上 下
299 / 809
第二章 聖杯にまつわるお話

第292話

しおりを挟む
 いつも通りの光景にうっかり忘れそうになったけど、ここってダンジョンだった。
 いやでも仕方ないよね、犬が浜辺走ったり、穴を掘る光景が平和すぎるんだと思う。

「ハーピーが現れた」
「涼玉様、口にソースが付いておりますぞ」
「あんがと」

 ジャムパンを頬張る涼玉の言う通り、ハーピーが突然現れました。
 どこから来たとかではなく、本当にふわりとした感じで。

 あれか、邪神一家がはしゃいでいるから、その瘴気で魔物が生まれたとかそういう感じ。
 こっち来るな~と思うより早く白い霧に包まれて海に沈みました。
 霧ちゃんお仕事早いですね。

「ハーピーは鳥? 焼き鳥できるか?」
「焼き鳥は無理かな」

 緑化推進のため、ダンジョンにエネルギーを吸い取られている最中の涼玉、食べれるなら何でもいいようです。
 ただハーピーは人間っぽい部分もあるので実食は邪神にお任せしようね。

『砂浜走るの疲れたの!』
「わふわふ!!」

 砂だらけのシャムスがエムとローと一緒に戻ってきた。
 僕の膝に飛び込む寸前、霧に回収されてふわりと霧ちゃんの腕の中に移動していました。嫉妬深い。

『水分補給!』
「母上、何か飲み物を」
「はいはい」

 子犬シャムスを抱っこしたかったと思いながら、うちの子みんな大好きドリちゃんミルクがたっぷり入ったピッチャーを取り出して霧ちゃんに渡した。
 このピッチャー、透明で一見ガラスのように見えるけど、ドリちゃんの樹脂を薄く伸ばして作られたものです。
 ドリちゃんって錬金術師だったのね。

『ぷっはー』
「「わっふー」」
「かあちゃ俺も」
「はいどうぞ」

 のんびりを続行していたら、濡れ鼠になったアー君が海の幸を片手に戻ってきた。
 顔を腫らしたサハギンを連れて。

「アー君、後ろの方は?」
「半魚人のサハギン、海の中で襲ってきたからボコボコにして上下関係を叩き込んだ!」

 アー君が言っていることがヨムちゃんと同レベル。
 しかしアー君、海の中でも戦えるのね。

「サハりんそこの焚き火で収穫した貝焼いて」
「ギギ」
「アー君も子分できたか!」
「私たちも半魚人!!」

 どうも。と頭を下げたのは下半身がタコのお兄さんでした。
 これは……クラーケンの仲間みたいなものだろう。

「海に捨ててきなさい」

 とりあえず我が家に飼うスペースは作りたくないかな。

「お役に立ちます」
「いらないかな」
「両手だけでなく、下半身の手もこの通り!!」

 うにょうにょと動かしてタコの足で焼いている海の幸を器用にひっくり返すクラーケン、器用だけどうちは別のクラーケンいるんで。

「にいちゃこれ食っていい?」
「いいぞ」
「お役に立ちますからぁぁ!!」
「家長に直談判してください」

 そう言ったのが仇となり、刀雲に直談判したクラーケンのお兄さん。
 見事口説き落として我が家にやってくることになりました。

 オチとして、我が家の庭に住むクラーケンと番になりました。
 知ってた知ってた。だから嫌だったんだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

神獣の僕、ついに人化できることがバレました。

猫いちご
BL
神獣フェンリルのハクです! 片思いの皇子に人化できるとバレました! 突然思いついた作品なので軽い気持ちで読んでくださると幸いです。 好評だった場合、番外編やエロエロを書こうかなと考えています! 本編二話完結。以降番外編。

その男、有能につき……

大和撫子
BL
 俺はその日最高に落ち込んでいた。このまま死んで異世界に転生。チート能力を手に入れて最高にリア充な人生を……なんてことが現実に起こる筈もなく。奇しくもその日は俺の二十歳の誕生日だった。初めて飲む酒はヤケ酒で。簡単に酒に呑まれちまった俺はフラフラと渋谷の繁華街を彷徨い歩いた。ふと気づいたら、全く知らない路地(?)に立っていたんだ。そうだな、辺りの建物や雰囲気でいったら……ビクトリア調時代風? て、まさかなぁ。俺、さっきいつもの道を歩いていた筈だよな? どこだよ、ここ。酔いつぶれて寝ちまったのか? 「君、どうかしたのかい?」  その時、背後にフルートみたいに澄んだ柔らかい声が響いた。突然、そう話しかけてくる声に振り向いた。そこにいたのは……。  黄金の髪、真珠の肌、ピンクサファイアの唇、そして光の加減によって深紅からロイヤルブルーに変化する瞳を持った、まるで全身が宝石で出来ているような超絶美形男子だった。えーと、確か電気の光と太陽光で色が変わって見える宝石、あったような……。後で聞いたら、そんな風に光によって赤から青に変化する宝石は『ベキリーブルーガーネット』と言うらしい。何でも、翠から赤に変化するアレキサンドライトよりも非常に希少な代物だそうだ。  彼は|Radius《ラディウス》~ラテン語で「光源」の意味を持つ、|Eternal《エターナル》王家の次男らしい。何だか分からない内に彼に気に入られた俺は、エターナル王家第二王子の専属侍従として仕える事になっちまったんだ! しかもゆくゆくは執事になって欲しいんだとか。  だけど彼は第二王子。専属についている秘書を始め護衛役や美容師、マッサージ師などなど。数多く王子と密に接する男たちは沢山いる。そんな訳で、まずは見習いから、と彼らの指導のもと、仕事を覚えていく訳だけど……。皆、王子の寵愛を独占しようと日々蹴落としあって熾烈な争いは日常茶飯事だった。そんな中、得体の知れない俺が王子直々で専属侍従にする、なんていうもんだから、そいつらから様々な嫌がらせを受けたりするようになっちまって。それは日増しにエスカレートしていく。  大丈夫か? こんな「ムササビの五能」な俺……果たしてこのまま皇子の寵愛を受け続ける事が出来るんだろうか?  更には、第一王子も登場。まるで第二王子に対抗するかのように俺を引き抜こうとしてみたり、波乱の予感しかしない。どうなる? 俺?!

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

処理中です...