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第二章 聖杯にまつわるお話

第334話

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 僕はこう見えて数多くの神様から加護やら寵愛やらをこれでもかと受けている。
 普通なら生じてしまうだろう歪みもなんのその、転生した世界のご都合主義といい感じに調和してふんわりした感じになっているんだよね。
 法則不明、発動範囲不明、特定の効果があるかも不明。
 謎だらけのこの力はいつからか「謎能力」と呼ばれ、僕より周囲がいい感じに利用している。

 謎能力がご都合主義の権現と呼ばれるのに反し、もう一つ僕には通称『過保護スキル』と呼ばれている不思議な力が働いている。
 過保護スキルの効果は今のところ二つ。
 一つ、残酷な描写、例えば傷口や流れる血がモザイクになる。
 一つ、乱暴だったり下品が過ぎる言葉が聞き取れなくなる。

 でも少し前に帝国に遊びに行った時、返り血一つ浴びてない将軍さんの上半身もモザイクがかかっていた。
 あの時の将軍さん上半身裸だったので、それが教育に悪いとモザイクが発動したらしい。

 スキルなのか加護なのか良く分からないのは、僕にこれを与えたのが騎士様だから。
 僕が残酷なシーンに涙目になった時に、僕の精神を守るために記憶にモザイクがかかるようにしてくれたんだよね、それがいつの間に教育に悪いことも削除する方向で発動するようになったのだろうか。
 ある意味これも謎能力の一部な気がしないでもない。

 ただ僕が気付いていないだけで例外もあったようです。
 目の前でトロピカルジュースを飲みながら、太陽を浴びている悪霊がその一つ。

 残酷な描写の塊なんだよあの人、亡くなった過程が残酷だから、斬られた傷からいまだ血が流れ続けているし、目は空洞、お腹もよく見たら穴が開いている。
 惨い殺され方をして、全てを恨んで呪って、砂漠の半分以上を人の住めぬ地にした大昔の王様。

 グロなのに認識できている謎。

「そう言えば秋の味覚ダンジョンのボスをやっている熊さん、最初はグロい外見してたってママが言ってました」
「つまり認識出来ていた?」
「わたし知ってる。イツキ、敵として呼び出されたはずの熊の上で居眠りしてたって、レイア様ぷりぷり怒ってたんよ!」

 ネヴォラが過去を暴露しているのですが。
 すみません、だって熊が目の前でへそ天しているのを見たら、本能に逆らえなかったというか何というか。

 ただいまプールの中に設置されたプールバーで、僕が悪霊の全体像を見えることに関して会議中。
 おやつがてら子供達を休憩させているともいう。

「クトゥルフ系はゲームとかで見たことがあるから」
「ホラーは騎士様の想定外なんですね」
「確かに、そう言えばイツキ、ゾンビは平気ね」

 言われてみれば確かに、全身ドロドロで目玉とか目から出てるような個体がいても、モザイクになっていなかったような気がする。
 ゾンビダンスが楽しかったのでモザイクあったかどうか覚えてないだけかもしれないけど。

「あっ、でも内臓が飛び出ているゾンビにはモザイクかかってたよ」

 目玉はよくて内臓はダメな理由……なんだろう、僕の精神的ダメージの有無だろうか?
 ありえる。

「恐らくだが、この問題は考えても無駄な気がする」

 セティが諦めた!

「謎能力で変動する力なら、考えるだけ無駄ですね」
「ゲームの続きすんの。王様誘うか?」
『くぁぁぁ』
「イネスもネヴォラも元気だなー、俺眠いぃ」

 シャムスは大きく欠伸をし、涼玉はダルダルしながらボートの形をしたスライム浮き輪の上。
 力の限り遊び、おやつを食べていい感じに眠くなったんだろうなぁ。

「あれ、ヨムちゃんは?」
「王様とビーチバレーしてます」
「王様軍人かな、怨霊にしては動きいいんよ」

 子供たちの声にそちらを見れば王様&邪神兄弟vs悪魔&帝国兄弟でガチの勝負をしていました。
 悪霊なのに動きいいなー。
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