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第二章 聖杯にまつわるお話

第418話

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 ――拝啓 神子様
 突然ですが私には国王なんて無理よりの無理です。
 お願いですアルジュナ様を止めてください。

 そんな感じのお手紙を貰った。
 音読してくれるシャムス可愛い。

 どうせならネリちゃんの新作、ケモミミが生えた男の子がレモンと旅する絵本も読んでもらおう。

「そのときレモンがいーまちた。あなたにはビタミンがたりない、ぼきゅをみじゅのなかにしぼっておのみ」

 なんだろう顔がパンのあのヒーローのレモン版かな?

「ゆうかいしゃれたレモンをみつけたときには、ひからびてカサカサになっていました。ケモミミのおとこのこはみっかみばんなきあかし、ともをとむらうためにレモンのうたをかくちでうたったのです」

 サラッとレモンが死んでいるのですが。
 しかも絵本の最終ページには国歌「レモンの歌」が書かれていました。
 絵本自体も全体的にレモン色。

 ネリちゃん染まったなぁ。

「レモンもったいないですね」
「そうだな、干からびる前だったら輪切りにして蜂蜜に漬けるとかレモンチップとかにできたのに」
「この子はレモンの歌を歌う吟遊詩人になって大儲けなんよ」
『おくまんちょーじゃ』

 絵本に対する感想に夢がないですね。
 この絵本、レモン国でフィーバーして歌劇にもなったらしいけど、まぁあの国はレモンを狂信的に崇拝してるから温度差は仕方ないか。

「でもこの男の子、モデルはシャムスなので大儲けでハッピーは問題ないですね」
「どうせならレモンを生かしてもっと手広くやってほしかった」
「これ続きではレモンの子孫と出会ってまた仲良くなるんよ」
『吟遊詩人は廃業してレモン専門店作るのよね』

 何気にシリーズ化しているこちらのレモンの冒険談。
 王妃が著者ということもあり、一家に一冊の勢いで売れてるそうです。
 ネリちゃんすげぇ。

『思いついたの。高級レモンを送ってもらって、それをハロウィンダンジョンに投入するの』
「カボチャがレモン味にならないか?」
「レモン色のカボチャが誕生しちゃいます」
「新種の魔物が爆誕する未来が見えるんよ」

 子供達がわちゃわちゃしている間にもらったお手紙に返信を書いた。
 ただし日本語で書いてしまったのですが、誰かこれを相手の読める言語に書き直してくれませんかね?

「なになに、アー君を説得するより神殿で祈ったほうが勝率高いですよ。新国王頑張って。かあちゃ、何の慰めにもなってないぞこれ」
「だよね」

 それに神殿で祈ったとして、女神様から授けられるのは旦那様だろうなぁ。

「次のアー君のお休みに皇帝とハロウィンダンジョンに行くから、この人も誘おうか」

 きっとその方が前向きなイベント発生すると思うんだ。

『イベント発生確定したの』
「まぁ何とかなるよな」
「なると思います」
「アー君に丸投げすんの」

 じゃあ当日のために……お弁当作るぞー!
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