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第二章 聖杯にまつわるお話

第285話

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 本日の門前事件、首謀者はおばあさんになってお亡くなりになりました。

「そうなのアー君?」
「その直後、神薙様に生きたまま食われた」
「呪い振りまこうとしたのでギルティです!」

 夕食のカレーを食べながら今日あった事を騎士様に話したら、一部記憶違いがあったようです。
 あれ?

「ぐふふ、とうとう手に入れたぜ、噂の山吹色のお菓子!」
『僕も貰っていいの?』
「シャムス兄と俺らはどこにいてもワンセットだからな!」

 アー君とイネス、ネヴォラはさっさと食べてしまったけど、涼玉は食後のためにとってあったらしく、シャムスと並んで嬉しそうに包み紙を開いている。

「にいちゃたちは何味だった?」
「俺オレンジ」
「私はメロン、ネヴォラはバニラって言ってました!」

 えっ、あの小判型お菓子、味は一つじゃないの?

「あーん」
『あーん』
「んぐんぐ、俺のはサイダー!」
『白桃よ』
「アー君、あのお菓子どうなってるの?」
「実はあれ、ラセンの街で作ってるんだ。領地に隣接した聖地があるだろ、あそこで取れるヤシの実と我が家で採れる果物を混ぜたら個々で味が違うお菓子が誕生した。予定ではフルーツミックスになるはずだったんだけどな」
「型を選んだのは春日だけどね、ああいうの好きだから」

 アー君の説明に騎士様が補足を入れる。
 そうだね、春日さんは茶屋を経営するぐらいジャパニーズかぶれだよね。

「しかし今日の魅了使い、香りはどこから発してたんだろ?」
「神薙、分かるか?」
「匂いは染みついてたけど、食べたものに発生源はなかったから持ち物、しかも僕が食べた時には手元から消えてた」

 食べたもの。
 神薙さんの場合、これには食べた人間の本体だけじゃなく、魂とか服とか持ち物とか全部含まれている。というのが邪神豆知識らしいですよ。

 とにかく、神薙さんが食べたおばあさんも、ミーアキャットになった元人間も、魅了を発動するような物を持っていなかったようです。
 ふむ、不穏な感じ。

「そのミーアキャットから話は聞けなかったの?」
「魔物化した時点で理性も人格も壊れてた、むしろ何で門番として働けているのか意味が分からない」

 アー君や、なぜそのセリフを僕を見ながら言うんですかね。

「でもこれで分かった。人間から魔物になったら手遅れで討伐するしかないと思ってたけど、ママがいればどうにでもなる!」
『いぇーい』
「みゃーん!」
「やさしいせかい!」

 なぜだろう、涼玉の「優しい世界」がブラック企業のキャッチワードのように聞こえるのは。

「刀雲、審査もなくそのまま門番に雇って大丈夫だったの?」
「報告は受けているが、アー君達が関わっているし、イツキ関連なら特に問題ないだろ。ダメならダメで教会に押し付けてただろうしな」

 これは僕への信頼というよりも、謎能力への信頼????
 まぁ……皆さん、僕や子供たちに巻き込まれて結構訳の分からない状況に放り込まれているからね、心を広く深くもつか悟りを開くような心でいないと心身がもたないか。

「犯人は精霊の中にいる!」
『せいはいー』
「事件は終わってなかったのかっです!」
「アー君、何の漫画読んだの?」
「探偵もの」

 夢の世界にいる精霊についてはシャムスに隷属しているので白、外に出て聖女を惑わした精霊は討伐済み、つまり外に出た精霊が他にも居たってことかぁ。
 悪いことをする精霊探しを名目に各地に遊びに行ける。そりゃぁ張り切りますよね。
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