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第二章 聖杯にまつわるお話

第359話

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 魔力の有無が優劣を左右する国の王様が目の前にいる。
 とりあえずお茶でいいですか?

「ねぇアー君、こういう場合はお城で会議するものじゃない?」
「非公式だからいーの、何より俺が堅苦しいことしている暇がない」

 主に僕が強制召喚された後のやらかしとか、整備とかそれに伴う課題レポートの修正とかなんかもう大変な量になっているらしいです。
 異世界の学生って大変ですね。

「ところで王様の横に座っている半裸の人は誰?」
「そこの国で信仰してる神もどき」

 肌が青いのか、アー君を前に全身の血の気が引いて死んでるのかどっちだろう。
 まぁアー君の隣には舌なめずりする邪神一家やら、皇子がキャンプに行っている隙に美味しい物食べに来た女神様とかとんでもない存在が揃っているけど。

 この会談が終わったら先に行った皆と合流してキャンプ場でバーベキューです。
 皇帝は先に行ってピザ生地作ってるんじゃないかな、王様としてはトップの神々より皇帝の方が気楽……でもないか。

 僕がこの席に残っている理由は給仕もあるけど、王様と一緒に来た神様に泣きつかれたからです。
 今もこっちをチラチラ見ながら助けて欲しそうなのは分かる。でもまだ話し合い始まってないからね?

「待ったアー君、これアー君が進行させないと話し合いが始まらないし終わらない」

 刀雲も騎士様も釣りしたいってキャンプ場に行っちゃったし、女神様がいるのはスイーツ食べたいから、邪神一家はあわよくば王様か神様どっちか食べようとしているだけ、進行役がいません。

「俺だって、俺だってキャンプ場に行って遊びたい!!」

 めそめそしながら会談が開始され、たまに女神様がデザートを食べながら修正したりして話し合いは進み、と言いたい所だけど、王様がほとんど息してない。
 神様なんて邪神一家の涎まみれで目を開けたまま気絶してます。

「魔力なしの子供を虐げていることをシヴァが嗅ぎ付けたよ」

 牙をガチガチさせながら神様の背後に立っていた神薙さんの爆弾発言に、アー君が口元を引きつらせています。

「ただ冷遇して家から追放とかだけならまだ救いがあったけど、どうも魔力がない者は人間扱いされてなかったみたいで怒りが酷くてドン引き」

 あっ、ダメだ。
 話し合ってどうにかする前に国がショタ守護神の怒りの鉄槌で滅んだかもしれない。
 しかも神薙さんにドン引きされるって、どんな怒りの振りまき方したんだろうか。

「えっと名前も知らない神様、貴方を信仰する国はまだありそうですか?」
「!!」

 ハッと顔を上げたと思ったら、顔から色が抜けて白く……うわぁ透明になってきた。
 同時に邪神一家がキャッキャと嬉しそうに神様の周囲の空気をパクパクしているのですが。

「王様不在の間に国が滅びた場合、どうしたらいいのかなアー君」
「出家する」

 女神のとこでいいかなと投げやり気味なアー君、スイーツおかわり三杯目の女神様が嫌そうに眉間に皺を寄せていますよ。

「じゃあこの神いらない?」
「信仰する民が消えたし、消える前にどーぞ」
「「ひゃっはぁぁああ!!」」
「おじひをっ」

 アー君が許可を出すと同時に神様に邪神一家が群がったと思ったら、モザイクが飛び出す前に全員闇に吸い込まれていきました。
 ありがとうえっちゃん、君の優しさが嬉しい。
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