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第二章 聖杯にまつわるお話

第346話

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 植物を召喚出来るおじいちゃんがムキムキになった植物に絡めとられ、危うく遭難する所だったので、慌てて騎士様にお願いしてカイちゃんの所に送り届けてもらった。
 砂漠の緑化、頑張ってね。
 少なくとも最低限の衣食住は保証されるし、ここよりは命の危険ないと思う。

「それにしてもトレントまでムキムキに」
「分厚い辞書も片手で持てるって喜んでた」
『すごいぞぉ~』
「凄いです、ネヴォラが野生に帰っちゃいました」

 涼玉が「おにのパンツ」を歌ったあの日から数日、オアシスを取り巻く小さな緑の楽園がターザンが喜びそうなジャングルに変貌しました。
 一番喜んだのは自然界大好きエルフの血を引くネヴォラ、ターザンのようにツタからツタへと飛び移ってジャングルの上の方を移動しているらしい、もう僕じゃ目視出来ないです。

 あと……涼玉が歌っている歌詞が一部間違っているけど、そっちを気に入っているから今更言いにくい。
 うん。黙っていよう、可愛いし、ここ異世界だし。

「ここ砂漠、王様のおかげで草一本生えない不毛の地、ぐふふ、俺何でもし放題」
「涼、ほどほどに……しなくていいか」

 幻獣になってしまった砂漠の生き物たち、実は彼らは騎士様が地球から連れてきた生き物だったそうです。
 こちらの砂漠に適応できるか不安だったけれど、杞憂を笑い飛ばすかのような展開になり、今は広がり続けるジャングルに巻き込まれないよう豪邸の庭に避難しています。

 読書するトレントと、刀雲の横で釣りをしていたトレントの二体は今も同じ場所にいて、オアシスの守人のような存在になっているらしい。
 ただ動くのが面倒だっただけなんじゃないかと僕は疑っています。

 もはや僕ではオアシスがどこにあるかも不明。
 場所は変わってないので歩いて行ける距離にあるはずだけど、このジャングルに一人で踏み入る勇気はない。
 芝生がふわっとあった道も今はふわふわの苔が生えていて逆に歩きにくい、蔦やら落ち葉やら足元も滑るし、一人で入ったらきっと遭難する。

 王様はたまにふらりと消えて呪いを振りまいてはここに帰ってくるパターン、実家扱い?
 自棄になったアー君は王様の生態をレポートして、課題として提出するって言っていました。
 古代砂漠の王様だし、歴史研究の扱いにはなる、のかなぁ?

「かあちゃ、ちょっと俺らとお散歩行こう」
「うん、絶対僕を一人にしないでね!!」
「イツキ、俺らも一緒に行くから大丈夫だ」
「離れないように全員まとめてえっちゃんに面倒見てもらおうね」
「キキ!」

 遭難はしたくない思いが伝わったのだろう、刀雲と騎士様が力強く頷いてくれた。
 本当にお願いします、例ええっちゃんがいて安全が約束されるとしても、未開の地で一人になりたくない!

 そう言って皆で出発した瞬間、苔に足を取られてつるっと転倒しかけたので刀雲に抱っこしてもらっています。
 お姫様抱っこでも肩車でもおんぶでもなく、縦抱きです。
 大人と子供かな、地球年齢で言えば間違ってないけど……まぁ、えっちゃんサポートもあるから安心ということで割り切りました。

 騎士様も僕を抱っこしたいな~という空気を出しているけど、植物が懐いてきて前に進めなくなるのでお断りしました。
 植物にまで好かれるカリスマ性に驚けばいいのか、同情すればいいのか悩みますね。

「うぅ涼玉と謎能力の連携で現在進行形でジャングルが成長してる」
「俺のカリスマ性が爆発しているぜ!!」
『謎能力も張り切ってるの』
「今近くをネヴォラが通った気がします、自然界に溶け込みすぎてちょっと分からないです」
「川とワニがいるんだが」

 刀雲の視線の先にはアマゾンの密林に流れてそうな広大な川。
 えっ、地形変動までしたの!?
 ワニはどこから!?

 全員の視線が騎士様に集中した。

「イネスにおねだりされました」
「みゃぅん」

 イネスのおねだりに弱すぎる。
 そのうち恐竜すらも調達してきそうな勢い……あっ、前に双子にお願いされて生きた化石って呼ばれているコモドドラゴンを調達してた!

 なお、遺跡への入口がある崖周辺も当然のようにジャングル化、木々の根っこが崖を覆って前以上に入口が分かりにくくなり、もう空でも飛べない限り入口を見つけるのは無理っぽいらしい。
 僕は見てないけどね、確認したのはえっちゃんです。
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