356 / 844
第二章 聖杯にまつわるお話
第349話
しおりを挟む
セティにの宮殿にお泊りしたら、お客様が次から次へと訪れて大変なことになっております。
アー君には冒険者ギルド砂漠支店からギルマスと福ギルマスが、貢物と見せかけた書類の山を持って乗り込んで来た時はアー君が一瞬逃げ腰になったのを僕は見た。
セティの街を拠点にしている冒険者の人達は現在、お祭りの準備の手伝いに駆り出されているらしい、もちろん報酬付きで。
他にも商業ギルドや海神ギルド、街の有力者などがぞろぞろと。
僕は巻き込まれたら疲れそうなので騎士様を盾にしてそっと離脱、ありがとう騎士様のキラキラは良い囮です。
「うーん、セティの神殿目指したはずなんだけどなぁ」
人込みを避けてちょろちょろしてたら街に出ました。
おかしい、目指した場所と真逆なんだけど。
でもまぁ僕にはえっちゃんがいるからね、街で迷子になったら神殿に転移すればいいか。
「ん、フードかぶった方がいいの? 分かった」
えっちゃんが影絵でフードをかぶれと指示して来たので素直に従います、本日のポンチョは白兎、違和感のなさにたまに不満が浮かぶけど誰も相手にしてくれません。
ふわふわ兎耳を風に揺らしながら適当に歩くと、レンガ造りの区画に到着。
どうやらここは観光客向けの食事スポットみたいです。
お店で食べてよし、外で食べてよし、食事しているのは冒険者が八割、残り二割が地元の人って感じだろうか、外食するほどの余裕はまだないのか、まだまだ働く時間だからなのかは不明です。
一番人気はホットドッグのお店、魔法のような速度で次々と作るターバンをしたおじさんの屋台に人がずらり、僕も食べたいなぁと思ったけどお金持ってないですね。
冒険者の数が多いのは刀国から一日一便船が往復していて、それに乗って気軽にこの都市に来れるからだそうです。
おじさんのホットドッグ作りが面白くて見ていたらお客さんが教えてくれました。
「刀国からここまで船でどれくらいですか?」
「海神様のご機嫌次第かな、やる気がない時は一週間かかる日もあれば、やる気満々な日は一時間とかもある」
「うぅヨムちゃんが気紛れ」
「神殿作って美味いもの奉納してるが、やっぱり刀国の屋台には負ける」
「ダンジョンから珍しい物が出るからもっと気軽に来たい俺らみたいなのが無い知恵出し合って出した答えが、飯がダメなら技術でなんとかこう……」
「ふわっとしてますね!」
さすが刀国民。
「大会もどき開いて優勝したのがこのおやっさん」
「ホットドッグ作る速度が速すぎるのがツボに入ったらしくって、神子様みたいにずっと見てたぜ」
ホットドッグ作りをずっと見ているだけの不審者にやけに親切に解説してくれると思ったら、なんか正体ばれておりました。
ヨムちゃんと僕、やっぱり親子だなぁ。
「このホットドッグ、チーズとかのせないの?」
「チーズ?」
「あれ高級品っすよ、一般流通はしてるけど国内だけだし、輸出検討してくれるかどうか」
「牛乳から作ればいいと思う」
確かに刀国で流通しているチーズは、シヴァさんがアー君に捧げるために作ったチーズの実から採れるものなので値が張る。
神に奉納するために作った高級品だからね、高いのは仕方がない。
でもチーズってそれ以前からこの世界にあるよね?
「それかセティにお願いして、チーズの実を手に入れてもらったらどう? もうじき盆踊りあるし、涼玉がノリノリだから増やせるよ」
「え、神様の踊りってそんな利用していいの?」
「いいと思うよ、セティも自分が欲しいものリストにしてアー君に渡してたよ」
主にアー君の領地で採れるものだったから、仕入れ先はそっちになるかもしれない。
「一般家庭に届けるのは難しいかもしれないけど、おじさんみたいに何かの大会に優勝した褒美としてなら手に入れられるんじゃないかな?」
「だってよおやっさん」
「俺チーズドック食いたいし、セティ様に嘆願書出しとこ」
「おっちゃんのメニューが増えるなら俺は辛いやつ食いたい」
夢を膨らませる冒険者を前に店主のおじさんがあわあわしている。
「あー、マスタードかけたくなってきた」
「そういやケチャップとか自分の使ってるもんな」
「おっちゃん利益それなりだろー、セティ様にお願いして輸入してもらおうぜ」
「それより商業ギルド通した方が金で解決出来るだろ」
「わたし、店一人、無理無理ヨ」
「ギルドに登録してる子供を雇えばいい、任せろ、美味いもののためなら俺らいくらでも協力するから」
「ピクルスも入れてほしいよな」
「とりあえず今日の分売り切ったら商業ギルド行こうぜ! 俺らの美味い飯のためだ!」
「うおおお!!」
「ひぃぃ」
軽い一言からとんでもないことになりました。
でもまぁ結果的にヨムちゃんが喜びそうだし、いっかー。
アー君には冒険者ギルド砂漠支店からギルマスと福ギルマスが、貢物と見せかけた書類の山を持って乗り込んで来た時はアー君が一瞬逃げ腰になったのを僕は見た。
セティの街を拠点にしている冒険者の人達は現在、お祭りの準備の手伝いに駆り出されているらしい、もちろん報酬付きで。
他にも商業ギルドや海神ギルド、街の有力者などがぞろぞろと。
僕は巻き込まれたら疲れそうなので騎士様を盾にしてそっと離脱、ありがとう騎士様のキラキラは良い囮です。
「うーん、セティの神殿目指したはずなんだけどなぁ」
人込みを避けてちょろちょろしてたら街に出ました。
おかしい、目指した場所と真逆なんだけど。
でもまぁ僕にはえっちゃんがいるからね、街で迷子になったら神殿に転移すればいいか。
「ん、フードかぶった方がいいの? 分かった」
えっちゃんが影絵でフードをかぶれと指示して来たので素直に従います、本日のポンチョは白兎、違和感のなさにたまに不満が浮かぶけど誰も相手にしてくれません。
ふわふわ兎耳を風に揺らしながら適当に歩くと、レンガ造りの区画に到着。
どうやらここは観光客向けの食事スポットみたいです。
お店で食べてよし、外で食べてよし、食事しているのは冒険者が八割、残り二割が地元の人って感じだろうか、外食するほどの余裕はまだないのか、まだまだ働く時間だからなのかは不明です。
一番人気はホットドッグのお店、魔法のような速度で次々と作るターバンをしたおじさんの屋台に人がずらり、僕も食べたいなぁと思ったけどお金持ってないですね。
冒険者の数が多いのは刀国から一日一便船が往復していて、それに乗って気軽にこの都市に来れるからだそうです。
おじさんのホットドッグ作りが面白くて見ていたらお客さんが教えてくれました。
「刀国からここまで船でどれくらいですか?」
「海神様のご機嫌次第かな、やる気がない時は一週間かかる日もあれば、やる気満々な日は一時間とかもある」
「うぅヨムちゃんが気紛れ」
「神殿作って美味いもの奉納してるが、やっぱり刀国の屋台には負ける」
「ダンジョンから珍しい物が出るからもっと気軽に来たい俺らみたいなのが無い知恵出し合って出した答えが、飯がダメなら技術でなんとかこう……」
「ふわっとしてますね!」
さすが刀国民。
「大会もどき開いて優勝したのがこのおやっさん」
「ホットドッグ作る速度が速すぎるのがツボに入ったらしくって、神子様みたいにずっと見てたぜ」
ホットドッグ作りをずっと見ているだけの不審者にやけに親切に解説してくれると思ったら、なんか正体ばれておりました。
ヨムちゃんと僕、やっぱり親子だなぁ。
「このホットドッグ、チーズとかのせないの?」
「チーズ?」
「あれ高級品っすよ、一般流通はしてるけど国内だけだし、輸出検討してくれるかどうか」
「牛乳から作ればいいと思う」
確かに刀国で流通しているチーズは、シヴァさんがアー君に捧げるために作ったチーズの実から採れるものなので値が張る。
神に奉納するために作った高級品だからね、高いのは仕方がない。
でもチーズってそれ以前からこの世界にあるよね?
「それかセティにお願いして、チーズの実を手に入れてもらったらどう? もうじき盆踊りあるし、涼玉がノリノリだから増やせるよ」
「え、神様の踊りってそんな利用していいの?」
「いいと思うよ、セティも自分が欲しいものリストにしてアー君に渡してたよ」
主にアー君の領地で採れるものだったから、仕入れ先はそっちになるかもしれない。
「一般家庭に届けるのは難しいかもしれないけど、おじさんみたいに何かの大会に優勝した褒美としてなら手に入れられるんじゃないかな?」
「だってよおやっさん」
「俺チーズドック食いたいし、セティ様に嘆願書出しとこ」
「おっちゃんのメニューが増えるなら俺は辛いやつ食いたい」
夢を膨らませる冒険者を前に店主のおじさんがあわあわしている。
「あー、マスタードかけたくなってきた」
「そういやケチャップとか自分の使ってるもんな」
「おっちゃん利益それなりだろー、セティ様にお願いして輸入してもらおうぜ」
「それより商業ギルド通した方が金で解決出来るだろ」
「わたし、店一人、無理無理ヨ」
「ギルドに登録してる子供を雇えばいい、任せろ、美味いもののためなら俺らいくらでも協力するから」
「ピクルスも入れてほしいよな」
「とりあえず今日の分売り切ったら商業ギルド行こうぜ! 俺らの美味い飯のためだ!」
「うおおお!!」
「ひぃぃ」
軽い一言からとんでもないことになりました。
でもまぁ結果的にヨムちゃんが喜びそうだし、いっかー。
30
お気に入りに追加
145
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~
クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。
いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。
本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。
誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています
ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた
魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。
そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。
だがその騎士にも秘密があった―――。
その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる