上 下
322 / 844
第二章 聖杯にまつわるお話

第315話

しおりを挟む
 海のダンジョン創設者、アー君にダンジョンの構造についてお聞きしました。

「最初は何層かに分かれていたはずなのに、いつの間にか統合されて巨大な一つの海になってた。ダンジョンコアは海底かな」

 どうやら魔力を与えたら勝手に自己改造して、今の形になったそうです。

「ダンジョンを解析したら全体の8割は海だった」
「でっかいね」
『下層がない代わりにとっても深いの』
「ヨムが深さ調べてるけど、浜から離れるほど深くなってるみたいだな」

 海以外の残りの2割は砂浜、木陰を作るための木、堤防や崖など、最初にアー君たちが設定した部分。

「そう言えば前回見学に来た時、神薙さんが鯨っぽいものを食べてたような」
「大味だけど食べ応えはあったみたい」
『お肉はさっぱり味』
「次は焼いて食べてみたいって言ってたあれか、出てくるのを海面で待ってるせいか今日は魔物出ないんだ」

 最強の邪神が涎垂らして待ち構えているのに顔を出したらただの無謀だと思う、何せかつて秋の味覚ダンジョンの上空に異界に通じる穴が開いた時も、神薙さんがいるからと誰も出てこなかったぐらいだし。
 神薙さんは海面じゃなく、少し離れた崖とかで待っている方がいいと思います。

「食べ放題出来なかった」

 当の本人はお昼なので浜に戻ってきています。
 今日は海の幸でバーベキューだからね、こんな機会を逃すわけがない。

「神薙さん、気配消すとかは出来ないんですか?」
「一応出来るけどあまりやらない、怯えた獲物食べた方が楽しいから」

 さすが邪神、言うことが邪悪。

「魔物は神薙さんの気配に怯えて出てこないので、気配を消して隠れているか、ヨムちゃんに追い立ててもらった方が早いと思います」
「なるほど」
「ママ……神薙様に何恐ろしい入れ知恵してるの!?」
『ヨムちゃんなら喜んでやると思うの』
「ヨムが追い立てた相手がダンジョンコア持ちで、神薙様が食べた場合はどうなるんだ?」
「吐き出すからへーき」

 そんな会話をしたのがお昼、海の幸を美味しく食べて満足した神薙さんは、ちょっとだけお昼寝した後また海に向かいました。
 ヨムちゃんを連れて。

「あー……参加者に告げる。邪神一家が大暴れするので海の近くから離れてください、安全域は海から5m以上離れた場所になります」

 アー君が若干死んだ目をしながら魔法を使って声を拡散、お知らせをしている。
 なんかごめんね?
 でもほら神薙さん食べ放題楽しみにしてたから、つい。

 アー君のお知らせを聞いて必死に避難する大臣ともふもふズ。
 子供達はお腹いっぱい食べたので邪神兄弟以外はお昼寝中、邪神兄弟は神薙さんと一緒に食べ放題をしようと僕の隣でスタンバイ中です。
 バトルが始まったらえっちゃん経由で飛び込み参加するんだって。

『アー君、出たよ』
「かあちゃ、あれ食えると思う?」
「まずそうだと思う」

 海面が盛り上がって姿を現したのは巨大な異形。
 海に出る黒い坊主頭……あぁ、海坊主!!

 咆哮を上げ、巨大な手を振るおうとして、その手が――消えた!

「うーん遠いから神薙さんが見えない」
『波が激しいから見えないのよ』
「あれ、にいちゃは?」
「アー君はダンジョンコア回収のためにぴゅーんってお空飛んで行きました」

 海坊主がその巨体を揺らすたび、体の一部が消えている。多分あの辺にいるんだろうなぁ。
 おや、気のせいかこちらに近付いているような……?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。 ▼毎日18時投稿予定

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

【完結】別れ……ますよね?

325号室の住人
BL
☆全3話、完結済 僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。 ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

兄たちが弟を可愛がりすぎです~こんなに大きくなりました~

クロユキ
BL
ベルスタ王国に第五王子として転生した坂田春人は第五ウィル王子として城での生活をしていた。 いつものようにメイドのマリアに足のマッサージをして貰い、いつものように寝たはずなのに……目が覚めたら大きく成っていた。 本編の兄たちのお話しが違いますが、短編集として読んで下さい。 誤字に脱字が多い作品ですが、読んで貰えたら嬉しいです。

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

突然異世界転移させられたと思ったら騎士に拾われて執事にされて愛されています

ブラフ
BL
学校からの帰宅中、突然マンホールが光って知らない場所にいた神田伊織は森の中を彷徨っていた 魔獣に襲われ通りかかった騎士に助けてもらったところ、なぜだか騎士にいたく気に入られて屋敷に連れて帰られて執事となった。 そこまではよかったがなぜだか騎士に別の意味で気に入られていたのだった。 だがその騎士にも秘密があった―――。 その秘密を知り、伊織はどう決断していくのか。

処理中です...