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第二章 聖杯にまつわるお話

第414話

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 アー君の登場で既婚者だったことどころか子供も生まれていたことが生徒達にバレた騎士様、しかもアー君はふわふわ毛並みの獅子の獣人さん。
 しかもしかもですよ、アー君にホッした表情で「パパも来てたのか」と言われた一瞬、表情がデレンと崩れたのを生徒達は見逃さなかった。

 アー君の笑顔に一人で厄介ごとを片付けなくていいという安堵が含まれているにせよ、頼られた嬉しさが隠し切れなかった騎士様に生徒さんによによ。
 中には「紙を、ペンをくれ!」と叫ぶ子もいました。

「じゃあ五体満足なうちに帰ろうか!」
「いやです」
「せっかくの異世界、いつでも帰れるならちょっと冒険したい」
「理事長先生、せめてボスちら見したいです」
「せめて理事長が戦っているシーン見たいです」
「せめて理事長がデレているシーン見たいです」
「せめて理事長が愛妻家しているシーン見たいです」

 せめての要望が多い。
 静かだなーと思ったら、騎士様は一クラス分の生徒を確実に地球に送還する呪文を構築していました。

「だがしかしパパ、戻る時間軸はパパが把握している時間軸で大丈夫か?」
「ん?」
「テンプレでは異世界と元の世界では多少差異が発生するものだぞ」
「な、なんだって」
「あとパラレルワールドという設定もあってだな」

 女神様の知識にアー君が毒されている。
 いやアー君だけじゃなくうちの子全体か。
 しかもラノベを嗜んでいる子が多いらしく、あちこちでうんうんと頷いたり考察したりしてます。
 騎士様が現れたからずっと余裕の態度を崩さない、理事長に対する信頼の高さよ。

「つまり一番確実に戻すには召喚に使った魔法陣を利用した方がいい?」
「うん」

 騎士様の視線が学生を見て、僕らを見て、アー君を見て、最後にもう一度僕らを見た。

「この大人数、任せていいかな」
「おう、なんなら教育のエキスパートである俺の担任の先生呼ぼうか?」
「残業が発生すると旦那が怖いからいいや、せめてヘラとかでお願い」
「分かった」

 アー君と騎士様の間で軽い打ち合わせが終わり、生徒を僕らに任せると騎士様はどこかに転移してしまった。

「ラスボス発見したんよ」
「下僕にしました」
『ママが出るまでもなかったねー』
『イネスいないと思ったら』

 ネヴォラの案内でダンジョン深層に到達、ボスフィールドと呼ばれる特殊空間で生徒たちとお茶になりました。

 僕が出るまでもなくイネスとネヴォラの二人でダンジョン制圧しちゃってました。
 ラスボスは筋肉タイプに改変された麒麟、イネスとネヴォラの連携でボコボコにしたらあら不思議、土下座で恭順の意を示したそうです。下手に脳筋にするからこうなるんだと思う。

 あとは仲間にしたところに強めに魅了をかければ裏切ることのない下僕の完成。我が子ながらえげつない。

「思ってたのと違う」
「いや、これはこれで貴重じゃない?」
「数多くいる主人公もダンジョンでいきなりお茶とかは無理だろ」
「しかもこのお茶緑茶じゃない?」
「よく考えたら食ってる饅頭、某有名店のじゃ……」

 こしょこしょと生徒が顔を突き合わせて意見をすり合わせ、そのうち一人が僕に「ネットスーパー」持ちかと聞いてきたので素直にイエスと答えたことで一気に英雄扱いになりました。
 異世界でネットスーパーはロマンの一つだよね、分かる。

 とりあえず帰ったらメニュー画面を授けてくれた女神様に高級ワインを贈ろうと思う。
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