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第二章 聖杯にまつわるお話

第345話

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 砂漠の豪邸に残ることになった吸血鬼一族。
 彼らのためにアー君が住居を作ろうとしたのだけど、それを止めたのは頬を赤く染めた巫女さん。
 どうやら僕らがいない間にマンドラゴラがサボテンの休憩所としてテントを設置、好奇心で使ってみたら思いのほか快適で、自分たちもあれで暮らしてみたいと言い出した。

「豪邸にある使用人部屋とテント組、まぁ足りるだろ」

 その後、オアシス付近が涼しいかと思い、そちらにテントを設置したら吸血鬼が使う前にトレントや砂漠の動物に占領され、吸血鬼は締め出される事件が発生。
 意外とあの人たち立場が弱いですね。

 そんな経緯があり、吸血鬼のためのテントは豪邸の裏に設置しました。
 砂嵐対策のために高い壁があって薄暗いけど、かえってそれが吸血鬼にとってはありがたかったようで、マンドラゴラと一緒になってテントを設営していた。

「家具はどうするかなぁ」

 なにせ吸血鬼の皆さんは人間が廃棄した建物と家具をそのまま利用していたため、文明的な生活とは数百年単位で無縁だったらしい。
 なので何が欲しいとか要望を出す以前に、どんなものが存在しているかすら記憶が怪しい感じだった。
 
 結果。

「とうちゃ秘蔵のテントカタログがマンドラゴラに奪われた」
「注文をするためにママが拉致られた」
『マンドラゴラの独壇場なのよ』

 吸血鬼用のテントは全部で5つ。
 その全てのインテリア選びをマンドラゴラが請け負うことになり、家具を出すためにメニュー画面が大活躍。
 ただしポイントが圧倒的に足りないので、スポンサーでとして騎士様が強引に巻き込まれました。

 騎士様が近くにいるせいかメニュー画面が忖度して、テントの内装お勧めを一覧として表示しているのでマンドラゴラもサクサク選んでいる。
 セットを選んだら設置するのはサボテンの仕事らしい、空間から現れた箱をテントの近くに運んで梱包を解き、せっせとテントの中に運びこんでいます。

「おう、もういいのか」
「!」

 セットを選び終わったのか、マンドラゴラが刀雲にカタログを返していました。
 選ぶの早いねぇ。

「アー君、そう言えばカイが避暑地を欲しがっていたよ」
「うぅ」
「宮殿からちょっと離れた所に離宮作ってそれを課題にしよう」
「俺の計画がぁ」

 僕が強制召喚されたばかりになんかごめんよ。
 一から新しく作る時間はまだあるはず……あれ、でもアー君が頑張って作ってもまた魔物に占領されるイメージしかわかない。
 なんでだろう?

 吸血鬼の皆さんの部屋作りはマンドラゴラとサボテンに任せ、僕らは豪邸の中に移動。
 でもまだまだ家具がないんだよね、ドリアードがせっせと作ってはいるみたいだけど、我が家のドリアン達とは当然だけど能力に差がある。
 コツコツ頑張ってください、ここそんなに利用頻度ないと思うしね。

「待って、なんでダンスホールなんてあるの? パーティー予定ないよね!?」
「涼玉が全力で踊れるようにマンドラゴラが忖度したみたい」
「マンドラゴラの忖度が止まらないねぇ」
「働いているのはサボテンみたいだけどな」
『涼ちゃん一曲踊ってー』
「踊る!!」

 まだ何の家具も運びこまれていない、ただ広いだけの部屋、その中心に涼玉が飛び出した。
 マールスがすっごい笑顔です。
 涼玉のダンスを見るのが生きがいの一つなんだろうなぁ。

「おに~のパンツはいい~パンツ~」

 ノリノリダンスを踊るかと思いきや、スローテンポなダンス、しかも歌付き。

「すごいぞ~」
『すごいぞぉ~』

 しかもシャムスまで霧ちゃんの腕の中でちょっと踊っている。
 悶えそうになった所でふと窓の外に目が行った。

「オアシスがジャングルになってる」

 植物が全体的に筋肉質になっているのはきっと気のせいじゃないよね、あれ。
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