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第二章 聖杯にまつわるお話

第389話

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 現実世界に疲れたので、逃避のために夢の世界にやってまいりました。
 本当に疲れた。
 召喚から始まる村の救済、お昼を食べて領主の館を襲撃、人格矯正。

 大活躍したのはイネスだけどね、付き合った僕はちょっと疲れた。
 子供たちは体力が有り余っているようで、まだあっちで改革中、僕は疲れたので一足先に離脱して帰宅、クッションコーナーでスライムのマッサージを受けながらお昼寝です。

 子供たちが遊んでいる最中なら夢の世界をゆっくり探検出来るはず。
 広すぎてここが現実なら遭難するから移動しないけど、夢の世界だから疲れないのが素晴らしい。

 世界樹の枝に作った第一の隠れ家は子供たちに占領されたので、新しい隠れ家でも作ってみようかな。
 上がダメなら下、つまり根っこ辺りとか!!

 ふんふん鼻歌を歌いながら移動。
 夢の世界だから地面を滑るように歩いている気がするけど、どうやっているのかと真面目に考えると墜落しちゃう可能性があるので深く考えない。
 夢と現の間だから出来る! それでいい。

 夢の世界のどこにいても見える世界樹と、世界樹に絡まる伴侶の豆の木。
 近づくとファンタジー感満載の樹海。

 そう、どこからでも見えるという事はそれだけ巨大だということなんだよね、だから根本周辺はちょっとした森というか樹海というか、とにかく木々がわっさわさ。
 どこから入り込んだのか、トレントやドリアードが群生しています。
 リーダーはドリちゃんらしいから、もしかしたらドリちゃんから派生したのかもしれない。

 すいすいと泳ぐように森を通り抜け、辿り着いた根本は底が見えるほど澄んだ湖になっていて、ヨムちゃんが持ち込んだ魚が住んでいます。
 もちろん子供たちのおやつ用。

 辿り着いたら蛇がいた。
 一瞬、また根っこが伸びたのかと思ったら、鱗が紫がかった黒っていうのかな?そんな感じなのでランちゃんではないのは確か。
 知らない間に神薙さんが子供を産んで、夢の世界に預けたんだろうか。
 この世界、邪神の託児所じゃないんだけどなぁ。

 湖畔に小屋を建てるのもロマンがあるけれど、気付いたら占領されている未来しか見えない。
 どうせすぐに見つかるとは思うけど、ギリギリまで隠しておきたい気分なんです。

 水の上を歩いてでっかい蛇に近寄ると、根っこをガジガジしていた蛇がパチリと目を開いた。
 僕に気付くと警戒して牙を向け――ようとした瞬間、根っこが素早く動いて蛇の頭をスパーンっと殴ったのですが。教育的指導が素早い。

「イタイ」

 蛇が頭を持ち上げた事でその向こうになかなかいい感じの木のうろを発見、あそこにしよう。
 みーみー鳴く蛇の喉下を通り抜け、うろに到着。
 ふむふむちょうど良い感じの空洞だね、自然に生えたこけもいい感じ。

 後ろから「えー……」と声が聞こえてきたけど無視して、うろの中を探検。
 うーん自宅の部屋より一回り狭いぐらいのスペースかな。

 入口はそのままにして、奥の方くつろぎスペースを作ろう。
 中央に焚火を、囲むように石の椅子、壁際には棚を作って何かを飾るでしょ、あとロフト作って上にゴロゴロスペース、などと思ったら一番奥に温泉が湧いていた。
 聖なる泉ならぬ聖なる温泉、とってもいい。
 座って足湯を楽しめるように地面を整える。えっちゃんが。

 えっちゃんと相談のうえで細々と内装を整えて完成。と思ったのは僕だけで、僕を足湯に座らせたえっちゃんが次々と闇からクッションや絨毯、布を取り出してあちこちに飾り付け始めた。
 あっ、はい、僕のアイデアじゃシンプルを通り越して殺風景だったんですね。

 インテリアコーディネーターの資格も持ってそうだなぁ、と思いながら足湯を楽しんでいたら、いつの間にか隣で蛇が入浴していた。
 鱗の色からしてさっき外にいた子だろうか。

「ココ、俺ノ縄張リ」
「それを言われると、この夢の世界は僕と子供達の空間なんだけどな」
「……」

 ガクガク震えるので心配になって声を掛けようとしたら、蛇の隣にマンドラゴラがいて蛇君にメンチを切っていました。追尾型教育係かな。
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