
「あの回収祭り、下手な依頼よりしんどいんだよな。高嶺の花だって同僚に慰められてるらしいぜ」

 刀国民なら誰もが持つアイテムボックスだが、一応魔力による容量制限は存在していた。
 そのため運搬の手伝いをした者は自然と魔力が高い者ばかりになる。

 神子一家を眺めながら笑いあうこの男たちは総じて魔力が高く、アルジュナから指名依頼を受けているうちに親しくなり、自然にパーティーを組んだ経緯がある。
 専属契約も持ち掛けられているが、無茶振りされるのが目に見えているのでお手伝い程度で勘弁してもらっているのが現状だった。

「あのさ、騎士様が光って見えるんだけど」
「光ってんな、七色に」
「また悪戯されたのか、見慣れると神秘的通り越してギャグだよな」

 子供の頃に遊んでもらった騎士様が家族を持ったのは素直に喜ばしい、ただああやって子供達のおもちゃになっている姿を見るたびに「父親やってるなぁ」とほのぼのとしてしまうのは許してほしい。
 
 そうして料理を楽しんでいたら入口のあたりの空気がざわりと揺れた。
 気になって視線を向けたメンバーの一人が驚きに動きを止め、隣にいた仲間の肩を叩いて視線を誘導した。

「なんでこんな所に獣人が」
「汚らわしいわ」

 素早く動いて扉に近付くとそんな言葉が聞こえてきた。
 神子様一家がいる場所でそのセリフは生命に関わる気がする。

「おい、君」
「……」

 眼光鋭くこちらを睨みつけるように視線を向けたのは虎の獣人だった。
 しかも普通のオレンジ系統の虎じゃない、神子様も大好きホワイトタイガー。

「だめだよ、だめだめ」
「まずいって、早く帰りな」
「今日は神子様が来てるから、なんかこう、訳の分からないうちに進化しちゃうよ」
「うっかりしたらただの虎とかになって戻れなくなるとかあるらしいから」
「……俺のこれは呪いだ」

 軽く話を聞いた所、彼は歴史だけは長い名家の嫡男。
 魔物討伐に赴いた際に魔物から呪いを受けてこの姿になったらしい。

「余計に危険じゃね?」
「神子様、ホワイトタイガー大好きだから、見つかったら一生その姿確定すると思う」
「とにかく、神子様に見つかる前にイネス様かアルジュナ様に相談するか?」
「それより神子様を丸め込んで席を外してもらって、人前で派手に呪いを解いてもらうのは?」

 そうしよう、そうしよう。と呪われ嫡男の意見も求めずに決め、一人はイネスにおねだりしに走り、もう一人は神子様に席を外してもらう経緯を説明するためアルジュナの元に走った。
 この後彼は無事に呪いから解放されたが、お約束の展開としてパーティーメンバーの一人とその場で電撃結婚をして神々から祝福を受けたという。
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