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第二章 聖杯にまつわるお話

第415話

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 約一時間後、騎士様が迎えに来て生徒達とはそこでお別れ。
 万が一を考えてえっちゃんとアー君に補助してもらい、無事に元の時間軸に戻せたそうです。

 別行動の間に僕らはボスとその配下、あと森に出現するその他の魔物の協力を得てダンジョン改造に着手。
 亡国となった国にハロウィンダンジョンが爆誕した。めでたしめでたし。

「……えっ、亡国になったの!? 早っ!」
「学生を無事に送還した瞬間滅ぼしたんよ」
『ダンジョンを改造している間にびっくり』
「市民は無事ですか?」
「無事だったらにいちゃの領地に横流し」

 木々にはカボチャが実り、大地にはさつま芋、違う逆だ。
 いや逆じゃない、どっちも土の野菜……我が家でさつま芋が木に実っているのが間違っているんだった。

「涼玉、カボチャの重みで枝が折れそうだよ」
「おっとさすがに無茶だったか、失敗」

 てへっとした涼玉が謎のダンスを踊ると枝がみょーんと伸びてカボチャが地面に移動した。
 さすが植物に関しては謎の効力を発揮するね!

 やれやれと見渡したら今度はさつま芋が木に実っていた。
 違うよ涼玉、さつま芋は地面のままで良かったんだよ! 交代しなくて良かったんだよ!

 などと脳内突っ込みを入れていたら、ひと際大きなカボチャが地面から立ち上がり、案内人をやらされていた冒険者に襲い掛かった。
 ギャーギャー言いながら交戦、最終的にす巻きにされてレッサーデーモンの守る辺境行きのドラゴン便に乗せられていました。
 まさかの労働力枠扱い。

「涼玉、今カボチャに体が生えて冒険者に襲い掛かってたよ」
「ダンジョンだからな!」
『さつま芋、中身が紫だったよ』
「あれ? ハロウィン仕様に変化した? 種芋は家から持ってきたやつなのになー?」
「涼ちゃん、地面に移動したカボチャの中にたまに顔が浮かぶ子がいます」
「それ魔物化してるやつだ」

 白いものが視界を横切ったので、霧ちゃんの霧が何かを運んでいるのかと思い、そちらに視線を向けたら白い布を被ったようなシンプルなゴーストがいた。
 コミカルな雰囲気なので怖くない、と思った矢先、これまた冒険者に襲い掛かってこちらは討伐され、ドロップ品としてバニラアイスを落としていました。なんで??

「涼玉、今、あの……ゴーストがね」
「ん?」
「討伐されたと思ったらアイスをドロップした」
「!?」
「あっちにピンクいます、かしこみ!!」

 チュインと音が鳴ると同時にピンクのゴーストが消え、カップに盛られたイチゴアイスがドロップした。
 ダンジョンが奥深すぎる。

「お店のデザートにアイス持ち帰ります!! ちょっと手伝い持ってきます!!」

 言うが早いかイネスがどこかへ走り去った。
 後には両手にお菓子を持ったネヴォラがポツリと残されて……待って、そのお菓子どこから?

「ところで僕だけ麒麟に乗ってていいのかな?」
『いいのよ』
「さすがに俺が乗ったら潰れるからな」
「倒してドロップ品確かめたいけど泣かれるから」

 ネヴォラの一言にボス麒麟がびくっとした。
 下僕に成り下がって弱体化してません?

「持ってきました」
「「ガタガタガタガタ」」

 たまに襲い掛かってくるカボチャを生け捕りにしたり、倒してドロップ品稼いだりしていたらイネスが戻ってきた。大量のスケルトンを連れて。
 豪華な服を着ながらガタガタ震えているスケルトン、もしやついさっき滅びたばかりの王侯貴族だったりする?
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