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第二章 聖杯にまつわるお話

第413話

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 今となっては異世界になった僕の故郷地球。
 僕はそこの日本出身で、とある高校を受けようとしていた受験生だった。気がする。

「へぇ~へぇ~」
「独身貴族だと思ってたら、まさかの異世界に嫁がいたとはね~」
「出会いはどこでですかぁ?」
「プロポーズのお言葉はー?」
「睨んでないで教えてくださいよーりじちょーせんせー」
「コメントくださぁい」

 異世界で地球の学生とまさかの出会い、ラノベでよくある大量召喚、そして勇者として魔物討伐を依頼され、可否の選択肢もないまま奴隷の首輪をされて強制的に討伐に送り出された。
 ここまではよくある。うむ、テンプレだね。

 そんな身の上の彼らは現在、騎士様を取り囲んでによによにやにやしています。
 そう、僕が受験しようとしていたのは騎士様が運営する高校、つまり彼らは騎士様が理事長やっている学園の生徒さんたちだったのです。

 彼らを監視する人間も当然いたけれど、ほらこっちって霧ちゃんとえっちゃんがいるからね、霧で視界を遮り、声を遮り、パニックに陥る隙も与えずに闇がパックン。
 最初からいなかったかのように静かな退場でした。

 何が起こっているか分からない子供達は当然混乱する。けれどこちらには癒しの権現と呼ばれる我らがイネスちゃんが同行中。
 ぺかぁっとではなくふわぁんとした光を放ち、混乱を一瞬で鎮めました。うちの子凄い。

 人間を飲み込むと同時進行で騎士様に連絡を取ってくれていたのがえっちゃん、話を聞いてすぐに駆け付けた騎士様ですが、安否を確認するより先に質問攻めに合ってます。
 イネスのふわぁんで精神状態が落ち着いたはずなのに別方向に興奮状態です。おかしいね。

「っっ今すぐ地球に返却して、ついでに記憶消す!!」
「きゃぁこわーい」
「ぱわはらでぇす」
「異世界に突然呼び出されて不安な生徒を突き放すなんて正に非道!」
「樹、こいつらえっちゃんの闇に放り込んで!!」
「きゃーー! かぁわいぃ!」
「頬っぺたつるつるー」
「理事長とどこで出会ったの?」
「でもこの顔日本人だよな、えっもしかして異世界転生ってやつ!?」

 若者のパワーが凄い。
 うちの子?
 僕を庇おうとして前に出た瞬間、可愛い可愛いの嵐に巻き込まれてもみくちゃにされております。

「すげーすげードラゴンだ」
「俺、元の世界に戻れたら小説書いちゃおうかな」
「お前漫画部だったよな、漫画で描いてくれよ」
「えっ、ぼ、ぼく!?」

 マールスどころか霧ちゃんさえも撥ねつける若者パワー、騎士様の庇護下にある学生だから強く出れないのもあるんだろうけど、それにしても生命力が漲っている。

「理事長閣下、この首輪って記念に持ち帰れますか!」
「外す時点で消滅するから無理、あと閣下ってなにかね」
「異世界の記念がほしい! カメラとかないですか、それかそれに準じた魔道具!」
「ケモ耳かわいー!」
「異世界のイケメンはレベルが違う!」
「あーもー! もっと現状を不安に思いなさい!」
「そうは言われても、なぁ」
「うん、理事長がいる時点で解決してるみたいなもんだし」
「元の世界に帰れる方法がないとか言われたけど、理事長が目の前にいる時点で憂いは晴れました!」
「メンタル強いね」

 中には霧から離れない程度に森の中を見学している強者もいます。
 魔物?
 霧ちゃんの結界で近づけないからご安心を。

「やっと授業終わった! あっパパも来てたのか!!」

 カオスな状況の中、追加の火種としてアー君が到着しました。
 生徒達の絶叫で森が揺れたかと思ったね。
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