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第二章 聖杯にまつわるお話

第328話

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 ところで。
 ゴーレム君の正体が判明しました。

 イネスが明かりを付けてくれたので部屋の全体が見えるようになり、奥へと続く階段を発見。
 崖から侵入した僕らが入った部屋はどうやら祈りの間、みたいな用途?
 よく分からないけど。

 螺旋階段を降りた先の行き止まりが部屋の入り口になっていて、そこが僕とシャムスが呼び出された部屋があったのだけど、入り口の真横の壁がごっそりなくなっていた。
 どうやらゴーレム君、元々は遺跡の壁の一部だった模様。
 周辺に魔物がいないので遺跡自体が救出する役割に回ったっぽいです、謎能力凄いね、ただの壁にも命吹き込んじゃうんだ。

「大分下に降りたから、横に川流れてる」

 見てーとヨムちゃんが示した先はゴーレム君が元居た壁、皆で覗いてみたら壁に水が滲んでいた。
 なるほど、危険だね、水没の可能性が発生してるね!

「かあちゃんが召喚されたのこの部屋か、特にもうなんもないし、沈んでも大丈夫だろ」
「俺泳ぐの苦手、先に上に行ってる!」
「むしろヨムちゃん以外全員溺れる気がするから、一度退避しようか」

 ゴーレム君に乗れる人は乗って急ぎ上の部屋に退避。
 もちろん涼玉はマールスが、シャムスは霧ちゃんが抱っこしてましたとも。

「皆逃げたー? じゃあいっくぞー!」

 ヨムちゃんの明るい声と同時に轟音と楽しそうな笑い声が響いてくる。
 見る見るうちに水が溢れて階段もすぐに水に沈んでしまった。

「ヨムちゃん無事!?」
「あったりまえぇ!」

 下に向かって思わず叫んだらヨムちゃんが水からばしゃーっと現れた。
 普通に元気ですね、邪神の頑丈さは知っててもさすがに心配だったから元気な姿を見てやっと安心できた。

「この水、山の上から流れてきた雪解け水っぽい、すんげぇ冷たいぜ」
『ぴゃぁ!』
「冷たいです! 足凍っちゃいますね!」
「俺の尻尾が痺れている!!」
「わたしは近寄らないの、冷たいの嫌い」

 魔法陣があった部屋は水没したので、祈りの間を皆で見学。
 下の部屋は狭かったので、ここで祈りを捧げて下に魔力を流していたらしいけれど、じゃあここで召喚の儀式すればよかったんじゃ……というのは野暮なのだろうか。
 きっと狭くて暗い部屋で行うことで不安感を煽るとか、何かそういう系の事情があるのだろう。

「遺跡自体に魔力を巡らせる回路があるけど、どうやってもゴーレムが抜けた部分で回路ブチ切れてるんだよな、もう二度と使用できないんだろうなぁ」
「……ごご」
「いやぁ、お前が戻っても無理だと思うぞ、だって俺が壁を修復不可能なぐらい壊しちゃったし、何より水没したからあの部屋もう使えないしな!」

 しょんぼりするゴーレム君を励ますヨムちゃん、何となく意思疎通が出来ている感じです。

「隠れ家にするにしても広すぎてイメージ湧かないぞ」
「うーん植物の根っこが壁にあったりしたら雰囲気でるんだろうけど、あいつら我儘だから」
「思いつきました!」

 自己主張するためにネヴォラの頭の上に立ち、ひと際強く発光するイネス。
 眩しい、眩しいよイネスちゃん。
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