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第二章 聖杯にまつわるお話

第275話

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 テストを終えたアー君がギルドにやってきた。
 ギルマスさんや魔王様、僕らを保護してくれた冒険者から話を聞いてにっこり。

 気絶から回復した戦士と魔法使いは離れた席で小さくなって食事してます。

「見事にカイの逆鱗に触れてるなぁ」
「やっぱりそう思う?」
「魔王討伐だけでも地雷案件なのに、強制召喚によるママの誘拐に加え、貧弱装備で放り出す、ざっくりと挙げただけでこれだけあるって事は余罪が山のようにあるだろうし」
「統括、これを」

 ギルマスがアー君に差し出したのは、僕らがお城の人から受け取ったお金の入った袋。

「中を調べた所、入っていたのは銀貨なのですが……」

 袋から銀貨を出すと持っていたナイフの柄で銀貨の表面を削った。

「こうすると少し銀が剥がれます、この銀貨は最近問題になっている贋金です」
「このお金は誰に渡されたの?」

 これを受け取ったのは戦士さんだった気がする。
 僕の視線を追うように、酒場の視線が一斉に戦士さんに向けられた。

「ヒェッ」

 椅子から飛び上がったんじゃないかな、手に持っていたパンは空を飛んだけど、後ろの席の人がキャッチしたのはお見事です。
 動揺する戦士さんに隣の席にいた冒険者が話を聞き、僕らの方に来て聞いた話を説明してくれた。

 袋は馬車から放り出された時に装備と一緒に投げつけられたものらしい、つまり城の人間から渡されたのは間違いないみたい。
 上が知ってても知らなくてもアウトな案件です。

 罪が順調に積み重なっていきますね。

 相手が人間だけなら黒幕を突き止めて検挙とか、一本の物語出来るぐらいのあれこれが起こるのかもしれないけれど、生憎今回は召喚した相手が悪すぎる。
 証拠も何も必要としない邪神一家が身内にいます、ついでに言うと冥府の王様が知り合いで、その息子が僕らの身内です。諦めて奈落の底で罪を償ってください。

「これ、町で使ってたらどうなってた?」
「身柄を拘束されて牢屋行きですが、今のところ気付いているのがギルドと教会の人間だけです。訴えるために役人に渡したら賄賂だと思って喜んで受け取ってましたよ」

 ギルドではギルマスが、教会では寄付金を渡された司祭が気付いたらしい。
 あと役人が腐りきっていますね、邪神一家が喜びそうです。

「よし滅ぼそう!」
「怖っ!」

 怒りを通り越して笑顔になったアー君にギルマスがドン引きしている。

「上が腐りすぎて手遅れだな! 根絶やしにした方が絶対いいって!」
「神薙さん呼ぶ?」
「待ってください、辺境にいる王弟と密かに連絡を取っています、この件は俺らに任せていただけませんか」
「ママがここにいる時点で手遅れかな。邪神だと更地だけど、カイなら建物は残してくれる。と思う。ママへの対応が酷すぎるから、分かんない」

 目を逸らしながらアー君が呟く。
 あれ、カイちゃんってそんなに危険人物だっけ?
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