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第二章 聖杯にまつわるお話

第298話

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 見知らぬ街の見知らぬおじさん、僕らに絡んできたばかりに綺麗なお兄さんになりました。
 イネスが至近距離でぺかぁってやったから心根の綺麗な人になったまではいい、ただ街の雰囲気同様、全身が薄汚れていたんだよね、そんな人間がシャムスの近くにいるのが許せないと霧ちゃんがクリーンを行使、心身ともに身綺麗なお兄さんに早変わりしました。
 髭もクリーンで消えるんだね、知らなかった。

「とりあえず一番偉い人が住んでいる所に行きましょう!」
「はいイネス様!」

 難点はもれなくイネス信者になっちゃう所だけど、イネスはちやほやされたり崇められるのが好きだから特に問題ないようです。
 イネスを頭に乗せたまま、綺麗になった案内人が真っすぐに街の上の方を目指して歩き出す。

 ネヴォラがぴょんぴょんしながら先頭を進み、たまに現れる暴漢を襲撃して返り討ちにしてはイネスがぺかっとして二人で満足げに戻ってくる。
 どうやら案内人の頭の上に陣取っているのは偵察も兼ねているようで、シャムスがちょっとやりたそうにしていたのを霧ちゃんが気付き、濃い霧を発生させてシャムスを乗せ、ふわふわと浮き上がらせた。
 偵察とぺかぁが二倍になりました。
 とても眩しいです。

 シャムスとイネスのぺかぁは若干効果が違っていたことがある。
 シャムスは魂の浄化、威力が強過ぎると生まれる前ぐらいにまで戻る真っ白さ、イネスは神聖系、心に巣食う闇を祓って蒸発上等、威力によっては魅了効果も追加されます。
 二人してぺかぺかしたのでレベルが上がったのか、最近は効果が混ざっている時がある気がします。

 あと霧ちゃんと謎能力が忖度して範囲調節や効果調整している気配が……。
 まぁ具合が悪そうな人ばかりだし、特に問題ないかな。

 そして辿り着いた坂の上。
 門の向こうには手入れがされてない庭園、そしてその向こうにそびえる大きな洋館。
 おお、権力者の家っぽい。

「どこから入る?」
「わたしが上からぽーんって行って鍵を開けてくっか?」
「私は隙間から行けます」
「マールスならこの程度手で開けられるぞ」

 幼児の提案が強引すぎる。
 ここは一つ穏便に。

「えっちゃんお願い」
「キキ」

 シャッと闇が伸びて門の鍵を弄ればほら簡単、門が開きました。

「よっしゃー豪邸到着! 次はえっと、館の主人探すんか!」
「今こそ使います、朱ちゃん直伝、サーーチ!」

 むん!と可愛らしい声を出しながらイネスが地面に向かって光を解き放った。
 案内人の人はこれについて何もツッコミを入れない、あれか、イネスのすることは全肯定状態ですか?

 ツッコミがいないまま僕らは豪邸に侵入、そのまま偉い人がいる部屋に直行した。
 あちこち歩くにも家が無駄に広くて僕の体力が怪しいからね、すみません本当。

 長い廊下には霧が満ちています。
 誰かと遭遇してシャムスのお楽しみを邪魔されないためにと、霧ちゃんが認識阻害付きの霧を発動中です。

「ママここです」
「しー」
『えっちゃんお願い』

 シャムスがえっちゃんに向かって両手を合わせて小首を傾げると、扉が可視化されて中が見えるようになりました。凄い、さすがえっちゃん、万能!

 どうやらこちら寝室のようです、ベッドの上に一人、ベッドから少し離れた所に二人ほどいます!
 しかも今にも脱ぎだしそうな雰囲気を醸し出しながらイチャイチャしてる!

「これは悪! あの二人は浮気中、そういうテンプレある!」
「ギルティ、つまりベッドの住人は被害者サイド! あれは誰ですか?」
「領主のミケーレ様です、住人を見捨てて逃げたという噂でしたが、ご病気だったのですね」
『犯罪の臭いがするのよ!』
「なるほど、毒か! 助けて恩を押し売りしよう!」

 扉の前で普通に会話しても中には聞こえません、霧には防音機能が当然のようについてるみたいです。

「ママ、あの人もうじき死んじゃいそうです、呼吸がとっても浅いの」
「手前の二人が邪魔だね、霧ちゃん、寝かせることは出来る?」
「ああ」
『永眠はだめよ』

 僕らの周りにあった霧が扉の隙間から室内に入り込んでいく、霧が二人を包んだと思ったら、糸が切れたようにその場に倒れた。
 あの……ノーガードで倒れたんだけど、頭とか打ってない? 大丈夫、あれ。
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