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第二章 聖杯にまつわるお話

第289話

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 ライトノベルでよく見かけるお話。
 農村における跡継ぎである長男以外の子供を口減らしのために家から追い出す、または食べることに困って農村から出てくるとか、刀国では聞かないから現実から遠いお話だったけれど、この世界には溢れているただの事実。
 追い出された彼らは当然無学で、ろくな職業に付けず、冒険者になったり悪事を繰り返して後ろ暗い世界に足を踏み入れる。

 そんな彼らの救世主とも言うべき施設、それがギルド。
 冒険者と商業、海神ギルドの三種類あるけれど、どこに行っても職があります。

 特に農家出身の人はアー君が一人でも多く手に入れようと、各地のギルドで声をかけて探しているらしい。
 農地が広すぎて涼玉が遊んだ後の回収だけでも大変な作業だもんね。

 最近ではレモン国でも農業経験者を募集してる。
 理由は簡単、国民がレモン活用法の研究に傾倒しすぎて収穫する人手が不足気味だから。
 獣人の国から出稼ぎもチラホラやってくるけれど、収穫作業はあまり向いていないようで長続きしないみたい、持ち運びなどの重労働の方が生き生きとしていると聞きました。

「口減らしされたらギルドへ行けばいい。その考えが浸透しすぎて我が国に労働者が増えないのです」

 ロデオが終わったので帰ろうとしたら笑顔のネリちゃんが待ち構えていました。
 お城へ招待したら逃げられると分かっていて、レモン畑でのお茶会です。レモンの香りが爽やかですね。

「言葉が分からない、通じない、でもギルドに行けば必ず一人は言語が通じる者がいる。そんな奇跡のような話を実現しているのが冒険者ギルドです。死者もほとんどいなくなったと聞きます」
『ん~~、すっぱい!』

 シャムス先生は僕の味方にはなってくれません、たくさん用意されたレモンのお菓子を霧ちゃんの膝で食べるのに忙しいから。
 涼玉も同様、運動したからモリモリ食べてます。
 イネスとネヴォラはちょっと食べてからレモン畑で隠れん坊して遊んでいてここにはいない、いても味方になってくれるかというと怪しいかな。

「無学は罪だと無償の初心者講習で読み書き計算を教え込み、今や冒険者ギルドに名を連ねる者は我が国の市民より識字率が高いのですよ」

 国母ネリちゃんが怖い。
 カイちゃんに似た圧を感じます。

「ねぇイツキ様」
「はい」
「我が国と刀国は同盟国でしたわよね」
「はい!」

 転生したての頃、なぜか参加させられた会議で同盟締結してたような気がします!
 なつかしー!
 あの頃のように騎士様が颯爽と助けに来てくれないだろうか。

 無理かな。
 幼児を味方にしたネリちゃんに騎士様が勝てる気がしない。

「手助けしてくださらない? 引退予定の冒険者でもこの際構いません」
「引き抜き合戦が激しすぎて無理かな。特に引退予定の人はお金貯めて趣味に走る人ばかりだから」

 いっそスラムがあればそこに行って、うちの子がぺかぺかすれば解決するんだけどなぁ。
 帝国王都の人材不足はとりあえずそれで解決しました。

「レモン専門店とかレモンカフェとかそういうお店やりそうな人なら釣れるかな?」

 レモン国って獣人の出入りがあるから、モフスキーが名乗りを上げてくれるかもしれない。
 この件は持ち帰り、アー君に丸な……相談したいと思います。

 良い返事を貰ってくるので許してください。
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