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第二章 聖杯にまつわるお話

第326話

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 おやつを食べている間に砂嵐は去り、じゃあオアシス作り再開しようとしたら、植物を操り、管理するトレントとドリアードがお昼寝中でした。
 仕方がないので増やすだけ増やして後で手入れをしてもら……。

「待って、おじいちゃんはどこ」

 家の中に入れた覚えがない。

『……』
「貴重な人材を亡くしたぜぃ」

 涼玉、諦めるの早すぎ!

「ゴーレム、焼き芋食うかな」
「おなかいっぱい、食後の運動しましょう」
「泳げるかな」

 賑やかに建物の外へと出ていくヨムちゃん、イネス、ネヴォラの三人。
 イネス、そこの可愛いイネスちゃん、君の新しい信者の生死のお話ですよ!

「かあちゃん、いたいた、植物じいちゃんいた!」

 出て行ってすぐ、ヨムちゃんがダッシュで戻ってきました。

『九死に一生を得る。ですねー』
「得ちゃったかー」

 皆で外に出てみたら、ゴーレムの足の下から人間がはい出てきた。

 えーなになに、我らがえっちゃんの解説によると、一応おじいちゃんも家に入ろうとしたのだけど、貴様は下っ端だから一番最後だと言わんばかりにトレントとドリアードが先に入り、そのまま戸を閉めてしまったようです。
 それを見ていたゴーレム君が地面に穴を掘っておじいちゃんを避難させ、自分が上に座ることで守ってくれたみたい。以上、えっちゃんの通訳によるゴーレム君情報でした。

 ……その元凶、奥にある部屋でぐーすか寝てるんですけど。

「えっと、このお家あげるから、緑いっぱい増やしてくださいね」
「っは! イネス様の命とあれば!!」

 魅了怖い。
 こんな理不尽で死にそうな目にあっても、イネスのお願いが最優先になるの!?

『ママを召喚した理由聞いて』
「は、そうでした! 僕らのママを召喚した理由はなんですか?」
「我が一族は砂漠の民の中でも最も古い血を持つもの、遥か昔より王座をこの手に取り戻すのが一族の悲願、それなのに、あの若き王が他国から嫁を娶り、地位を盤石なものにしてしまったのです。揺るがぬ力と権威、それを崩すために倒せる者を召喚いたしました」

 若き王はハイダル君、嫁はカイちゃんの事だろうか。
 実際はハイダル君が生んでいるから立場逆な気がする。

「まぁうん、かあちゃなら倒せるか」
『おねだりすればくれると思う』
「不戦勝確定」
「ママ最強です」
「間違ってないんよ」

 マールスと霧ちゃんもうんうんと頷いています。
 その経緯で召喚されたのか、僕。
 そして誰も否定しないんですね。

「諸刃の剣というか自爆装置というか」
『味方全滅してるのよ』
「カイにバレたら魂砕かれる事案だけどな、ママに対する過保護さは家族の中でも随一だぞ」
「……記憶ばーんします?」
「能力さえ使えればいいし、余計な記憶は危険なんよ」

 イネスとネヴォラの意見が過激。
 でも確かに、カイちゃんの命を狙った挙句、僕を召喚して巻き込んだと知れたら、どんなに有用な力だろうと楽に死ねないことは確定するね。

 これはどうしたものか。と悩んでいたらおじいちゃんの体を霧が包んでいた。
 ふわっと光って体から何か抜けたなーと思ったら倒れてしまったので、トレントをたたき起こして家の中に運んでもらいました。

「人格と記憶を破壊した。次に起きた時はただのイネスの敬虔な信者だ」
「これで安心してこき使えますね!!」
『あい!』

 人権を無視した非道な行いですね、でも霧ちゃん人間じゃないしなぁ。
 まぁ、いいか。
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