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第二章 聖杯にまつわるお話

第307話

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 うちの子が人が入らないことを良いことに、コソコソと果樹園の中心で作っていた奇跡の果実。
 聖なるクリスタル林檎。
 なお、今現在食べれそうなのは邪神の中の邪神、神薙さんぐらいですって。うちの邪神様強すぎ。

 なんか、聖属性を限界まで込めたらどうなるのかなーってノリで作ったそうです。
 結果は邪神兄弟も逃げ出す高密度の聖属性が込められた林檎が爆誕、ギルドで販売している魔除けよりも強力な感じです。

 しかもこちらの林檎、一定範囲に強力な結界を張るみたいで、刀雲が譲ってくれないかと願ったらシャムスが簡単に許可を出して大量に譲渡された。
 涼玉がいる限り後から後から実るからね、林檎だから食べれないと意味がないようで、まだまだ改良中なのだと霧ちゃんが解説してくれました。
 食べられるようになったら、食べた人が内から発光するのが確定していそうな林檎ですな。

「この林檎って腐るのかな?」
『わかんない』

 シャムスが小さく首を振っている。
 そりゃそうか、うちは涼玉が毎日ご飯食べに来るし、遊びに行かない時は一日家にいるからね、腐ったり枯れたりする暇がないか。

 試しに第二の奥さんであるドリアードに与えてみたら進化しました。
 肌が緑だったり腕が植物だったりしたのが、宝石のように輝く素肌になり、植物部分が減って人間に近い部分が増えたけど、普通の人間の素肌は光らない。
 あれは光合成でもしているのだろうか……、第二の隊長さんごめんなさい、貴方の奥さんが進化して人間を通り越して神々しくなってしまいました。

 これ、トレントには絶対に配らないよう言い聞かせないとダメなやつだ!!

 とりあえずその後、お昼に刀雲と参加者に食事を振る舞ったり、ぐったりしたイグちゃんに回復効果たっぷりの炒り豆を与えたりと忙しく動き回ってその日は終了。
 今日一日で山のような果実が手に入って僕は満足です、とても助かりました。またよろしくお願いします。
 支払いはお城がしてくれるとか神様が家族で良かったぁ。

「あの林檎はヤバい、黄金シリーズ食べた直後のイネスぐらい危険」
「ぴぃ」

 ガクブルしながらイグちゃんが訴えています、改良するのちょっと危険な感じ?

「夕食のデザートに神薙さんに出そうと思ったけど、ダメかな」
「ちょっと分からない」

 僕に力があれば切り分けてお試しで出すことも出来たのだけど、皮にナイフを入れることすら叶わず。
 ドリちゃんは魔力で刃を作って皮むきしようとして、林檎がその魔力を吸収しておりました。なんで?

「もとはただの林檎なんだけどな?」
『初代林檎ちゃんよ』

 ただほんのちょっと他の林檎より艶々が綺麗だっただけの赤い林檎、涼玉の背中に投げたら高級林檎に格が上がり、イネスの神気を受けて黄金の林檎を実らせちゃっただけのただの林檎……涼玉の背中で改良した時点でただの林檎から逸脱してるよ。

 その後、クリスタル林檎は刀雲から教会に寄付され、教会を通して交流がある国の教会へと送られた。
 送られた先は魔物に襲われたらひとたまりもないような小さな村にある教会、今までは派遣された司祭が物理で守っていたけれど、今度からはそんな無茶をせずとも林檎が守ってくれるでしょう。

 ちなみに盗まれたり、悪用を防止するためにスライム付きです。
 シャムスのスライムなので防犯機能はマックス、あまり無茶をせず早めに諦めて撤退してください、俺なら大丈夫だと思ったそこの貴方、存在を消されますよ。

「最強の避難場所が出来たな」
「けっかおーらい」

 涼玉とシャムスがドヤ顔です。
 ただの悪ノリも、神様がやると人間を救うことがあるみたいですねー。
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