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第二章 聖杯にまつわるお話

第265話

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 誰も知らない間に姿を消し、元の場所に戻ったら妊娠していた僕。 
 経緯が怪しすぎるものの取るべき対策は特にないみたい、周囲の過保護が分厚くなるのも妊娠中はいつものことだし、外出制限されるのも同じ。
 だけど敢えて聞きたい。

 遊びに行っちゃダメだろうか。

「っめ」

 シャムスに聞いたらダメ出しされた。

「じゃあ境内ならどうかな?」
『うーん』
「屋台……おやつの時間だな」
『おっけぇ』
「かあちゃOK出たぞ。買い食い行こうぜ」

 涼玉の援護でお出かけ許可が出ました。
 今日はアー君が早く帰ってくると言ってたし、ちょうどいいからおやつを買ってこよう。

 エムは子育てでこちらに来ていないけど、ローとルドがご飯目当てに遊びに来ていたので、ローの背中にシャムスを乗せていざ神薙神社。
 鉄板料理は昨日食べたから除外すべきだろうか、でも屋台の焼きそば好きなんだよね。

 ずんずん歩くマールスの腕に抱かれる涼玉の先導で、境内で最も賑やかな屋台が並ぶ場所に来ました。
 ここに出店する屋台はたまに入れ替わるから、今月も焼きそばがあるとは限らない。

 ケバブのお店は店舗として構えているから不動、ただ店で出すものは神薙さんの口に入る場合もあるので、毎月新作を出す努力をしなければならない。
 これが意外とキツイみたいだけど、学園の子供たちに対して学割を適用する代わりにアイデア貰ってしのいでいるらしいです。

「貴方こそ神の子!!」

 焼きそばに思いを馳せていたら変な声が聞こえてきた。 
 スルーしていいだろうか。

「いや、俺は神の子じゃな……」
「黄金の魂を持つお方! 貴方こそ我が主人!」
「だから」

 何か変な宗教家っぽい人に絡まれているのうちのアー君でした。 
 スルーしたら怒られるやつだ。

 おっと目が合った。
 逃げ損ねたようだ。

「涼、焼け」

 口パクでそう指示するアー君に首を振る涼玉。

「境内で人殺しはちょっと」
「神薙様の獲物ですからなぁ」

 殺し自体は罪に問われないものの、神薙さんのおやつを盗み食いしたとカウントされるのが厄介みたいです。
 なお、周りに冒険者はいるけど、困っているのがアー君のため面白がって見学しているだけ。普段の行いが影響するいい例ですね。

「シャムス、ケバブ買って帰ろうか」
「あい」

 話が通じない宗教家は僕らも関わりたくないのです、ごめんねアー君。

「どうか我らをお導きくださ――」
「神の子じゃなく、俺自身が神なんだよ!!」

 バキィィィィ

 いい音とともに宗教家が空に舞った。

「グラ、後でうちにケバブ人数分届けて!」
「よかろう」
「ママ帰るよ!」
「はぁい」

 本日のクエスト、買い食い。
 失敗しましたー。

 家から出て数分しか経ってない気がする。
 僕のお出掛けチャンス……あの宗教家、許さない。
 不治の口内炎になればいいのに。
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