上 下
314 / 809
第二章 聖杯にまつわるお話

第307話

しおりを挟む
 うちの子が人が入らないことを良いことに、コソコソと果樹園の中心で作っていた奇跡の果実。
 聖なるクリスタル林檎。
 なお、今現在食べれそうなのは邪神の中の邪神、神薙さんぐらいですって。うちの邪神様強すぎ。

 なんか、聖属性を限界まで込めたらどうなるのかなーってノリで作ったそうです。
 結果は邪神兄弟も逃げ出す高密度の聖属性が込められた林檎が爆誕、ギルドで販売している魔除けよりも強力な感じです。

 しかもこちらの林檎、一定範囲に強力な結界を張るみたいで、刀雲が譲ってくれないかと願ったらシャムスが簡単に許可を出して大量に譲渡された。
 涼玉がいる限り後から後から実るからね、林檎だから食べれないと意味がないようで、まだまだ改良中なのだと霧ちゃんが解説してくれました。
 食べられるようになったら、食べた人が内から発光するのが確定していそうな林檎ですな。

「この林檎って腐るのかな?」
『わかんない』

 シャムスが小さく首を振っている。
 そりゃそうか、うちは涼玉が毎日ご飯食べに来るし、遊びに行かない時は一日家にいるからね、腐ったり枯れたりする暇がないか。

 試しに第二の奥さんであるドリアードに与えてみたら進化しました。
 肌が緑だったり腕が植物だったりしたのが、宝石のように輝く素肌になり、植物部分が減って人間に近い部分が増えたけど、普通の人間の素肌は光らない。
 あれは光合成でもしているのだろうか……、第二の隊長さんごめんなさい、貴方の奥さんが進化して人間を通り越して神々しくなってしまいました。

 これ、トレントには絶対に配らないよう言い聞かせないとダメなやつだ!!

 とりあえずその後、お昼に刀雲と参加者に食事を振る舞ったり、ぐったりしたイグちゃんに回復効果たっぷりの炒り豆を与えたりと忙しく動き回ってその日は終了。
 今日一日で山のような果実が手に入って僕は満足です、とても助かりました。またよろしくお願いします。
 支払いはお城がしてくれるとか神様が家族で良かったぁ。

「あの林檎はヤバい、黄金シリーズ食べた直後のイネスぐらい危険」
「ぴぃ」

 ガクブルしながらイグちゃんが訴えています、改良するのちょっと危険な感じ?

「夕食のデザートに神薙さんに出そうと思ったけど、ダメかな」
「ちょっと分からない」

 僕に力があれば切り分けてお試しで出すことも出来たのだけど、皮にナイフを入れることすら叶わず。
 ドリちゃんは魔力で刃を作って皮むきしようとして、林檎がその魔力を吸収しておりました。なんで?

「もとはただの林檎なんだけどな?」
『初代林檎ちゃんよ』

 ただほんのちょっと他の林檎より艶々が綺麗だっただけの赤い林檎、涼玉の背中に投げたら高級林檎に格が上がり、イネスの神気を受けて黄金の林檎を実らせちゃっただけのただの林檎……涼玉の背中で改良した時点でただの林檎から逸脱してるよ。

 その後、クリスタル林檎は刀雲から教会に寄付され、教会を通して交流がある国の教会へと送られた。
 送られた先は魔物に襲われたらひとたまりもないような小さな村にある教会、今までは派遣された司祭が物理で守っていたけれど、今度からはそんな無茶をせずとも林檎が守ってくれるでしょう。

 ちなみに盗まれたり、悪用を防止するためにスライム付きです。
 シャムスのスライムなので防犯機能はマックス、あまり無茶をせず早めに諦めて撤退してください、俺なら大丈夫だと思ったそこの貴方、存在を消されますよ。

「最強の避難場所が出来たな」
「けっかおーらい」

 涼玉とシャムスがドヤ顔です。
 ただの悪ノリも、神様がやると人間を救うことがあるみたいですねー。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

勇者の股間触ったらエライことになった

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。 町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。 オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

神様のポイント稼ぎに利用された2

ゆめ
BL
 女神様から便利なスキルセットを授かり異世界転生した僕。  あれから約一年、気付いたら一妻多夫の子沢山。  今日ものんびりライフを謳歌します。 ※R指定なシーンや残酷な描写が発生しても予告はないです。 ※他シリーズから主人公が出張してます、積極的に物語を引っかき回します。 別サイトにも掲載中

無自覚副会長総受け?呪文ですかそれ?

あぃちゃん!
BL
生徒会副会長の藤崎 望(フジサキ ノゾム)は王道学園で総受けに?! 雪「ンがわいいっっっ!望たんっっ!ぐ腐腐腐腐腐腐腐腐((ペシッ))痛いっっ!何このデジャブ感?!」 生徒会メンバーや保健医・親衛隊・一匹狼・爽やかくん・王道転校生まで?! とにかく総受けです!!!!!!!!!望たん尊い!!!!!!!!!!!!!!!!!! ___________________________________________ 作者うるさいです!すみません! ○| ̄|_=3ズザァァァァァァァァァァ

その男、有能につき……

大和撫子
BL
 俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか? 「君、どうかしたのかい?」  その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。  黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。  彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。  だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。  大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?  更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!

処理中です...